2012/09/04

厚労省は、通院等乗降介助の適用範囲の拡大について見直しを含めた検討をすべきby総務省


介護保険制度における通院等乗降介助の適用範囲の拡大

概要

通知文


厚生労働省老健局長 殿総務省行政評価局長

介護保険制度における通院等乗降介助の適用範囲の拡大について(通知)

当省では、総務省設置法(平成 11 年法律第 91 号)第4条第 21 号の規定に基づき、行政機関等の業務に関する苦情の申出につき必要なあっせんを行っています。

この度、当省に対し、「現行の介護保険制度では、居宅で訪問介護を受けている居宅要介護者が、いわゆる介護タクシー等の福祉輸送サービスを利用して、居宅から病院に通院等する場合、介護保険が適用され、通院等のための乗車又は降車の介助(以下「通院等乗降介助」という。)に係る介護給付費が支給されている。

しかし、居宅要介護者の目的地が複数ある場合であって、出発地及び到着地が居宅以外となる移送については、介護給付費の支給対象とならず、当該移送に係る介護費用は居宅要介護者が全額負担しなければならないこととなっている。

このため、居宅近くの複数の病院で診療を受けている居宅要介護者の中には、通院等乗降介助に係る介護給付費の支給を受けるため、1日に一つの病院にしか通院しない人もおり、居宅要介護者の経済的及び身体的な負担となっている。

居宅要介護者が複数の病院へ通院等する場合など出発地及び到着地が居宅以外となる移送についても、介護保険を適用し、通院等乗降介助に係る介護給付費の支給が受けられるようにしてほしい。」との申出がありました。

この申出について、総務大臣が開催する行政苦情救済推進会議において民間有識者の意見を聴取するなどにより当省が検討した結果について、下記のとおり参考として通知します。

記1

 通院等乗降介助の現状通院等乗降介助とは、介護保険における訪問介護(介護保険法(平成9年法律第 123 号)第8条第2項)の一形態であり、居宅要介護者について、通院等のため、指定訪問介護事業者の訪問介護員等が自らの運転する車両への乗車又は降車の介助を行うとともに、併せて、乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助又は通院先若しくは外出先での受診等の手続、移動等の介助を行った場合に、介護給付費の算定をすることができるものとされている。

そして、1日に複数の医療機関を受診等する場合における医療機関から医療機関への移送に伴う介護については、「居宅以外において行われるバス等の公共交通機関への乗降、院内の移動等の介助などのサービス行為だけをもってして訪問介護として算定することはできない。したがって、医療機関から医療機関への移送に伴う介護については、通院等乗降介助を算定することはできない。」とされている(「介護報酬に係るQ&Aについて」(平成 15年5月 30 日付け厚生労働省老健局老人保健課事務連絡。以下「Q&A」という。)のQ22)。

一方、通院等乗降介助とは別に、
・ 通院等乗降介助の前後に連続して相当の所要時間(20 分から 30 分程度以上)を要し、かつ、手間のかかる身体介護を行う場合(要介護4又は5の居宅要介護者の場合)又は

・ 居宅における外出に直接関連しない身体介護に 30 分から1時間程度以上を要し、かつ、当該身体介護が中心である場合(要介護1から5までの居宅要介護者の場合)には、身体介護が中心である場合として、その要した時間に応じた介護給付費を算定することが可能とされている(「「通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合」及び「身体介護が中心である場合」の適用関係等について」(平成 15 年5月8日付け老振発第 0508001 号・老老発第 0508001 号厚生労働省老健局振興課長・老人保健課長通知)、「Q&A」のQ24)。

そのため、これらの場合に該当する場合には、「居宅→医療機関→医療機関→居宅」のように目的地が複数であっても、目的地間も含めて居宅を介して一連のサービスと判断し得るときには、身体介護中心型として介護給付費を算定することができるとされている。

この結果、本件申出のように、複数の病院に通院している居宅要介護者が「居宅→病院→病院→居宅」というように1度の外出で当該複数の病院に通院しようとしても、上記の身体介護が中心である場合に該当しなければ、通院等乗降介助による算定となるため、「病院→病院」の移送に係る介護給付費は支給されないこととなり、当該移送に係る介護費用は、居宅要介護者が負担しなければならないこととなる。また、本件申出内容にもあるように、介護給付費の支給を受けるために2度に分けてそれぞれの病院に通院した場合であっても、居宅要介護者の経済的及び身体的な負担が増加することとなる。

2 厚生労働省の見解このような通院等乗降介助の現状の取扱いについて、貴省は、「「通院等乗降介助」は、介護保険法第8条第2項に規定する訪問介護として算定されるものである。訪問介護は、介護保険法において、居宅要介護者の「居宅において(中略)行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話」とされていることから、居宅以外において行われるサービス行為だけをもってして訪問介護として算定することはできない。ただし、当該医療機関間の移動に行われる介助を「居宅において行われる目的地(病院等)に行くための準備を含む一連のサービス行為と見なし得る」場合には、訪問介護のうち、身体介護として算定することは可能である。」とし、通院等乗降介助については、医療機関間の移送に係る介助は、介護保険法における訪問介護の定義に該当しないため、介護給付費の算定をすることはできないが、身体介護に該当する場合であれば、算定をすることが可能であるとの見解を示している。

3 行政苦情救済推進会議での意見このような状況を踏まえ、通院等乗降介助の適用範囲の拡大について、行政苦情救済推進会議で検討を行った結果、同会議においては、次のような意見が出された。

(1) 居宅から出発して、一つの病院等(目的地)に行くのも、二つの病院等(目的地)に行くのも、最終的には居宅に戻ってくるのであり、目的地間の移送についてのみ、訪問介護の定義に該当しないことを理由として介護給付費の算定を認めないとすることは、身体介護が中心である場合には算定が認められていることと比較して、合理性がないと考えられる。

(2) 厚生労働省は、通院等乗降介助の適用範囲の拡大について、居宅要介護者の通院等の実態に照らして、居宅要介護者の負担の軽減や介護給付費の節減という観点から、法制度の見直しを含めた検討をすべきである。

(3) これらの意見を厚生労働省に参考として通知し、同省における今後の介護給付の見直しの際に検討してもらってはどうか。

4 当省の検討結果行政苦情救済推進会議での意見を踏まえ、本件申出について、当省で検討した結果、介護給付の見直しに関する貴省の検討に資するため、上記3の意見を参考として通知することが適当であるとの結論に達したことから、当該意見を貴省に通知するものである。また、当省は、貴省における介護給付の見直しの検討に資するため、今後同様の行政相談があった場合には、必要に応じて貴省に情報を提供することとする。

なお、当省では、本通知の内容について各管区行政評価局(四国行政評価支局及び沖縄行政評価事務所を含む。)及び各行政評価事務所に周知し、同様の行政相談があった場合には、上記の情報提供のため当省への相談内容の連絡を徹底することとする。

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