ご主人の介護

 Kさんのご主人は、Kさんが倒れて以後、一人でKさんの介護をされています。奥さんのKさんは86歳で要介護3。普段は一人で部屋の中を歩けませんのでベッド上で食事や排せつをされています。
 そしてKさんを介護されているご主人はKさんより年上の87歳。幸い、ご主人は目立った持病などもありません。そのご主人が三度の食事の支度、トイレの世話をされています。オムツ換えによる腰痛などを本間が心配しますが「大丈夫です」とにこやかです。
その合間にKさんは通所介護(デイサービス)と短期入所(ショートステイ)を利用し、入浴やその他の世話をしてもらっています。
最初は通所介護のみの利用でした。しかし、全てを87歳のご主人ひとりでされていることもあり、どうしても、その介護負担が気になっていました。ですので、Kさんにも「ご主人の骨休めも必要ですよ」と短期入所(ショート)の利用を説得しました。(ショートをご本人が承諾されていないと、安定した継続利用が困難な場合が得てしてあります)
「料理するようになられたのは、奥さんが倒れてからですよね。抵抗はなかったんですか?」と聞いてみました。ご主人曰く「ウチは、男ばっかりの兄弟だったんですけどね、子どもの頃から、野菜の切り方とか皮のむき方を教わってたんですよ。だから、野菜を切ったりするのは訳ないです」と飄々とお答えになります。
「でも、料理の方法とか味付けなんて、簡単には覚えられませんよね?」
「まあ、煮物、焼き物が多くなりますけどね。でも、見よう見まねで大体、できますよ。しょうが焼きなんて、最近、覚えましたね。嫁が来た時に、作り方を教えてもらって。
 あんなの下ごしらえして、漬けておいて、後は焼くだけですから、簡単ですよ。仕事も今はしてませんしね。それくらいしか、やってることないですから。」と、やはり飄々とお答えになります。
 (実は、本間も土日以外の平日は、毎日、家族分の朝食、夕食を作っています。もう4年程になりますが、別に、料理が好きなわけではありません。独身時代は一度も料理などしたことなかったのですが、いろんな事情があって、そのようになってしまいました。ですが、Kさんのご主人のように、直ぐに料理を覚えられるタイプではなく、未だに毎日、料理の本を引っ張りだしながら悪戦苦闘しています…)
 そんなKさんの最近のヒット福祉用品。たわいもないゴムで出来た滑り止めマットです。しかし、Kさんには、とても適合しているようです。というのもKさんは身長がかなり小柄なんですが、利用されている特殊寝台が希望以上に低くなりません。機種変更も提案しましたが、それにも抵抗がおありです。
 
足がギリギリ畳みに着く程度なので、長時間、ベッドの端で座っていられないのです。ベッドの端に腰掛け、しばらくするとゴロンと、横にゆっくりと倒れてしまわれるのです。
 また、排せつ時のみはポータブルトイレに乗り換え用を足されています。その時にも、足が滑り気味でうまく立ち上がれないことが目だっていました。そこで、ゴム製の滑り止めマットで丁度、良いものがあったのでご紹介しました。おかげでベッド上で座ることと、ポータブルトイレへ乗移るのが、改善されたそうです。

 ちなみに専門的には、ベッドの端に座る姿勢を「端座位(たんざい)」と言って、食事、排せつ、入浴に関して非常に大きな意味を持ってくる姿勢です。端座位の姿勢が保てるには、腹筋や背筋により上半身を維持しなければなりません。この姿勢が取れることで座って食事が取れます。きちんと座って食事を取ることは、「よく噛み、よく飲み込む」につながります。高齢者に多い、飲み込み不良による肺炎の予防になりますし、胃や腸の動きもよく、よく吸収し、よく消化するにつながり便秘軽減にもつながります。
端座位ができれば、便器で排せつすることも可能になってきます。また、その姿勢から発展的に立ったり、車椅子・ポータブルトイレ等へ乗移れるようになってきます。

 一般的に寝たきりになり、座る姿勢ができなくなってくると内臓の動きも不活発になり便秘がちになるといわれています。そうなるとベッド上で排便の始末などもするようになるなど、一般的には介護の負担が増えるといわれています。
もちろん、最終的に人は老化という自然現象には勝てませんから、いつまでも端座位が取れるということも多くはありません。端座位の姿勢をとるにも介助が必要だと、なかなかご家族が毎回、それを行うのも負担です。その補助具として、特殊寝台(介護ベッド)の背挙げ機能があります。理想を挙げればキリがありませんので、最終的には、ご家族が無理のない範囲で介護されればいいのです。

それでも、介護は「自分のこと」ではなく「他人のこと」です。それゆえに「良心の呵責(かしゃく)」や「自責の念」にかられることも少なくないと思います。その葛藤の部分をこそ、「どうすればいいか」と遠慮なくケアマネジャーにご相談ください。介護される方と介護する方、その双方を支援するのが私たちケアマネジャーの仕事です。