「ケアプラン点検支援マニュアル」使用上の留意点



 「ケアプランの適切化」の名目の元、行政職員向けにマニュアルが作成されました。
 このサイトは行政職員もよく確認されていると聞いております。よって、今回は行政職員向けに、このマニュアルの用法や使用上の注意点を、現役の介護支援専門員の視点から考察してみたいと思います。
 
 まず、このマニュアルの特徴として挙げられるのが、居宅サービス計画(ケアプラン)の内容について一方的に指導したり、責めたりしてはいけない、としている点です。ケアプラン上、不合理な点があったとしても、なぜ、そのようになってしまったのかを対話を通して振り返り、その過程において介護支援専門員に「気付き」を与えるという「カウンセリング的」な手法を採用していることです。

 このようなカウンセリング的手法において、重要なことは、「自己覚知」に「傾聴」、「受容」や「共感」など様々な面接技術を要することになります。

 「自己覚知」とは簡単にいうと「己を知る」ということで、一見、簡単に見えて、実は非常に難しいことです。面談者はえてして、自分の価値観や偏見で対象を見ようとします。マニュアル中に、介護支援専門員が自分の価値観を利用者に押し付けていないか、等を確認する旨の記述がありました。それと同様のことがプラン点検者にもいえます。

また、ケアプラン点検の際に「どうせ生活援助が不適切なんだろう」等の思い込みを抱いていれば、そのような視点でばかり点検をしてしまうことになります。本当はその他の重大な点検箇所があるかもしれないのに、それを見落としてしまう恐れがあります。
そうならないためには、まず、自分の中にケアプランやケアマネジメントに対する無意識の内の偏見や思い込みがないかを自覚しておかなければなりません。

次に、対話の中で「気付き」を与えるということについては、相手の立場で話を聞き、その内容に共感することが前提となります。仮に介護支援専門員が利用者本位ではなく、利益誘導のためのケアプランを作っていたとしても、「なぜ、そのようなケアプランを作らなければならなかったのか」という介護支援専門員を取り巻く状況にまで思慮を深めていかなければ、真の問題解決の道筋は見えてきません。

当然、その過程において介護支援専門員を責めたり、良し悪しを判断することは介護支援専門員の発言意欲を萎えさせます。マニュアル文中には、「また点検を受けてみたい」と介護支援専門員が思えるような作業にする、との旨の記載がありました。そのためには、決して質問という名の「尋問」をするのではなく、介護支援専門員の内面から自発的な発言が出てくるまで、じっと辛抱強く耐えることも必要になります。ついつい、回答を先回りして発言したくなることもあるでしょう。困った介護支援専門員の噂を、他の介護支援専門員のいる場面で噂話のように口が滑ってしまいそうになることもあるでしょう。しかし、それらは介護支援専門員から「信頼」を得るためには、絶対にしてはいけない行為です。

このような面接技術上、もっとも重要なことは信頼関係の構築ともいえましょう。そのような面接技術は「バイスティックの原則」として体系化されたものがあります。今後、ケアプランの適切化がうまく機能するよう、是非、ご一読をお勧めします。

また、ケアプランの点検をするということは、結果的に、その根拠となるアセスメントやモニタリング、引いてはケアマネジメント全体を点検することにもつながっていきます。

アセスメントについては、まず、それからどのようにしてケアプランに展開されていくのか。その関連性の理解を押さえておかなければなりません。
例えば、ケアプランの中で最も重要な記入欄に第2表「生活全般の解決すべき課題」欄があります。この欄などは、利用者が100人いれば、100通りの書き方が出てくるところです。決して、これといった書き方の正解がない箇所です。しかし、それでもなお、この欄は、その根拠となるアセスメントと有機的に深く結びついていなければなりません。バラバラに集められた情報を総合的に編集し、一つの「課題」を再構築する、という非常にアーティスティックな作業行為だということを認識していなければなりません。

更に、ケアプランについて論じるとき、その背景にある介護保険型ケアマネジメントの実態についても理解しておかなければなりません。ケアプランがケアサービスへの直接的な指示書や処方箋のような存在だ、などという解釈はとんでもない誤解です。
ケアプランからどのように介護サービスの作成する個別援助計画へ展開がなされ、介護サービスからいかにしてケアプランへの反映がなされるのか。そういった介護保険型ケアマネジメントシステムの構造そのものを理解していなければなりません。
ケアプランとは、給付管理や給付費算定をも含めた介護保険型ケアマネジメントの中の氷山の一角にすぎません。ケアプランを変更するだけでは、ケアマネジメントも介護サービスも大きく変わりえないのです。

そして、ケアマネジメントは介護支援専門員のみが行うものではなく、利用者や介護サービス、医療機関、行政、インフォーマルサービス等の協働作業によって行うものです。当然、それらがケアマネジメントにどのように関係しているか、という理論上の理解をしていなければなりませんし、理論とかけ離れた現場の実態を(面接を通じて)理解していかなければなりません。くれぐれもケアマネジメントは介護支援専門員だけが行う、というような誤った認識は持たれないようお願いします。
 
 以上、思いつくままに書き連ねました。これだけでも、かなり難しい作業であり、そもそも、介護支援専門員の初任者研修や実務研修で、なぜ、こういった基礎的なことをやらないのかという素朴な疑問も抱きます。

 しかし、既に決まったことであり、やらなければならないのであれば、一つだけ失敗しないポイントを述べさせていただき、本稿のまとめとしたいと思います。それは、介護支援専門員を大切な地域の社会資源として、愛情を持って育てようという姿勢で接することです。一人の介護支援専門員の背後には、数十人もの高齢者の方々の生活がかかっているということを念頭におき、愛情を持って接することしかありません。
 
 追記。ケアプランの点検を進めていく中で、介護支援専門員や地域の課題を探っていくという旨の記述が書かれています。それを実行していく中で、おそらくアセスメント力の弱さやケアプランの根拠の脆弱さが現れてくることでしょう。
 そして、そのような介護支援専門員の「ケアマネジメント力の弱さ」の背景には、自社サービス事業の営利追求によって、中立・公正でまともなケアマネジメントが行えない、現在の介護支援専門員の苦しみや矛盾を見出されることでしょうし、そこまで問題をフォーカスしていかなければ、この事業による大きな成果を得ることは難しいでしょう。

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