介護職になった作業療法士さん


尊敬する作業療法士さんが(作業療法士をやめて)介護職になった。

本質を知る人の選択だと思う。

この選択の意味を分りやすく言えば、こういうことだ。

例えば軽度認知症の老人にとって次のどちらが自立支援に資するのか―。


(1)重度化予防として脳トレや狭い範囲での作業訓練を行う
(2)己の財布で食材を買い、包丁で固い根菜に歯を立て、自分でガスの炎を燃やし、献立を立て、自分のメシを作るという日常生活をおくる

答えが(2)であることはグループホームの例を出すまでもない。

そう、作業(療法)や生活行為(療法)の中に「日常生活」があるんじゃない。

「日常生活」の中に作業(療法)や生活行為(療法)といった細かいパーツがあるのだ。

だから、本気でお年寄りの自立などを理学療法士や作業療法士が取り組もうとすると必ず壁にぶちあたる。その「専門領域」という狭い範囲でしか仕事をできないゆえに存在する壁が。「専門領域」から地続きになっている「ただの日常生活そのものに関われない」という壁が。(日常生活に関わるとは、「一時的」に関わる意味でなく、文字通り「日常的な生活に関わる」という意味)

制度上はヘルパー等と役割分担されることになっているが、実際には有機的に連携できていないことが多い。それが、濃密に仕事をしたい先のような方にしてみれば、もどかしくなるのだろうと思う。
そういえば医師会だって地域包括ケアシステムをふまえ「治す医療から、支える医療へ」なんて看板を書き変えようとしている。

要介護老人にとっては「治す」(≒療法)よりも「寄り添い、支え、伴走する」(≒介護)の方が有効な事が多いのだから当然だろう。

一方で彼女には、必ずしも「前途洋々」等と言えるような楽観が待っているわけではないだろうとも思う。「専門領域」という安全で狭い囲いの中から飛び出して、いきなり、どんな原始生物に遭遇するか分からないジャングルに飛び出したようなものだから。専門性という武器も歯が立たなかったりするかもしれない。

でも、彼女のヘルパー実習などの話を聞いていると本当に楽しそうで、いきいきとしていて、「案外、最強の介護職になっちゃうかもな…」と思ったりもするのであった…

 [追記]そして、実はこうした方々が、医療業界に届く言葉でもって、介護の(専門性という薄っぺらい言葉でなく)深淵をきちんと表現してくれないかと期待もしている。

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