2012/09/18

投稿「利用者さんを怒鳴る」


「暴言を吐く男性利用者さんがいるのだが、今の事業所ではお手挙げなので、入ってもらいたい」とケアマネから依頼がある。サービスに入ってみると命令口調で「ちゃんと掃除しろ!」「水を取れ!」等、命令口調がみられる。

ある時、訪問すると、玄関先から「助けてくれー」と大きな声が聞こえてきた。

急いで居宅に入ると、ベッドから床に落ちている。部屋の中が暑い。夏にも関わらず暖房がついていて部屋の温度が40度になっている。「このバカヤロウー!なにやってんだ!」と怒鳴っている。私は、まずは部屋の温度を下げる為に暖房を消して窓を開けた。

利用者さんがまた怒鳴る「このノロマー!早くしろー!」の声に私の怒りが頂点に達した。「何言ってんだ!ここには俺しかいないんだ!俺のやることに文句言うな!」と言ってしまった。利用者さんもキョトンとしていた。

ベッドに上げた時に体熱感がある。脈を測ると100を超えている。熱は38度5分ある。「これは辛かったろうに。」と声をかけると利用者さんが何と泣いている。泣いているわけが私にはわからなかった。

利用者さんがポツリと言った。「体を診てくれたのはあんたが初めてだよ。」と。良く話を聞くと、“誰も俺のことは分かってくれない。分かろうとしてくれない。医者もろくなもんじゃない。”と誰も信用できなくなっていると受け取れるような内容だった。

その後、利用者さんに私があの場面で先にベッドに戻さなかったかというと、しゃべれるし、痛みの訴えもなく、意識もはっきりしていたから、ベッドに戻すのはいつでも出来る。優先順位としたら窓を開けて部屋の温度を下げることが先だと感じたからベッドに戻さなかった、と話をした。すると、利用者さんも納得されて、落ち着いたようだった。

利用者さんを怒鳴るなんてありえないと思われてしまうかも知れないが、こちらも人間である。当然怒ってしまうことがある。

専門職としてこちらの方が正しいと思ったときには貫く勇気が必要なこともあるのではないか?現場では色々なことが起こる。失敗も当然あるが、こちらがどう思っているかを伝えていく必要があると思う。それが、私達の責務ではないだろうか?適切な接遇とは、利用者さんのことを思う気持ちから出てくるものではないかと考える。

ちなみに、接遇研修などに於いて、ちゃん付けをしないようにとか、お婆ちゃん、お爺ちゃんと呼ばないようにとよく言われることがある。私には大変違和感がある。ちゃん付けをしようとしまいが呼び方を変えただけで本当に何が変わるのだろうか?

認知症の方などは、ちゃん付けをしたほうが良い場合もある。親しみを込めてお爺ちゃん、お婆ちゃんと呼ぶときもあり、それはその方を見て呼んで良い方なのかどうかをこちら側が見抜かなければいけないし、何より高齢者の方に愛情を注ぎ、尊敬の気持ちをもって言う言葉ならば伝わる筈です。

○○さんと言った所で上辺の言葉では、相手に悟られてしまいます。接遇は教え教えられるものではなくて、心から高齢者はもちろん、人に対して尊敬の念を心から持つことが大事である。
小谷庸夫

→ありがとうございます。とても熱い文面に嬉しくなりました。
私自身、老人を怒鳴ったこともありますし、他所の会社の社長にまで怒鳴って説教までしたこともあります(笑)

もっとも、そんなことは通常はしないのは当たり前。でも、精神的に変容を遂げてしまっている方や言葉による論理的理解ができない方がいて、そんな方を生と死の狭間で支援しなければならない現実があるのも事実。

そんなとき、言葉に「意味」だけでなく「想い」も乗せたい。「あなたのことを想っています」と。そんな土壇場ではやっぱりキレイゴトやマニュアル的な対応は通用するはずがないですよね。(本間)

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