2019/10/12

介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について



令和元年8月7日
老指発0529第1号
令和元年5月29日

厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長
( 公 印 省 略 )


 介護サービス事業所・施設(以下「事業所」という。)に対する実地指導については、「介護保険施設等の指導監督について」(平成 18 10 23 日付け老発第 1023001 号老健局長通知)(以下「指導監督通知」という。)等に基づき行われているところですが、指導監督通知発出後、一定期間が経過し、全国の自治体毎に指導の内容や確認項目・確認文書に様々な差異が生じているとともに、一部の自治体においては実地指導の実施が低調な状況が見受けられます。

実地指導は、各事業所における利用者の生活実態、サービスの提供状況、報酬基準の適合状況等を直接確認しながら事業者の気づきを促すなど、より良いケアの実現及び保険給付の適正化を図るために有効であり、これまで、指定の有効期間内に最低でも 1 回以上は実地指導を行うよう助言しているところですが、事業所が年々増加傾向にある中、実地指導は集団指導と併せて効果的に実施するなど一層の効率化が求められています。

また、平成 30 年度の厚生労働省老人保健健康増進等事業における「実地指導の効率性の向上に資する手法等に関する調査研究」、「実地指導における文書削減に関する調査研究」等において、自治体、事業所の双方が個別の指摘事項の改善等を通じ、事業所運営の改善につながっていること、指導の標準化を図ることによって自治体及び事業者双方の事務負担の軽減が図られ、より効率的な実地指導が可能となることが報告されており、より多くの事業所に対して実地指導を行うことが介護保険制度における介護サービスの質の確保、利用者保護等に資すると考えられます。

 ついては、指導の標準化・効率化及び指導時の文書削減を図り、実地指導の実施率を高める観点から、別添のとおり「実地指導の標準化・効率化等の運用指針」を定めました。

これにより、一部の項目や文書を確認しないこととなりますが、実地指導の効率性を向上させ、より多くの実地指導を行うことが重要と考えられることから、今後は、指導監督通知及び本指針を踏まえて実地指導を行っていただきますようお願いいたします。

 また、都道府県におかれましては、貴管内の市町村(指定都市及び中核市を除き、特別区を含む)に対して周知いただきますようお願いいたします。

 なお、指導監督通知の別添1介護保険施設等指導指針において別に定める「介護保険施設等実地指導マニュアル(平成 22 年3月改訂版)(平成 22 3 31 日老指発 0331
1 号本職通知)」(以下「マニュアル」という。)と本指針との関係等については、今後、本指針に基づく実地指導の実施状況及び課題等を、一定期間経過後アンケート調査等により把握し、それを踏まえて改善を図ることとしており、マニュアルについてもそれに併せて見直す予定ですので、あらかじめご了知願います。

別添

実地指導の標準化・効率化等の運用指針

1 実地指導の標準確認項目等

 実地指導は、別紙「標準確認項目」及び「標準確認文書」に基づき、実施するものとする。これは代表的な7種類のサービス*に関して介護サービスの質の確保、利用者保護等の観点から重要と考えられる標準的な確認項目及び確認文書について定めたものである。
 なお、7種類のサービス以外のものについては、別紙を参考に、各自治体において「標準確認項目」及び「標準確認文書」を検討の上、適宜反映させるものとする。「標準確認項目」以外の項目は、特段の事情がない限り行わないものとし、「標準確認文書」以外の文書は原則求めないものとする。
 また、実地指導を進める中で、不正が見込まれる等、詳細な確認が必要と判断する場合は、監査に切り替え、「標準確認項目」及び「標準確認文書」に限定せず、必要な文書を徴し確認するものとする。
*・・訪問介護、通所介護、介護老人福祉施設、居宅介護支援事業所、認知症対応型共同生活介護、介護老人保健施設、訪問看護

2 実地指導の所要時間の短縮

実地指導の所要時間については、「標準確認項目」を踏まえることで、一の事業所当たりの所要時間をできる限り短縮するとともに、1 日で複数の事業所の実地指導を行うなど事業所と自治体双方の負担を軽減し、実地指導の頻度向上を図ること。

3 実地指導の頻度

 実地指導の頻度については、事業所の指定有効期間に最低でも 1 回以上は実施することを基本としつつ、本指針に基づく実地指導の標準化及び効率化等を図ってもなお十分な実施頻度の確保が困難な場合には、過去の実地指導等において、事業運営に特に問題がないと認められる事業所の頻度を緩和し、集団指導のみとすることなども検討すること。

4 同一所在地等の実地指導の同時実施

 同一所在地や近隣に所在する事業所に対する実地指導については、できるだけ同日又は連続した日程で行うなどにより、効率化を図ること。

5 関連する法律に基づく指導・監査の同時実施

 老人福祉法等介護保険法に関連する法律に基づく指導・監査等との合同実施については、自治体の担当部門間で調整を行い、事業者の状況も踏まえ同日又は連続した日程で行うことを一層推進すること。

6 運用の標準化

実地指導の実施に際しては、原則として 1 ヶ月前までに事業所へその旨通知するとともに、実地指導当日の確認が円滑に行えるよう、当日の概ねの流れをあらかじめ示すものとする。
 利用者へのケアの質を確認するためにその記録等を確認する場合は、特に必要と判断する場合を除き、原則として 3 名以内とすること。
 ただし、居宅介護支援事業所については、原則として介護支援専門員1人あたり1 名~2 名の利用者についてその記録等を確認するものとする。

7 実地指導における文書の効率的活用

 実地指導において確認する文書は、原則として実地指導の前年度から直近の実績に係る書類とすること。
 また、事業所に事前又は指導の当日提出を求める資料の部数は 1 部とし、自治体が既に保有している文書(新規指定時・指定更新時・変更時に提出されている文書等)については、再提出を求めず、自治体内での共有を図るものとする。

8 留意事項

・ 実地指導にあたっては、担当職員の主観に基づく指導や、当該事業所に対する前回の指導内容と根拠なく大きく異なる指導を行わないよう留意すること。
・ 個々の指導内容については具体的な状況や理由を良く聴取し、根拠規定やその趣旨・目的等について懇切丁寧な説明を行うこと。
高圧的な言動は控え、改善が必要な事項に対する指導やより良いケア等を促す助言等について、事業者との共通認識が得られるよう留意すること。
・ 効果的な取り組みを行っている事業所については、積極的に評価し、他の事業所へも紹介するなど、介護サービスの質の向上に向けた指導の手法について工夫すること。
・ 実地指導の際、事業所の対応者については、必ずしも当該事業所管理者に限定することなく、実情に詳しい従業者や事業所を経営する法人の労務・会計等の担当者が同席することは問題ないこと。

<概要>
・原則として「標準確認文書」以外の文書は求めない。
・過去の実地指導等において問題がないと認められる事業所は集団指導のみとすることも可
・実施通知は原則として実施の1ヶ月前までに通知
・利用者の記録等の確認は原則3名(居宅介護支援事業所については、原則、介護支援専門員1人あたり1~2名)まで
・確認する文書は原則として実地指導の前年度から直近の実績まで

など~

標準確認文書はこちらからダウンロード

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