2019/11/30

介護保険部会(第86回)論点ごとの議論の状況


論点ごとの議論の状況
令和元年1127
厚生労働省老健局
社会保障審議会
介護保険部会(第86回) 資料4
令和元年1127

※ 本年2月以降の介護保険部会の議論の状況について、各論点ごとに委員の意見を中心に事務局の責任で整理したもの。今後、議論を踏まえて更に整理を進める。
論点ごとの議論の状況
これまでの検討
1
○ 社会保障審議会介護保険部会においては、次期介護保険制度改正に向けて、本年2月25日の回において、以下の主な検
討事項を提示。
・ 介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
・ 保険者機能の強化(地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化)
・ 地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
・ 認知症「共生」・「予防」の推進
・ 持続可能な制度の構築・介護現場の革新
○ 以降、これまでに、各検討テーマについて、以下の通り、幅広く議論を進めてきたところ。
(第1R)
・ 2月25日 今後のスケジュール、主な検討事項、介護保険制度をめぐる状況 等
・ 3月20日 介護予防・健康づくりと保険者機能の強化 等
・ 5月23日 地域包括ケアシステムの推進① 等
・ 6月20日 地域包括ケアシステムの推進②、認知症施策の総合的な推進 等
・ 7月26日 介護人材の確保・介護現場の革新 等
(第2R)
・ 8月29日 今後の検討事項 等
・ 9月13日 介護保険事業(支援)計画、介護サービス基盤整備、認知症施策の総合的な推進 等
・ 9月27日 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化、保険者機能強化推進交付金、調整交付金 等
10月9日 介護予防の推進、地域支援事業等の更なる推進、介護人材の確保・介護現場の革新 等
1028日 介護サービス基盤と高齢者向け住まい、科学的介護の推進、介護関連DB等の更なる利活用等、
制度の持続可能性の確保 等
1114日 地域共生社会、医療と介護の連携の推進等、認知症施策の総合的な推進、住所地特例、

論点ごとの議論の状況
○ 論点ごとの議論の状況について、現時点での整理を行い、年末のとりまとめに向けて更に検討を深める。
総論(2025年・2040年に向けて)
○ 介護保険制度は、その創設から19年が経ち、サービス利用者は制度創設時の3倍を超え、介護サービスの提供事業所数も着実に増加し、介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着、発展してきている。
○ 我が国では、総人口が減少に転じる中、高齢者数は今後も増加し、高齢化は進展していく。介護保険制度においては、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、介護が必要な状態となっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築に取り組んできた。
2025年が近づく中で、さらにその先を展望すると、いわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年には、高齢人口がピークを迎えるとともに、介護ニーズの高い85歳以上人口が急速に増加することが見込まれる。また、世帯主が高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯の増加、認知症の人の増加も見込まれるなど、介護サービス需要が更に増加・多様化することが想定される。
2040年までの保険者ごとの介護サービス利用者数を推計すると、ピークを過ぎ減少に転じる保険者もある一方、都市部を中心に2040年まで増え続ける保険者が多い。最も利用者が多くなる年の利用者数について、2018年からの増加率をみると、ほとんど増加しない保険者がある一方、2倍超となる保険者も存在するなど地域差があり、この点を踏まえた対応が課題となる。
○ また、現在、介護関係職種の有効求人倍率が平成30年度で3.95倍となるなど、介護人材不足の状況にあるが、2025年以降は現役世代(担い手)の減少が顕著となり、地域の高齢者介護を支える人的基盤の確保が大きな課題となる。
2025年に向けて、さらにはその先の2040年を見据えて、
介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
保険者機能の強化(地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化)
地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
認知症「共生」・「予防」の推進
持続可能な制度の構築
・介護現場の革新
の観点から、介護保険制度について必要な見直しを進める。

現状・基本的な視点
2
総論(地域共生社会の実現)
○ 人々の暮らしや地域の在り方が多様化している中、地域に生きる一人ひとりが尊重され、多様な経路で社会とつながり参画することで、その生きる力や可能性を最大限に発揮できる「地域共生社会」の実現が目指されている。
(※)骨太方針2019においては、「全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り高め合う地域共生社会を実現する」とされている。
〇 平成29年には、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法の改正とあわせて、「地域共生社会」の実現に向けた地域づくり・包括的な支援体制の整備を行うための社会福祉法等の改正が行われた(※)。また、高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスを位置付ける改正が行われた。
(※)平成29年社会福祉法改正の内容:①地域福祉推進の理念を規定、②①の理念を実現するため、市町村が包括的な支援体制づくりに努める旨を規定、③地域福祉(支援)計画の充実(策定の努力義務化、福祉各分野の共通事項を定め各分野の計画の上位計画に位置付け)
〇 令和元年5月には、平成29年介護保険法等改正法附則に規定される公布後3年(令和2年)の見直し規定に基づく検討を進めるため、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」が設置され、市町村における包括的な支援体制の整備の在り方や、地域共生社会の実現に向けて中長期の視点から社会保障・生活支援において今後強化すべき機能等について検討が行われている。
〇 同検討会の中間取りまとめ(令和元年7月)においては、福祉政策の新たなアプローチとして、
・ 個人や世帯を取り巻く環境の変化により、生きづらさやリスクが多様化・複雑化していることを踏まえると、一人ひとりの生が尊重され、複雑かつ多様な問題を抱えながらも、社会との多様な関わりを基礎として自律的な生を継続していくことを支援する機能の強化が求められている
・ 今後、福祉政策の新たなアプローチの下で制度を検討する際には、現行の現金・現物給付の制度に加えて、①専門職の伴走型支援により地域や社会とのつながりが希薄な個人をつなぎ戻していくことで包摂を実現していく視点、②地域社会に多様なつながりが生まれやすくするための環境整備を進める視点の双方が重要であり、これらが相まって地域における重層的なセーフティーネットとして機能する
・ 福祉の対人支援においては、将来の具体的な課題解決を目的とするアプローチと併せて、つながり続けることを目的とするアプローチの機能の充実が求められることが示された。

現状・基本的な視点
3
総論(地域共生社会の実現)
〇 この福祉政策の新たなアプローチを実現する包括的な支援体制を整備するため、同検討会において以下の方針が示されている。
・ 市町村において、地域住民の複合・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、①「断らない相談支援」、②参加支援と③地域づくりに向けた支援を市町村が一体的に実施する新たな事業を創設
・ 新たな事業は実施を希望する市町村の手あげに基づく任意事業
・ 新たな事業の実施に要する費用に係る市町村の支弁の規定及び国等による補助の規定を新設
・ 国の補助については、新たな事業に係る一本の補助要綱に基づく申請等により、制度別に設けられた各種支援の一体的な実施を促進
○ 地域共生社会とは、生活保護、高齢者介護、障害福祉、児童福祉などの制度・分野の枠や、「支える側」、「支えられる側」という従来の関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割をもち、助け合いながら暮らしていくことのできる包摂的な社会である。今後高齢化が一層進む中で、高齢者の地域での生活を支える地域包括ケアシステムは、全ての人が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる地域共生社会の実現に向けた、地域づくりの中核的な基盤となり得る。
これまで、介護保険制度においても、共生型サービスの創設のほか、地域包括ケアシステムを推進する観点から、生活支援や介護予防、認知症施策などの地域づくりに関係する取組を進めてきたが、今後、地域共生社会の実現に向けた地域づくり、福祉基盤整備を進める観点からも、介護保険制度について必要な見直しを進める。

現状・基本的な視点
4
1.介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
○ 被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態となった場合においても、可能な限り住み慣れた地域において自立した日常生活を営むことができるようにすることは、介護保険制度の重要な目的。これを市町村が介護保険制度の個別給付とは別に事業として実施できるようにするため、平成18年度より地域支援事業を創設。
○ 平成26年介護保険法改正により、市町村が中心となって、地域の実情に応じた多様なサービスを充実させることで要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指し、地域支援事業の中に「介護予防・日常生活支援総合事業」を創設。また、介護予防について、機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけでなく、地域づくりなどの本人を取り巻く環境へのアプローチも含めたバランスの取れた取組を行うため、総合事業の中に「一般介護予防事業」を創設。この事業の中で、住民主体の通いの場の取組を推進。
(※)住民主体の通いの場 9.1万箇所、高齢者の参加率4.9%(平成29年度)
2040年頃にはいわゆる団塊ジュニア世代が高齢者となり、高齢者人口がピークを迎える一方、現役世代が急激に減少。このような中で社会の活力を維持、向上しつつ「全世代型社会保障」を実現していくためには、高齢者をはじめとする意欲のある方々が社会で役割を持って活躍できるよう、多様な就労・社会参加ができる環境整備を進める必要。その前提として、特に予防・健康づくりを強化して健康寿命の延伸を図ることが求められる。
(※)「健康寿命延伸プラン」において、2040年までに健康寿命を3年以上延伸することを目標

現状・基本的な視点
5
1.介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
(1)一般介護予防事業等の推進
○ 一般介護予防事業等について、今後求められる機能、専門職の関与の方策、PDCAサイクルに沿った更なる推進方策等について、「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」における検討状況(※)を踏まえながら、議論。
(※)中間とりまとめ、PDCAサイクルに沿った介護予防の推進方策(検討状況)について、介護保険部会において報告。(829日、1013日)
【これまでの議論】
・ 一般介護予防事業等による介護予防の取組を推進していくことが必要。特に住民主体の通いの場の取組について、一層推進していくことが必要。このため、通いの場の類型化等を進めるとともに、ポイント付与や有償ボランティア等、参加促進を図るための取組を促進することが重要。
・ 通いの場における取組をより効果的・継続的に実施するため、医療等専門職の効果的・効率的な関与を図ることが必要。医師会や医療機関等との連携事例を把握し自治体に実施方策を示すことが重要。
PDCAサイクルに沿って、効果的・効率的に取組を推進していくことが必要。自治体の業務負担等も考慮しつつ、プロセス指標やアウトカム指標を設定することが必要。その際、保険者機能推進交付金との整合にも留意が必要。今後通いの場等に関するエビデンスを構築していくことも必要。
・ 通いの場に参加しない高齢者への対応が必要。支援が必要な者を把握し通いの場への参加を含めて必要な支援につなげることが重要。なお、高齢者の社会参加には通いの場以外にも多様なニーズや方法があることに留意が必要。
・ 通いの場の取組を、地域支援事業の他の事業とも連携して効果的に実施し、地域共生社会の実現に向けた地域づくりを進めることが必要。
(※)一般介護予防事業等の推進については、今後、「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」において引き続き議論を行い、とりまとめの上、介護保険部会に報告を行う予定。

これまでの議論
6
1.介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
(2)総合事業
○ 総合事業について、より効果的な推進に向けた、運営面、制度面での対応方策等について、議論。
【これまでの議論】
・ 総合事業について、高齢化の進展に対応し、地域包括ケアシステムの深化・推進に取り組む観点から、より効果的に推進し、地域のつながり機能を強化していくことが必要。
・ 現在、事業の対象者が要支援者等に限定されており、要介護認定を受けると、それまで受けていた総合事業のサービスの対象とならなくなる点について、本人の希望を踏まえて地域とのつながりを継続することを可能とする観点から、弾力化を行うことが重要。
その際、認知症など利用者の状態に応じた適切な対応を行うことや、適正な事業規模とすべきことに留意が必要。国がサービス価格の上限を定める仕組みについて、市町村が創意工夫を発揮できるようにするため、弾力化を行うことが重要。その際、適正な事業規模とするよう留意が必要。また、引き続き基準となる単価設定は必要との意見があることに留意が必要。
各市町村の事業規模については、その弾力化を求める意見がある一方、上限の枠内で効率的な事業実施を行うべきとの意見もある点に留意が必要。
・ 住民主体の多様なサービスの展開のため、有償ボランティアに係る謝金を支出できるようにすることや、人材確保のためのポイント制度等を創設するなど、総合事業の担い手を確保するための取組を進めることが必要。企業との連携も重要。
・ 総合事業の効果的な実施のため、市町村の積極的な取組を促すことや、都道府県による適切な助言等の積極的な市町村支援が必要。保険者機能推進交付金の活用も重要。
・ 総合事業の推進のため、適切な事業評価や、先行事例等を参考とした事業企画等を進めることが重要。
・ 高齢化が進展していく中で、高齢者が何らかの支援が必要な状態になったとしても、就労的活動などを通じて、地域とのつながりを保ちながら役割を持って生活できる環境整備を進めることが重要。

これまでの議論
7
1.介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
(3)ケアマネジメント
○ ケアマネジメントについて、介護支援専門員がその役割を効果的に果たしながら質の高いケアマネジメントを実現できる環境整備の方策等について、議論。
【これまでの議論】
・ ケアマネジメントについて、高齢者の多様なニーズに対応した適切なサービス提供の観点から、介護支援専門員がその役割を効果的に果たしながら質の高いケアマネジメントを実現できる環境整備を進めることが必要。
・ 医療をはじめ、多分野の専門職の知見に基づくケアマネジメントが行われることが必要。地域ケア会議の積極的な活用が重要。介護報酬上の対応についても検討が必要。
・ 高齢者が地域とのつながりを保ちながら生活を継続していくためには、医療や介護に加え、インフォーマルサービスも含めた多様な生活支援が包括的に提供されることが重要であり、インフォーマルサービスも盛り込まれたケアプランの作成を推進していくことが必要。
・ 公正中立なケアマネジメントの確保や、ケアマネジメントの質の向上に向けた取組を一層進めることが必要。研修の充実等が重要。
・ 適切なケアマネジメントを実現するため、ケアマネジャーの処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保や、事務負担軽減等を通じたケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備を図ることが必要。

これまでの議論
8
(4)地域包括支援センター
○ 地域包括支援センターについて、今後求められる機能や業務、体制の在り方等について、議論。
【これまでの議論】
・ 地域包括支援センターについて、今後の高齢化の進展等に伴って増加するニーズに適切に対応する観点から、機能や体制の強化を図ることが必要。
・ 地域包括支援センターの取組を適切に評価し、適切な人員体制の確保を促す観点から、市町村が保険者として地域包括支援センターの運営に適切に関与することが必要。
・ 地域のつながり機能の強化という観点から、居宅介護事業所や介護施設など、地域の既存の社会資源と効果的に連携して、地域における相談支援の機能を強化していくことが必要。
・ 業務負担が大きいとされる介護予防ケアマネジメント業務について、要支援者等に対する適切なケアマネジメントを実現する観点から、外部委託は認めつつ、引き続き地域包括支援センターが担うことが必要。外部委託を行いやすい環境の整備を進めることが重要。介護報酬上の対応についても検討が必要。
・ 地域包括支援センターの積極的な体制強化等を行う市町村について、保険者機能強化推進交付金等によりその取組を後押しすることが重要。
1.介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
これまでの議論
9
2.保険者機能の強化
(地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化)
○ 今後は、高齢化の進展に加え、世帯構造の変化(単身世帯、高齢者のみ世帯の増加)が並行して進み、地域のつながりが徐々に弱まり、2025年はもとより、2040年に向けて、介護サービス需要が更に増加、多様化していくことが見込まれる。これに加え、とりわけ2025年以降は、現役世代(担い手)の減少が顕著となり、地域の高齢者介護を支える人的基盤の確保が大きな課題となる。
○ こうした中で、地域保険である介護保険制度の保険者(市町村)には、介護サービス基盤の整備に加えて、予防・健康づくりの取組等を通じて、介護サービス基盤としての地域のつながり強化に繋げていくことが求められる。また、保険者ごとの取組状況にはばらつきが見られ、機能強化が課題となる。
○ 平成29年の介護保険制度改正では、保険者機能を強化すべく、保険者が地域の課題を分析して、自立支援・重度化防止に取り組む(PDCAプロセス)とともに、財政的インセンティブを付与すること(保険者機能強化推進交付金)を制度化。
○ 介護保険制度においては、保険者の責めによらない要因(※)による第1号保険料の水準格差を、給付費全体の5%に相当する国庫負担金を活用して全国ベースで平準化するための普通調整交付金を市町村に交付。2018年度からは、特に年齢が高い高齢者の分布をきめ細かく反映させるため、交付基準の年齢区分を細分化する改正を実施
(※)①第1号被保険者に占める、要介護リスクの高い後期高齢者の加入割合の違い
②第1号被保険者の所得段階(1~9段階)別加入割合の差
○ 介護保険制度においては、市町村から要介護認定情報、介護保険レセプト情報を収集する介護保険総合データベース(介護DB)を運用。202010月からは、医療のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等との連結解析が可能となる。また、通所・訪問リハビリテーション事業所からリハビリテーション計画書等の情報を収集するシステム(VISIT)を運用。加えて、科学的裏付けに基づく介護の確立に向けて、高齢者の状態・ケアの内容等のデータを収集するシステム(CHASE)を開発中(2020
度から運用開始予定)。

現状・基本的な視点
10
(1)PDCAプロセスの推進
○ 平成29年介護保険制度改正で導入された自立支援・重度化防止に向けたPDCAプロセスについて、今後、取組をさらに推進するための方策等について、どのように考えるか、議論。
【これまでの議論】
・ 自立支援・重度化防止等に向けた取組を推進するに当たっては、保険者機能強化推進交付金の評価も活用しながら、実施状況の検証を行って取組内容の改善を行うなど、PDCAサイクルを適切に回しながら実施することが必要。
・ 市町村における自立支援・重度化防止の取組の地域差について、要因分析を行い、国や都道府県による市町村への支援を確実に行うことが必要。市町村が目指すべきこと、取り組むべきことを示すとともに、小規模自治体をはじめ、市町村へのきめの細かい支援を行うことが重要。
PDCAサイクルを回す中で、対応策の好事例について、見える化、横展開を図っていくことも重要。
(2)保険者機能強化推進交付金
○ 保険者機能強化推進交付金について、政府の閣議決定等において抜本的な強化を図ることとされている(※)中で、どのような枠組みを構築していくことが必要か、どのような見直しを行うことが考えられるか、議論。
(※)「自治体による先進的な介護予防の取組が横展開され、健康寿命の地域間格差の縮小にも資するよう、財源を含めた予算措置を検討し、2020年度にインセンティブ措置の抜本的な強化を図る。」(「成長戦略フォローアップ」(令和元年621日閣議決定))
【これまでの議論】
・ 保険者機能強化推進交付金について、取組の底上げが図られるなど一定の成果が見られることも踏まえ、介護予防や高齢者の活躍促進等の取組を一層推進するため、抜本的な強化を図ることが必要。予算額を増額するとともに、毎年度の安定的な財源を確保することが求められる。
・ 評価指標について、成果指標の拡大や配分基準のメリハリを強化することが必要。また、判断基準を明確化するなど実態を適切に評価できる客観的・具体的な指標とすることが重要。
・ 取組の評価にあたっては、都市部と地方部、自治体の規模等によって課題の状況や地域資源、体制等取組の前提条件が異なることに留意が必要。取組が遅れている市町村にペナルティーを与えるのではなく、都道府県による適切な支援に繋げ、全体の底上げが図られるような枠組みとすることが重要。都道府県の市町村支援へのインセンティブを強化することが必要。なお、自立支援・重度化防止の取組は、保険者機能推進交付金の有無に関わらず、本来的に保険者として取り組むべきものであることにも留意が必要。

2.保険者機能の強化
(地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化)
(2)保険者機能強化推進交付金(続き)
【これまでの議論(続き)】
・ 自治体が計画的・適切に取組を行う上では中長期的な観点に立った指標設定が必要。また、指標は目標との関係も踏まえて真に必要なものを設定することが必要。指標についてもPDCAサイクルにより適宜見直しが必要。指標の見直しにあたっては、自治体の意見も聴きながら行うことが重要。
・ 要介護認定率や一人当たり介護給付費の評価は、プロセス評価とも適切に組み合わせながら行うことが必要。現場で必要な介護サービスが受けられなくならないよう配慮が必要。
・ 各自治体の評価結果や交付結果について、事業者や住民を含めた関係者や、他の自治体が取組の参考にできるよう、適切に公表することが必要。
(3)調整交付金
○ 調整交付金について、今後の高齢化の進展の中で、保険者の責めによらない要因による第1号保険料の水準格差を平準化する機能を適切に果たすことが求められている一方、保険者機能の強化のための活用方策について検討することも求められており
(※)、その在り方についてどのように考えるか、議論。
(※)「経済財政運営と改革の基本方針2019」(令和元年621日閣議決定)では、保険者機能の強化の観点から、「第8期介護保険事業計画期間における調整交付金の活用方策について、地方自治体関係者の意見も踏まえつつ、関係審議会等において検討し、所要の措置を講ずる」と記載されている。
【これまでの議論】
調整交付金は保険者の責めによらない年齢構成等の要因による水準格差を調整するものであり、その趣旨を踏まえた形での議論が必要。
・ 保険者機能の強化は、既に導入されている保険者機能強化推進交付金の活用で行っていくことが適切。
(※)本日の部会で、保険者機能強化推進交付金、調整交付金について更に検討→本日の議題3(資料3)
これまでの議論
12
(4)データ利活用の推進
○ 介護関連のデータ(要介護認定情報、介護保険レセプト情報、VISITCHASE)について、連結解析や研究者等への第三者提供など利活用を進めるための環境整備や、医療保険の個人単位被保険者番号の活用等についてどのように考えるか、議論。
【これまでの議論】
・ 効果的・効率的な介護を実現していくため、また、EBPM(証拠に基づく政策立案)の観点からも、介護のデータ収集と活用が重要。介護予防、重度化防止の取組を進める観点から、基本チェックリストなど介護予防に係る情報についても、国及び自治体における活用を進めることが重要。医療データとあわせて利活用を図ることも重要。データの利活用にあたっては個人情報の取扱に留意することが必要。
・ 介護関連データベース(介護DBVISITCHASE)の一体的活用、NDB等との連結解析を進めるため、制度面、システム面での環境整備を進めることが必要。
・ 自治体におけるデータ利活用を推進することも必要。国や都道府県による実施方策等に係る支援が重要。国の各種データベースの連結解析を進め、自治体への提供を進めることも重要。自治体の介護予防、自立支援・重度化防止の取組を支援するため、VISITCHASEのデータを、介護保険のレセプト等とあわせて活用できるような環境整備を進めることも重要。
・ データの収集や利活用を進める上では、介護サービスの質の向上やエビデンスに基づいた政策決定といった目的を関係者で共有し、それに資する運用を図っていくことが必要。質の向上や事業所へのメリット等効果を示し、理解を得て普及を図っていくことが重要。データの収集にあたっては、事業者等提供側の負担軽減を図ることも重要。
VISITについて、幅広いデータの利活用に向けて項目の見直しを進めることが必要。また、CHASEについて、将来的には介入に関するデータなど、データ項目の拡大を検討することが必要。VISITCHASEについては、当面は制度的な支援により協力事業所・施設を増やすことでデータの充実を図り、データの提出については事業所等から任意で求めることが適当。
CHASEの収集項目については、今後、社会参加の状況など生活の中での本人の状態や、日中の過ごし方などの情報についても、データ収集の負担と、データの必要性・重要性等を比較考量し、検討すべき。
・ データ連結の精度の確保等の観点から、医療保険の個人単位被保険者番号の活用について、個人情報の取扱には留意しつつ、検討を進めることが必要。
2.保険者機能の強化
(地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化)
これまでの議論
13
3.地域包括ケアシステムの推進
(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
2040年までの介護サービス利用者数を推計すると、ピークを過ぎ減少に転じる保険者もある一方、都市部を中心に2040年まで増え続ける保険者が多い。また、最も利用者数が多くなる年の利用者数の2018年の利用者数との比(増加率)をみると、ほとんど増加しない保険者がある一方、2倍超となる保険者も存在し、地域差がある。
○ こうした中では、都市部においては介護ニーズの増大に対応できるよう、また、地方部においては、高齢化のピークを越え、高齢者人口が減少に転じる地域もある中で、地域に介護サービスの基盤を維持できるよう、地域の実情に応じて工夫しながら介護サービス基盤の整備を進めていくことが必要。
○ 「介護離職ゼロ」に向けて、2020年代初頭までに約50万人分の受け皿整備を行うことを目標としているところ、第7期介護保険事業計画期間(平成30年度~令和2年度)においては、サービス整備の前倒しなどを進めている。
(※)第7期介護保険事業計画における介護給付等対象サービスの量の見込みは、平成29年度実績値に対して令和2年度で在宅サービスが約10%増加(特に、小規模多機能型居宅介護(約32%)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(約84%)、看護小規模多機能型居宅介護(約172%)といった地域密着型サービスの増加が大きい)、居住系サービスが約17%増加、施設サービスが約10%増加となっている。
○ 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の定員数は大きく増加し、多様な介護ニーズの受け皿としての役割を担っている。高齢者が住み慣れた地域において暮らし続けるための取組として、「自宅」と「介護施設」の中間に位置するような住宅も増えており、また、生活面で困難を抱える高齢者が多いことから、住まいと生活支援を一体的に提供する取組も進められている。
○ 高齢化が進展し、医療と介護の両方のニーズを有する高齢者の増加が予想される中で、医療・介護双方のニーズへの対応は、これまで制度改正や介護報酬改定において、住まいや予防、生活支援に加え、医療や介護が一体的に提供され、重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けることができる地域包括ケアシステムの構築の実現を目指し、取組を進めてきた。
(※)診療報酬と同時改定となった平成30年度介護報酬改定では、中重度の要介護者も含め、どこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができる体制整備を行うため、①ケアマネ事業所における入院時連携や特養における看取りの評価の充実、②医療保険のリハビリテーションとの連続性・連携の強化、③医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設等を行った。
○ 要介護高齢者の長期療養・生活施設として平成304月に創設された「介護医療院」について、令和元年9月末時点で248施設・16,061療養床が開設。また、医療と介護の連携に関して、在宅医療・介護連携推進事業(地域支援事業)が全ての市町村で実施されており、約6割の自治体では事業項目に限らない取組があわせて実施されているが、取組状況に地域差が生じている状況。

現状・基本的な視点
14
3.地域包括ケアシステムの推進
(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
(1)介護サービス基盤、高齢者向け住まい
○ 介護サービス基盤整備について、今後、地域の実情に応じてどのように進めていくか、また、基盤整備を進める上での高齢者向け住まいの位置付けや、質を確保するための方策、さらには高齢者の住まいと生活の一体的支援の在り方等について、議論。
【これまでの議論】
(今後の介護サービス基盤の整備)
・ 今後の介護サービス基盤の整備にあたっては、高齢者人口や介護サービスのニーズを中長期的に見据えながら計画的に進めることが必要。
・ 特養、老健施設、介護医療院といった介護保険施設、認知症グループホーム等の居住系サービス、訪問介護等の在宅系サービスなどの介護サービス基盤整備について、認知症など利用者の状態に応じてそれぞれの役割や機能を果たしながら、また、関係サービスとの連携を強化しながら取り組むことが必要。
・ 地域特性を踏まえながら適切に進めていくことが必要。都市部では高齢者増に備えた効果的な施設・サービス整備を計画的に行うことが必要。地方部では人口減少も見据えた効率的な施設・サービス整備が必要。既存施設の活用が重要。
・ 高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)が都市部を中心に多様な介護ニーズの受け皿となっている状況をふまえ、これらの整備状況等も踏まえながら介護事業計画を策定し、介護サービス基盤整備を適切に進めていくことが必要。国は自治体に対して適正な計画策定に向けた支援を行うことが重要。
・ 「介護離職ゼロ」に向けて、介護施設の整備を進めるとともに、在宅支援サービスの充実を図り、在宅限界を高めていくことが必要。(看護)小規模多機能などの居宅支援サービスの整備を進めるとともに、既存の施設等による在宅支援を強化していくことが重要。また、「介護離職ゼロ」に向けて、介護サービス基盤として介護付きホーム(特定施設入居者生活介護)も含めて、その整備を促進していくことが重要。

これまでの議論
15
3.地域包括ケアシステムの推進
(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
(1)介護サービス基盤、高齢者向け住まい(続き)
【これまでの議論(続き)】
(高齢者住まいの在り方)
・ 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の質を確保するため、都道府県に届け出られた住宅型有料老人ホームに関する情報について市町村に通知し、市町村がこれらを把握できるようにするなど、行政による現状把握と関与の強化が必要。未届けの有料老人ホームへの対応や、介護サービス利用の適正化を進めることも重要。利用者の適正な事業者の選択につなげるため、事業者に係る情報公表の取組を充実させることが重要。地域支援事業の介護相談員等も活用しながら「外部の目」を入れる取組を進めることも重要。地域に開かれた透明性のある運営につなげることも重要。
(高齢者の住まいと生活の一体的支援の在り方)
・ 高齢者が住み慣れた地域においてその人らしく暮らし続けられるよう、自宅と介護施設の中間的な住まいについても普及を図っていくことが必要。また、生活面に困難を抱える高齢者に対して、生活困窮者施策とも連携しながら住まいと生活支援を一体的に実施していくことが必要。

これまでの議論
16
3.地域包括ケアシステムの推進
(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
(2)医療・介護の連携
○ 医療・介護の役割分担と連携を一層推進する観点から、日常的な医学管理が必要な要介護者やリハビリテーションが必要な要介護者、看取り期にある要介護者等を支える介護サービスの在り方について議論。介護老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能の在り方について議論。また、介護医療院について、円滑な転換に向けて、更に求められる取組等についてどのように考えるか、
議論。
〇 在宅医療・介護連携推進事業について、現行の事業体系の見直しや、国や都道府県による市町村支援の充実を図るための方策等について、議論。
【これまでの議論】
(総論)
・ 地域の介護サービス基盤の整備にあたっては、介護保険事業(支援)計画と地域医療構想の整合も含め医療提供体制の在り方と一体的に議論を行いながら進めていくことが必要。
・ 医療と介護の連携を一層推進するためには、ICTやデータ利活用を推進することが重要。また、国や都道府県による市町村支援の充実を図ることが必要。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の観点を持ちながら、医療と介護が連携して対応することが重要。中重度の医療ニーズや看取り期にある者に対応する在宅限界を高めていく在宅サービスの充実を計画的に図っていくことも重要。
・ リハビリテーションについて、どの地域でも適時適切に提供されるよう、介護保険事業(支援)計画での対応を含め更なる取組の充実が必要。
・ 介護老人保健施設について、在宅復帰・在宅療養支援の機能を更に推進していくことが重要。
(介護医療院)
・ 介護医療院について、令和5年度末の介護療養型医療施設の廃止等を踏まえながら、より早期の意思決定を支援するとともに、申請手続きの簡素化も含めた移行等支援策の充実により、円滑な転換を一層促進することが必要。
・ 事前に見込まれていない医療療養病床からの転換により各保険者の介護保険財政に影響を及ぼすおそれがあり、介護保険事業(支援)計画において、介護医療院のサービス量を適切に見込むための方策を講じることが必要。医療療養病床からの転換については、医療計画との整合を図ることも必要。

これまでの議論
17
3.地域包括ケアシステムの推進
(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
(2)医療・介護の連携
【これまでの議論(続き)】
(在宅医療・介護連携推進事業)
・ 在宅医療・介護連携推進事業について、全ての自治体において事業が実施されている中で、市町村において、地域の実情に応じ、取組内容の充実を図りつつ、PDCAサイクルに沿った取組を更に進められるよう、現行の事業体系の見直しが必要。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」や「認知症施策推進大綱」等の最近の動向も踏まえることが重要。各市町においては、単に事業を実施するだけでなく、地域課題や取組内容の見える化を進め、目的をもって事業を進めていくことが重要。医師会等関係機関や医師等専門職と緊密に連携して取組を進めることが重要。
・ 在宅医療・介護連携推進事業について、切れ目のない在宅医療・介護の実現に関する目標を設定し、地域の目指す姿を住民や医療・介護関係者で共有できるようにすること、認知症等への対応を強化すること、事業項目全ての実施を求めるのではなく、一部項目の選択的実施や地域独自の項目の実施を可能とするなど、一定程度地域の実情に応じた実施を可能とすること、事業体系を明確化して示すことが必要。地域包括ケアシステムの理念達成に向けて取り組まれるようにすることが重要。
・ 都道府県においては、地域医療構想の取組との連携や医師会等関係機関との調整、研修会等を通じた情報発信や人材育成、保健所等による管内の広域的な調整やデータの活用・分析を含めた市町村支援等を更に進めることが必要。市町村の医療や介護・健康づくりを総合的に進める人材の育成や適切な人員配置を進めることも重要。
・ 国においては、自治体における取組を支援することが必要。自治体がPDCAサイクルに沿った取組を進めるにあたり活用可能な指標の検討を進めることが必要。また、課題抽出を含め事業実施にあたり活用できるよう、地域包括ケア「見える化」システム等を活用できる環境整備を進めることが必要。事業の好事例を横展開することも重要。

これまでの議論
18
4.認知症施策の総合的な推進
○ 認知症の人の数は2012年で約462万人(65歳以上人口対比15%)、2025年には約700万人(約20%)となると推計され、65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症になると見込まれている。
○ 平成271月、「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて」(新オレンジプラン)を策定。認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現に向けた取組を推進。平成29年介護保険法改正では、新オレンジプランを踏まえた改正を実施。
(※)認知症施策の基本的な考え方として、認知症に関する知識の普及・啓発、心身の特性に応じたリハビリテーション、介護者支援等の施策の総合的な推進、認知症の人及びその家族の意向の尊重等の規定への盛り込み(法第5条の2)等
○ 令和元年6月、「認知症施策推進大綱」が取りまとめられた。認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら、「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進。
(※)「共生」とは、認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きるという意味「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味
(※)大綱の5つの柱: ①普及啓発・本人発信支援 ②予防 ③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援 ④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援 ⑤研究開発・産業促進・国際展開
○ 令和元年6月、認知症基本法案(衆法第30号)が衆議院に提出。(継続審議中)

現状・基本的な視点
19
4.認知症施策の総合的な推進
○ 認知症施策推進大綱等を踏まえて、介護保険制度において認知症施策推進大綱を推進するための方策、第8期介護保険事業(支援)計画において盛り込むべき内容、認知症が関係する他の計画との関係、介護保険法の認知症施策の推進に関する規定(第5条の2)等についてどのように考えるか、議論。

【これまでの議論】
(総論)
・ 認知症施策について、認知症施策推進大綱に沿って、認知症バリアフリー、予防、早期発見・早期対応、家族支援等の具体的な施策を推進していくことが必要。行政、事業者、専門職、職能団体等が横断的に協働して取り組むことが重要。
・ 認知症施策を総合的に推進していくことについて、介護保険法上、介護保険事業(支援)計画における記載事項に位置付けるとともに、基本指針において大綱の考え方や施策を明確に位置付け、計画的に取組を進めることが必要。
・ 自治体が定める認知症が関係する他の計画の作成について、施策の効果的な推進や自治体の負担等の観点から、介護保険事業(支援)計画との一体的な作成や互いに調和を図ることなどを引き続き図っていくことが重要。大綱に盛り込まれているまちづくりや交通等の幅広い施策において、介護保険事業(支援)計画との連携を図っていくことが重要。認知症基本法案にある認知症施策の推進計画について、自治体の事務負担軽減の観点からも、介護保険事業(支援)計画との一体的作成を図ることが必要。
・ 介護保険法第5条の2(認知症に関する施策の総合的な推進等の規定)において、大綱の考え方や施策を位置付け、地域における支援体制の整備や予防に関する調査研究など、「共生」「予防」の取組を推進することが必要。なお、同条における「認知症」の規定については医学の診断基準が変遷しており、今後も医学の進歩に伴って診断基準が変わる可能性があることも踏まえ、柔軟に対応できるよう見直すことが必要。
(普及啓発)
・ 認知症について正しく理解されていない現状もあり、認知症サポーターの養成や本人発信支援等により普及啓発を進めることが必要。認知症になった方が働き続けられる環境整備を進める観点からも、企業等における普及啓発を進めることが重要。
(認知症バリアフリー)
・ 認知症になってからもできる限り住み慣れた地域で普通に暮らし続けていけるよう、「認知症バリアフリー」の取組を推進していくことが必要。特に地域において認知症サポーター等が活躍できる仕組みづくり(チームオレンジ)が必要。先進的な取組を横展開して各地域の取組を充実していくことが必要。
これまでの議論
20
4.認知症施策の総合的な推進
【これまでの議論(続き)】
(予防)
・ 認知症の予防について、「通いの場」をはじめ、高齢者の身近な場における認知症予防に資する可能性のある活動を推進することが必要。
・ 予防については可能な限りエビデンスに基づいて取り組むことが重要であり、予防に関するエビデンスの収集・分析を進めることが必要。きちんとしたエビデンスを考慮しながら、国民にメッセージを発信していくことが必要。
・ 予防については短期的な視点ではなく、長期的な予防、啓発、若いうちからの働きかけが必要。企業における健康経営の推進という観点からも取組が必要。
・ 「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味であり、誤った受け止めによって新たな偏見や誤解が生じないよう、取組を進める上で配慮が必要。
(早期発見・早期対応)
・ 認知症の早期発見・早期対応に向けて、かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症初期集中支援チーム等の体制の質の向上、連携強化が必要。先進的な取組を横展開して各地域の取組を充実していくことが必要。
・ 地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、認知症初期集中支援チーム等、相談窓口の周知を図るとともに、「通いの場」でスクリーニングを実施するなど、取組を強化していくことが必要。
(家族支援)
・ 認知症の人の家族(介護者)への支援が重要。介護者の負担軽減のため、介護サービスの活用や、認知症カフェ、家族教室や家族同士のピア活動等の取組の推進が必要。
(その他)
・ 認知症グループホームについては、地域の中でさらに役割を発揮してもらうため、ユニット数や運営規模の弾力化を進めていくことが必要。
これまでの議論
21
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(介護人材の確保・介護現場の革新)
○ 介護関係職種の有効求人倍率は、平成30年度は3.95倍と、全職業(1.46倍)より2ポイント以上高い。都道府県別に見ても、全都道府県で2倍を超えている状況(本年4月時点)。
○ 第7期計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護人材の需要を見ると、2020年度末には約216万人、2025年度末には約245万人が必要。2016年度の約190万人に加え、202年度末には約26万人、2025年度末までに約55万人、年間6万人程度の介護人材を確保することが必要。
○ さらに、2040年を展望すると、2025年以降は現役世代の減少が顕著となり、地域の高齢者介護を支える人的基盤の確保が大きな課題。
○ 現在、①介護職員の処遇改善、②多様な人材の確保・育成、③離職防止・定着促進・生産性向上、④介護職の魅力向上、さらには外国人材の受入環境整備など、総合的な介護人材確保対策を実施。
○ また、今後とも介護施設等において地域における介護ニーズに応えられるよう、介護現場を預かる関係団体の叡智を結集し、取組の意識共有を図るため、平成3012月に「介護現場革新会議」を立ち上げ。平成313月に基本方針をとりまとめ、①人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するマネジメントモデルの構築、②ロボット・センサー・ICTの活用、③介護業界のイメージ改善
と人材の確保といった課題に介護業界を挙げて取り組む必要性を共有。
○ 当面、以下の項目について、関係団体と厚生労働省が一体となって優先的に取り組むこととし、令和元年度は、全国7か所の地域でパイロット事業を実施。
・ 業務の洗い出し・切り分けを行った上で、ロボット・センサー・ICTの活用と元気高齢者などの活躍を促し、介護施設をはじめとする介護現場における業務の効率化モデルを普及させる。
・ 中学生、高校生等が進路を考えるに当たって、介護職の魅力を認識し、仕事として選択をしてもらえるよう、学校や進路指導の教員などへの働きかけを行う。

現状・基本的な視点
22
これまでの議論
23
○ 介護人材の確保・介護現場の革新を進めるための方策や体制等についてどのように考えるか、議論。
【これまでの議論】
(総論)
・ 介護人材の確保について、新規人材の確保、離職の防止の双方の観点から、総合的な対策を進めていくことが必要。介護職員の処遇改善、多様な人材の参入・活躍の促進、働きやすい環境の整備、介護職の魅力向上、外国人材の受入れ環境整備の取組を一層進めることが必要。
・ 取組を進める上では、現在活躍されている介護職員の方が感じている「やりがい」や働き続けられている理由、人材確保に成功している事業所の特徴などに着目することも重要。また、経営者や管理者への働きかけが重要。
・ 介護人材不足は全国的な課題ではあるものの、足下や将来の具体的な状況、対応方策は各地域で異なる。各都道府県、各市町村において、関係者の協働の下、介護人材の確保や生産性向上の取組について、地域の実情に応じてきめ細かく対応していく体制整備を図ることが必要。
・ 介護人材不足の中、介護サービス基盤整備を進める上では、各市町村・都道府県において、介護人材の確保についても介護保険事業(支援)計画に基づき計画的に進めることが必要。
・ 介護保険事業(支援)計画に基づき、サービスごと、職種ごとの人手不足等の状況も踏まえながら、介護職に限らず介護分野で働く人材の確保・育成を行い、介護現場全体の人手不足対策を進めることが重要。
(処遇改善)
・ 介護人材確保のためには、賃金制度の整備を進めることも含め、介護職員の更なる処遇改善を着実に行うことが重要。
(多様な人材の参入・活躍の促進)
・ 「富士山型」の構造を目指しながら、介護業務の中心的担い手となる若者、即戦力となる潜在介護福祉士をはじめ、多様な人材の参入、活躍を促進することが必要。
・ 介護業務の中心的担い手となる若者の確保が重要。保護者や教職員の理解を得る取組を進める必要。また、子どもの頃からの高齢者、介護に関する教育も重要。介護福祉士が果たすべき役割や機能の明化も必要。
・ 即戦力となる潜在介護福祉士に活躍してもらうことが重要であり、現場に戻ってもらうための取組を進める必要。
・ 介護現場の持続可能性を確保していくためには、高齢者の地域や介護現場での活躍を促進し、健康づくり・介護予防を図るとともに、元気高齢者に介護の支え手として活躍していただくことが重要。

5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新

(介護人材の確保・介護現場の革新)
これまでの議論
24
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(介護人材の確保・介護現場の革新)
【これまでの議論(続き)】
(働きやすい環境の整備)
・ 離職防止・定着促進の取組を進めることが必要。離職理由に「職場の人間関係」が多いことから、相談支援が重要。小規模事業者への取組支援も重要。
(介護職の魅力向上)
・ 現場の介護職が実際に感じている働きがいや魅力を把握して広く社会に発信していくことが重要。また、介護の現場を地域に開いて、子どもや住民が介護を知る機会を増やし、介護現場を地域全体で応援する仕掛けづくりを進めてはどうか。
(外国人材の受入れ環境整備)
・ 本年4月に創設された在留資格「特定技能」を始め、外国人介護人材の受入れを着実に推進することが必要。海外から受け入れる場合のマッチング支援が重要。また、外国人材を受け入れるための就労面や生活面の環境整備を進めることが必要。
(介護現場の革新)
・ 人的制約がある中で質の高いサービスが提供できる環境を整備していくことが重要。介護現場における業務仕分けやロボット・ICTの活用、元気高齢者の参入による業務改善など、介護現場革新の取組を進めることが必要。あわせて、職員配置の見直しも検討していくことが必要。
(ロボット・ICTの活用)
・ 人手不足に対応していくためには、ロボット・ICTの活用が必要。普及にあたっては仕様や業務の標準化や事業者への支援が必要。なお、介護サービスの質や安全性の確保に留意することが必要。
(文書量削減)
・ 介護分野の文書の削減・標準化等を進め、現場の事務作業量を削減することが必要。
(※)文書の削減・標準化等については、介護保険部会の下に設置した「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」において、指定申請関連文書、報酬請求関連文書、指導監査関連文書等に関して、①個々の申請様式・添付書類や手続きに関する簡素化、②自治体毎のローカルルール解消による標準化、③共通してさらなる効率化に繋がる可能性のあるICT等の活用等の観点から検討を進めている。
(大規模化)
・ 人手不足に対応していくためには、事業者の大規模化や、事業所の連携によるロボット・ICT等の共同購入や、人材確保・育成、事務処理の共同化を進めることも重要。そのためには、事業所や自治体の業務の標準化を進めることも重要。
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
○ 介護保険制度は、その創設から19年が経ち、サービス利用者は制度創設時の3倍を超え、介護サービスの提供事業所数も着実に増加し、介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着、発展してきている。一方、高齢化に伴い、介護費用の総額も制度創設時から約3倍の11.7兆円(令和元年度予算ベース)になるとともに、第1号保険料の全国平均は6,000円弱となり、2040年度には9,000円程度に達することが見込まれる状況にある。
○ こうした状況の中で、要介護状態等の軽減・悪化の防止といった制度の理念を堅持し、必要なサービスを提供していくと同時に、給付と負担のバランスを図りつつ、保険料、公費及び利用者負担の適切な組み合わせにより、制度の持続可能性を高めていくことが重要。
○ 介護保険料の伸びの抑制に向けて、給付と負担に関して、平成29年介護保険法改正時の社会保障審議会介護保険部会における議論や、「新経済・財政再生計画改革工程表2018」(平成301220日経済財政諮問会議決定)等を踏まえた以下の
諸課題について検討。
(1)被保険者範囲・受給者範囲
(2)補足給付に関する給付の在り方
(3)多床室の室料負担
(4)ケアマネジメントの関する給付の在り方
(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
(6)高額介護サービス費
(7)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準
(8)現金給付
現状・基本的な視点
25
(1)被保険者範囲・受給者範囲
○ 介護保険制度は、老化に伴う介護ニーズに適切に応えることを目的とし、被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上64歳以下の第2号被保険者からなる。
○ 制度創設以降、被保険者・受給者範囲については、要介護となった理由や年齢の如何に関わらず介護を必要とする全ての人にサービスの給付を行い、併せて保険料を負担する層を拡大する「制度の普遍化」を目指すべきか、「高齢者の介護保険」を維持するかを中心に議論が行われてきた。
○ 平成28年の「介護保険制度の見直しに関する意見」(社会保障審議会介護保険部会)では、被保険者範囲の拡大について、「引き続き検討を行うことが適当である」とされた。(※)
(※)「被保険者範囲の拡大については、受益と負担の関係が希薄な若年世代の納得感を得られないのではないかという意見や、まずは給付の効率化や利用者負担のあり方を見直すことが先決であり、被保険者範囲の拡大については反対との意見、介護保険優先原則に関する改正障害者総合支援法の国会附帯決議に十分留意しながら検討すべきとの意見、障害者の介護は保険になじまないため、税財源により慎重に対応すべきとの意見があった。その一方で、将来的には介護保険制度の普遍化が望ましいとの意見や、制度の持続可能性の問題もあり、今から国民的な議論を巻き起こしていくことが必要であるとの意見もあり、介護保険を取り巻く状況の変化も踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当である。」
○ 被保険者範囲・受給者範囲について、今後の人口構成の変化、介護保険制度創設時の考え方や、これまでの議論の経緯を踏まえ、どのように考えるか、議論。
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 介護保険制度創設時の考え方は現時点においても合理性があり、基本的には現行の仕組みを維持すべき。
・ 第2号被保険者の対象年齢を引き下げることについて、若年層は子育て等に係る費用負担があること、受益と負担の関係性が希薄であることから反対。
・ 被保険者範囲の拡大は将来的には避けられない課題であり、40歳未満の方について保険料負担を軽減するなどしながら拡大し、介護の普遍化を図っていくべき
60歳代後半の方の就職率の上昇や要介護認定率が低いことを勘案し、将来的には第1号被保険者の年齢を引き上げる議論も必要
65歳以上の就業者の増加と40歳以上の生産年齢人口の減少という年齢構成の変化を踏まえ、中長期的な見通しを示した上で、方向性を決めていくことが必要。
・ 被保険者・受給者範囲の拡大の議論の前に、給付サービスや自己負担の在り方について適切に見直すことが先決。

これまでの議論
26
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(2)補足給付に関する給付の在り方
○ 制度発足時の介護保険においては、介護保険三施設(特養、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)及び短期入所生活・療養介護(ショートステイ)について、居住費・食費が給付に含まれていた。平成17年改正により、在宅の方との公平性等の観点から、これらのサービスの居住費・食費を給付の対象外とした(※)。併せてこれらの施設に低所得者が多く入所している実態を考慮して、住民税非課税世帯である入所者については、世帯の課税状況や本人の年金収入及び所得を勘案して、特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)として、介護保険三施設について居住費・食費の負担軽減を行っている。また、在宅サービスであるショートステイについても、サービス形態が施設入所に類似していることに鑑み、併せて同様の負担軽減を行っている。
() この際、通所介護及び通所リハビリテーションの食費についても、給付の対象外とした。
○ 平成26年改正においては、こうした経過的かつ低所得者対策としての性格をもつ補足給付について、在宅で暮らす方や保険料を負担する方との公平性の確保の観点から見直しを行ったところ。(※)
(※)① 一定額超の預貯金等(単身1000万円超、夫婦世帯2000万円超)がある場合には、対象外。(平成27年8月施行)
② 施設入所に際して世帯分離が行われることが多いが、配偶者の所得は、世帯分離後も勘案することとし、配偶者が課税されている場合は、補足給付の対象外。(平成27年8月施行)
③ 補足給付の支給段階の判定に当たり、非課税年金(遺族年金・障害年金)も勘案。(平成28年8月施行)
○ 平成28年の介護保険部会意見では、補足給付を行うにあたっての不動産の勘案に関して議論が行われ、「引き続き検討を深めることとするのが適当」とされた。(※)
(※) 「厚生労働省において調査研究事業を行ったが、地域的な格差、民間金融機関の参入の困難性、認知症の方への対応等様々な実務上の課題が明らかになった。このような状況を踏まえ、補足給付の不動産勘案に関しては、一定額以上の宅地を保有している場合に資産として活用することについて、引き続き検討を深めることとするのが適当である。検討に際しては、民間金融機関が実施するリバースモーゲージ等における知見の蓄積、成年後見制度の普及等の状況も踏まえる必要があるが、リバースモーゲージについて全国的な導入は難しいとしても導入できる地域から導入すべきではないか、どのような工夫をすればリバースモーゲージを導入できるかという観点から検討を進めるべきではないか、補足給付を介護保険制度の下で実施することの是非についても考えるべきではないかなどの意見があったことにも留意することが必要である。」
○ このような中、改革工程表2018において、「高齢者医療制度や介護制度において、所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、「能力」に応じた負担を求めることを検討する。」という内容が盛り込まれている。
○ 経過的かつ低所得者対策としての性格をもつ補足給付に対して、在宅で暮らす方や保険料を負担する方との公平性の観点から見直す点はあるか、また、不動産の勘案について、資産を預貯金の形でもつ方との公平性の観点や、地域的な格差、民間金融機関の参入の困難性、認知症の方への対応等様々な実務上の課題等を踏まえ、どのように考えるか、議論。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(2)補足給付に関する給付の在り方(続き)
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 補足給付は経過的・低所得者対策とされるが、恒久的な介護保険制度の一部として、実務的な微調整は行っても堅持すべき。
・ 介護給付費が大幅に伸びる中で制度の持続可能性を担保していくためには、給付と負担のバランスがしっかりと確保されることが必要。補足給付の在り方についてもしっかりと議論を進めるべき。
補足給付について、相対的に在宅の方の負担を上げていることにもなり、公平性の観点から、せめて食費は給付の対象から外すことを検討すべき。
・ 補足給付について、前回の制度改正によりどのような生活上の影響が出ているかを丁寧に見て検討することが必要。
・ 補足給付が支給される第三段階と支給されない第四段階で大きな差がある。第四段階の部分も見ながら検討することが必要。
・ 補足給付について、制度の持続可能性の観点から検討が必要であるが、長寿化する中で利用者の負担がいつまで続くか老後不安が増大しており、年金給付水準や貯蓄状況も踏まえた検討が必要。
・ 補足給付の見直しについて、介護サービス利用者の負担増となることを懸念。負担能力を踏まえた議論が必要。
・ 預貯金勘案の1,000万円の基準について、世帯構成や不動産所有などで事情も変わり、バッファーの500万円については見直しの余地がある。
・ 預貯金勘案について、特養が終の棲家であることも踏まえて、考慮すべき資産額として現在の金額が妥当なのか検討の余地がある。
・ 不動産について、公平性の観点から勘案することが適当であるが、導入には課題も多く、引き続き研究が必要。
・ 不動産について、個人の最大の資産は不動産であり、中長期的には何らかの形で勘案が必要。亡くなったときに利用料金や保険料を回収する制度も考えられるのではないか。
・ 不動産の勘案について、リバースモーゲージは親世代から引き継いできた不動産を自分の代で処分することには抵抗感があることも考えられ、慎重な検討が必要。
補足給付について、財源が介護保険財源でよいのか、生活保護の施策等も踏まえながら財源の在り方についても検討が必要。

これまでの議論
28
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(3)多床室の室料負担
○ 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設等における居住費については、平成1710月より、在宅と施設の利用者負担の公平性の観点から、保険給付の対象外とし、居住環境の違いに応じ、個室は光熱水費及び室料、多床室は光熱水費を負担することとされた。
(※)低所得者については、負担軽減を図る観点から、所得段階等に応じた負担限度額を設定し、限度額を超えた分については、補足給付として特定入所者
介護サービス費を支給。
○ 平成27年度からは介護老人福祉施設について、死亡退所も多い等事実上の生活の場として選択されていることから、一定程度の所得を有する在宅で生活する者との負担の均衡を図るため、一定の所得を有する入所者から、居住費(室料)の負担を求めることとした。(利用者負担第1~3段階の者については、補足給付により利用者負担を増加させないこととした。)
○ 平成30年度に、介護療養型医療施設の経過措置期限が令和5年度末まで延長されるとともに、介護医療院が創設されたが、その居住費の取扱いについては、介護老人保健施設、介護療養型医療施設と同様とされた。なお、経過措置期限を踏まえ、介護療養型医療施設から介護医療院への転換を促しているところ。
○ このような中、骨太方針2018や改革工程表2018において、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院等の多床室室料について、給付の在り方を検討する旨の内容が盛り込まれている。
○ 介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設の多床室の室料負担の在り方について、①在宅でサービスを受ける者との負担の公平性、②介護老人福祉施設の多床室については、死亡退所が多い等事実上の生活の場として選択されていることを踏まえ室料負担を求めることとした一方、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院は、医療を提供するという他の機能も有するといった施設機能の違い、③介護療養型医療施設の経過措置期限を令和5年度末とし、介護医療院への転換を促していることとの整合等を踏まえ、どのように考えるか、議論。

これまでの議論
29
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(3)多床室の室料負担(続き)
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 施設の室料については個室も多床室も同様に扱うことが原則であり、在宅と施設の公平性の観点からも、保険給付の対象外とすることが適当。
・ 社会保険料の負担増により中小企業や現役世代の負担は限界に達しており、給付と負担の見直しに関する改革項目は確実に実施すべき。
・ 多床室の室料負担の見直しについて、利用者の負担増となることを懸念。負担能力を踏まえた議論が必要。
・ 老健施設、介護医療院は生活の場としての機能だけではなく医療サービスや在宅支援も提供する施設。個室の設備は多床室とは異なっている。また、医療療養病床から介護医療院への移行推進にブレーキをかけることにもなる。多床室の入所者から室料負担を求めることは反対。

これまでの議論
30
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方
○ 居宅介護支援(ケアマネジメント)は、居宅介護支援事業者が居宅の要介護者に対して、居宅サービス計画(ケアプラン)の作成やサービス事業者との連絡調整等を行うものであり、高齢者自身によるサービスの選択、サービスの総合的・効率的な提供等、重要な役割を果たしている。居宅介護支援については、要介護者等が積極的に本サービスを利用できるよう、制度創設時から10割給付のサービスと位置づけられてきた。
○ ケアマネジメントに関する給付の在り方については、これまでも議論されてきており、制度創設10年となる平成22年の介護保険部会意見において、利用者負担について言及がされ、利用者負担導入に関する賛成・反対の両方の意見が付され、平成23年の社会保障・税一体改革の検討の中で、介護分野の議論の整理がとりまとめられた際にも、賛成・反対の両論併記とされている。また、平成2812月の介護保険部会意見においても引き続き両論併記(※)とされたうえで、「ケアマネジメントに関する利用者負担についても様々な意見があり、ケアマネジメントの在り方とあわせて引き続き検討を行うことが適当である」とされた。
(※)利用者負担に賛成の立場から、ケアマネジャーの専門性を評価する意味で利用者負担を求めるべき、施設給付ではケアマネジメントサービスは 包含されていることとの均衡を図るべき等の意見が出された。一方、反対の立場から、あらゆる利用者が公平にケアマネジメントを活用し、自立した日常生活の実現に資する支援が受けられるよう、現行制度を堅持すべき、利用者負担を導入すると、利用者の意向を反映すべきとの圧力が高まり、給付費の増加につながる等の意見が出された。
○ 今後、高齢者の地域における暮らしを支え続ける観点から、ケアマネジャーについては、介護給付サービスの調整にとどまらず、かかりつけ医をはじめとする医療との連携や、地域におけるインフォーマルサービス等の多様な資源の活用等の観点において、中心的な役割を果たすことが期待されている。その一方で、ケアマネジャーの処遇の相対的な低さや業務負担の大きさも指摘されている。
○ このような中、骨太方針2018や改革工程表2018において、介護のケアプラン作成について、給付の在り方を検討する旨の内容が盛り込まれている。
○ ケアマネジメントに関する給付の在り方について、介護保険部会等におけるこれまでの議論も踏まえつつ、①医療との連携やインフォーマルサービス等の活用など、ケアマネジメントが担う役割の変化や、②ケアマネジャーの処遇改善や事務負担の軽減等により、その力を十分に発揮できる環境を整備し、自立支援・重度化防止の実現に向けた質の高いケアマネジメントを実現していく観点、③ケアマネジメントと他のサービスとの均衡や相違点、給付の見直しが利用者やケアマネジメントに与える影響を踏まえ、どのように考えるか、議論。
これまでの議論
31
5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方(続き)
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 社会保険料の負担増により中小企業や現役世代の負担は限界に達しており、給付と負担の見直しに関する改革項目は確実に実施すべき。
・ 能力のある人には負担していただくことも重要であり、ケアプランの利用者負担について見直しが必要。
・ 介護保険制度創設から20年が経ち、サービス利用も定着する中で、他のサービスでは利用者負担があることを踏まえ、一定の利用者負担導入を検討すべき。
・ 利用者負担の導入は、現役世代の理解、利用者本位のケアプラン作成、質の高いケアマネジメントの観点から前向きに検討すべき。
・ ケアプランについて、ケアマネジャーが保険者に代わって考えるものということであれば自己負担は不要であるが、介護サービスの一部ということであれば、1割負担とすることが適当。
・ ケアマネジメントの給付の在り方について、利用者負担が増えることは容認できない。
・ 利用者負担の導入については、利用者や家族のいいなりにならないか、セルフケアプランが増加し自立につながらないケアプランとならないかなどの課題を踏まえた上で検討すべき。今が適切な時期か否か冷静に見極める必要がある。
・ 利用者負担については、入口での利用控えが危惧される中で、拙速な導入は反対。
・ ケアマネジメントの給付の在り方について、介護保険制度においてはケアマネジメントにより自立支援の調整が図られてきており、今後単身世帯の増加や年金水準の低下も懸念される中では、相談支援でインフォーマルサービスに繋げることも必要となる。現行給付を維持することが適当ではないか。
・ ケアマネジメントについて、セルフケアプランが増加した場合に質の確保が懸念される。質の高いケアマネジメントの実現等の観点から検討を進めるべき。
・ ケアプランの質を確保していく上では、セルフケアプランによるサービス提供について給付対象とするか否かも検討すべき。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
○ 介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という。)については、既存の介護サービス事業者に加えて、NPOや民間企業等の多様な主体が介護予防や日常生活支援のサービスを総合的に実施できるようにすることで、市町村が地域の実情に応じたサービス提供が行えるようにすることを目的として、平成26年の介護保険法改正で創設した事業。この改正により、要支援1・2の者の訪問介護と通所介護が総合事業へと移行された。
○ 総合事業の実施状況については、
・ サービス利用量について、給付から総合事業へ移行した前後で約4千人を抽出した調査では、利用者一人当たりの利用日数について移行前後において大きな変化はみられなかった。
・ 一方、サービス別事業所数を見ると、制度改正前の介護予防サービスと同じ基準で提供されるサービスの割合が大きく、市町村の実施状況を見ても、住民主体のサービスなどの多様なサービスが実施されている市町村数は6~7割にとどまっている。
○ このような中、骨太方針2018において、「介護の軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する」ことが記載され、また、改革工程表2018においては、「軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付について、地域支援事業への移行を含めた方策について、関係審議会等において第8期介護保険事業計画期間に向けて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」ことが記載されている。
○ 軽度者に対する給付の在り方について、①要支援者よりも介護の必要性の高い要介護者について、その状態を踏まえた適切なサービス提供を確保する観点や、②総合事業の実施状況や、介護保険の運営主体である市町村の意向、③今後の高齢化の進展や現役世代の減少を踏まえたサービス提供の必要性の観点等、幅広い観点から、どのように考えるか、議論。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方(続き)
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 制度の持続可能性を担保していくためには、給付と負担のバランスがしっかりと確保されることが必要。軽度者への生活援助サービスといったことについてしっかりと議論を進めるべき。
・ 社会保険料の負担増により中小企業や現役世代の負担は限界に達しており、給付と負担の見直しに関する改革項目は確実に実施すべき。
・ 今後高齢化が更に進み介護費が急激に増えていく中で、介護保険料でどこまでの費用を認めるのかという議論も必要。
・ 人材や財源に限りがある中で、専門的サービスを必要とする重度の方に重点化することが必要であり、軽度者への生活援助サービスについては地域支援事業へ移行していくことを考えるべき。
・ 要介護1・2の方の生活援助サービスの地域支援事業への移行は、将来的には検討が必要であるが、総合事業の住民主体のサービスが十分ではなく、地域ごとにばらつきもある中では、効果的・効率的な取組は期待できない。まずは現行の総合事業における多様なサービスの提供体制の構築等を最優先に検討すべき。
・ 軽度者への生活援助サービスの地域支援事業への移行は、総合事業の実施状況や市町村の意向を踏まえて慎重に検討すべき。総合事業の課題である実施主体の担い手不足が解消される見込みもない中では市町村も対応できず、現段階での判断は現実的でない。
・ 軽度者への生活援助について、介護離職ゼロの観点や利用者の生活実態を十分踏まえて慎重な検討が必要。
軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方について、訪問介護における生活援助サービスは身体介護とあわせて一体的に提供されることで有用性が発揮され、利用者の生活を支えており、軽度者も重度者も同量のサービスを受けている。切り離した場合には状態が悪化して給付増につながる懸念もあり、慎重に検討すべき。
・ 軽度者への生活援助サービスに関する給付の見直しについて、介護サービス利用者の負担増となることを懸念。要介護1・2の方は軽度者ではなく、認知症の方もおり、重度化防止のためには専門職の介護が必要。施設に入れない、低所得で高齢者向け住まいに入れないなど様々な理由で生活援助サービスを必要としている方がいることに留意が必要。
・ 総合事業を使っている人が要介護になった場合に総合サービスを利用できるようにすることについての検討はあり得るが、切り替えることは乱暴すぎる。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(6)高額介護サービス費
○ 介護保険制度においては、所得の段階に応じて利用者負担額に一定の上限を設け、これを超えた場合には、超えた額が高額介護サービス費として利用者に償還されることとなっており、過大な負担とならない仕組みとしている。
○ 高額介護サービス費の所得段階及び上限額は、制度創設時には、生活保護受給者等について15,000円(個人)、住民税非課税世帯の者について24,600円(世帯)、これ以外の者について37,200円(世帯)と設定していたところ。
○ 平成29年改正においては、一般区分の負担上限額を37,200 円(世帯)から医療保険の一般区分の多数回該当と同じ水準である44,400 円(世帯)とされたところ。また、長期利用者に配慮し、一割負担のみの世帯については、年間の負担額が現行の年間の最大負担額を超えることのないよう446,400円(37,200円×12ヶ月)の年間上限を設けた(3年間の時限措置)。
○ 介護保険制度の高額介護サービス費の限度額は、制度創設時から医療保険の高額療養費制度を踏まえて設定されている。医療保険制度における高額療養費についてはこれまで累次の改正が行われており、70歳以上の方については、平成308月からは、現役並み所得区分が細分化され、多数回該当の上限額が、年収約383万~約770万円が44,400円、年収約770万~約1160万円が93,000円、年収約1,160万円以上が140,100円とされているところ。
○ 高額介護サービス費について、医療保険における自己負担額の上限額を踏まえ、その在り方についてどのように考えるか、平成29年改正で設けられた年間上限について、利用者数を踏まえ、どのように考えるか、議論。
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 医療保険とのバランスや現役世代との負担の公平性の観点から、医療保険と足並みをそろえる方向で検討すべき。
・ 医療と介護の高額合算制度がある中で、本当に生活に困る人がいないか、高額所得者も含めて多角的に検討することが必要。
・ 高額介護サービス費について、介護サービス利用者の負担増となることを懸念。負担能力を踏まえた議論が必要。
・ 年間上限についてはあくまで経過措置であり、特段の事情がない限り廃止する方向で検討すべき。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(7)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準
○ 介護保険制度においては、制度創設以来、利用者負担割合を所得にかかわらず一律1割としていたところであるが、平成26年の介護保険法改正において、一割負担の原則を堅持しつつ保険料の上昇を可能な限り抑えつつ、現役世代に過度な負担を求めず、高齢者世代内において負担の公平化を図っていくため、「一定以上所得のある方」(第1号被保険者の上位二割相当)について負担割合を2割とした。(平成27年8月施行)
(※)自己負担2割とする水準は、「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額280万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合346万円以上)」。
(※)2割負担に該当するのは、在宅サービス利用者のうちの5.4%、特別養護老人ホーム入所者のうちの2.5%、介護老人保健施設入所者のうちの3.7
(令和元年3月サービス分) 。
○ また、平成29年の介護保険法改正において、介護保険制度の持続可能性を高めるため、世代内・世代間の負担の公平や負担能力に応じた負担を求める観点から、「現役並みの所得を有する方」の負担割合を2割から3割に引き上げた。(平成308月施行)
(※)自己負担3割とする水準は、「合計所得金額220万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額340万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合463万円以上)」。
(※)3割負担に該当するのは、在宅サービス利用者のうちの4.4%、特別養護老人ホーム入所者のうちの1.6%、介護老人保健施設入所者のうちの2.4%(令和元年3月サービス分)。なお、サービス毎の受給者数をみると、平成30年8月の施行前後において、対前年同月比の傾向に顕著な差は見られない。
○ このような中、改革工程表2018において、「年金受給者の就労が増加する中、医療・介護における「現役並み所得」の判断基準を現役との均衡の観点から見直しを検討する。」旨の内容が盛り込まれている。
○ 「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準について、制度の施行状況を踏まえ、どのように考えるか、議論。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(7)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準(続き)
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 制度の持続可能性を担保していくためには、給付と負担のバランスがしっかりと確保されることが必要。現役並み所得の基準の見直しといったことについてしっかりと議論を進めるべき。
・ 社会保険料の負担増により中小企業や現役世代の負担は限界に達しており、給付と負担の見直しに関する改革項目は確実に実施すべき。
・ 能力のある人には負担していただくことも重要であり、負担能力に応じて広く薄く負担をお願いする観点からも、2割負担の対象について拡大できないか検討が必要。
・ 保険料の極めて大幅な伸びを少しでも抑制していくためには、将来的には利用者負担の原則2割化といったことも議論していくことが必要。少なくとも現状それほど多くない2割負担の対象範囲を拡大することが必要。
・ これまでの2割、3割負担の導入は高齢世帯に大きな影響を与えており、「一定以上所得」の判断基準の見直しについては利用者の生活実態も踏まえて慎重に検討すべき。
・ 利用者負担の見直しについて、介護サービス利用者の負担増となることを懸念。扶養家族がいるケースもあり、負担能力を踏まえた議論が必要。
65歳で3割負担、70歳で2割負担である医療とのバランスも考えて、被保険者全て原則1割負担でよいかも検討すべきではないか。
・ 利用者負担を原則2割負担とすることは、制度の持続可能性の確保というためであったとしても、生活、介護が立ち行かなくなるとは明らかであり認められない。
・ 利用者負担においては、低所得者への配慮を行うとともに、高所得者については保険料、利用者負担ともに高いことについて懇切丁寧な説明の下、理解を得るべき。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
(8)現金給付
○ 我が国では、介護保険制度創設時より、現金給付を介護保険給付として制度化するか否かについて議論を行ってきた。 制度創設時においては、家族介護の固定化に対する懸念、サービスの普及を妨げることへの懸念、保険財政が拡大するおそれ、介護をする家族には、デイサービスやショートステイなどの在宅サービスの普及により介護の負担軽減を図ることが重要である、といった考え方により、現金給付の導入を行わないこととした。
○ また、平成16年の介護保険部会意見においては、サービスの利用の拡大や国民意識の変化、財政面の懸念等から、現金給付に対する消極的な意見が強まっているとされた。
○ 平成28年の介護保険部会意見では、「ドイツでは、現金給付が家族を介護に縛り付けるという議論はなく、実際に家族を介護している人を評価する仕組みであり、現金給付は、市民社会にふさわしい制度であるとともに総介護サービス費の抑制に寄与しているとして、現金給付に賛成する意見があった。しかし、以下の通り、現金給付には消極的な意見が多く、現時点で現金給付を導入することは適当ではないと考えられる
・ 現金給付の導入は、家族介護の固定化につながり、「介護の社会化」という制度の理念や介護離職ゼロ・女性の活躍推進の方針に反しているため反対である。
・ 現金給付の導入によって、現物給付が縮小すると、介護サービスの基盤が崩れ、仕事と介護の両立が阻害される恐れがある。むしろ現金給付以外の介護者を支援する仕組みが必要である。
・ 現金給付の導入は新たな給付増につながることから、制度の持続可能性の確保の観点から反対である。不正受給の恐れもあり、
給付の適正化を進める流れとも逆行する。 」とされた。
○ 現金給付について、介護保険創設時の議論、その後の議論の経緯等を踏まえ、どのように考えるか、議論。
【これまでの議論(委員からの主な意見)】
・ 現金給付について、介護者の介護負担そのものが軽減されるわけではなく、介護離職が増加する可能性もあり、慎重に検討していくことが必要。

これまでの議論
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5.持続可能な制度の構築・介護現場の革新
(給付と負担)
その他の課題
(1)要介護認定制度
〇 要介護認定(要支援認定を含む)を受けている高齢者は、平成12年度以降増加傾向にあり、平成314月時点で659万人。近年の年間の認定件数も増加傾向にあり、申請から認定までの平均期間が長期化する中で、平成304月からは、更新認定有効期間を24か月から36か月に拡大するとともに、一定の要件を満たした者について介護認定審査会における審査を簡素化する見直しを実施。
〇 要介護認定の申請から認定までの平均期間が38.5日(平成30年度)と全国的に依然として長くなっている中で、保険者の要介護認定制度に関する業務の簡素化等について、議論。
〇 また、認定調査について、指定市町村事務受託法人等に委託して実施する場合の認定調査員の要件(介護支援専門員に限定)の緩和について、「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成301225日閣議決定)(※)も踏まえて、議論。
(※)「要介護認定に係る調査(272項)については、指定市町村事務受託法人が当該調査を行う場合に、介護支援専門員以外の者にも当該調査を行わせることについて、その影響等を考慮しつつ検討し、2019年度中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。」
【これまでの議論】
(業務の簡素化等)
・ 認定調査の遅れは利用者にも事業者にも影響を与えるものであり、コンピュータ判定に関する分析等により、認定業務の簡素化を図ることが重要。また、認定調査の均てん化を更に進めるとともに、ICTの活用を検討することも重要。
・ 平成30年度の有効期間拡大後の有効期間の設定状況や、更新認定後の要介護度の変化状況等を踏まえ、平成30年度に更新認定の有効期間を拡大した際の考え方を参考に、更新認定の二次判定において直前の要介護度と同じ要介護度と判定された者については、有効期間の上限を36か月から48か月に延長することを可能とすることが必要。なお、状態が重度化・軽度化した場合の区分変更申請が適切に行われるようにすることも重要。
(認定調査員の要件)
・ 認定調査員の要件について、認定調査を指定市町村事務受託法人に委託して実施する場合において、介護支援専門員以外の保健、医療、福祉に関しての専門的な知識を有している者も実施できることとすることが適当。認定調査員の質の確保には留意する必要。
これまでの議論
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その他の課題
(2)住所地特例
○ 介護保険においては、地域保険の考え方から、住所地の市町村が保険者となるのが原則。しかし、その原則のみだと介護保険施設等の所在する市町村に給付費の負担が偏ってしまうことから、介護保険施設等に入所する場合には、住所を変更しても、変更前の市町村が引き続き保険者となる仕組み(住所地特例)が設けられている。
〇 平成30年の地方分権改革に関する提案募集において、住所地特例の対象外とされている施設のうち、住所地特例の対象施設と同一市町村にある認知症高齢者グループホームを住所地特例の対象とすることが提案された。「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成301225日閣議決定)(※1)や、骨太方針2019(※2)なども踏まえつつ、住所地特例制度のあり方について、議論。
(※1)「住所地特例の適用や区域外指定の活用による対応について地方公共団体の意見を踏まえて検討し、2021年度からの第8期介護保険事業計画の策定に向けて結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。」
(※2)「住所地特例制度の適用実態を把握するとともに、高齢者の移住促進の観点も踏まえ、必要な措置を検討する。」
【これまでの議論】
・ 認知症高齢者グループホームを住所地特例の対象とすることについては、地域密着型サービスは住民のためのサービスであること、現行でも市町村間の協議で他の市町村でのサービス利用が可能であることから、現時点においては現行制度を維持することが適
当。
・ 自治体間において、財政面での不公平感がないよう、慎重な検討が必要。
・ 住所地特例の対象施設に入所する者が認知症高齢者グループホームに移ると住所地特例がはずれてしまうことについては、問題であり、検討が必要。認知症高齢者グループホームは利用を希望する方も多く、住所地特例の対象とすることについて検討が必要。
・ 今後の人口減少を鑑みれば、基盤整備やサービスの提供について、自治体間で広域的に連携していくことも重要。

これまでの議論
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これまでの議論をふまえた現時点での制度改正の全体イメージ

制度改正の全体イメージ(現時点)
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○ 次期介護保険制度改正について、これまでの介護保険部会の議論をふまえて現時点での全体イメージを以下のとおり整理。
(次ページ:イメージ図)(※)今後、介護保険部会や関係の検討会等の議論をふまえて更に整理を進める。
【改革の目指す方向】
○地域共生社会の実現と2040年への備え
・地域包括ケアシステム、介護保険制度を基盤とした地域共生社会づくり
・介護サービス需要の更なる増加・多様化、現役世代(担い手)減少への対応
【改革の3つの柱】 ※3つの柱は相互に重なり合い、関わり合う
1.介護予防・地域づくりの推進~健康寿命の延伸~/「共生」・「予防」を両輪とする認知症施策の総合的推進
・通いの場の拡充等による介護予防の推進
・地域支援事業等を活用した地域づくりの推進
・認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の総合的推進 等
2.地域包括ケアシステムの推進~地域特性等に応じた介護基盤整備・質の高いケアマネジメント~
・地域特性等に応じた介護サービス基盤整備
・質の高いケアマネジメントに向けた環境整備
・医療介護連携の推進 等
3.介護現場の革新~人材確保・生産性の向上~
・新規人材の確保、離職防止等の総合的人材確保対策
・高齢者の地域や介護現場での活躍促進
・介護現場の業務改善、文書量削減、ロボット・ICTの活用の推進 等
【3つの柱を下支えする改革】
○保険者機能の強化
・保険者機能強化推進交付金の抜本的な強化 ・PDCAプロセスの更なる推進
○データ利活用のためのICT基盤
・介護関連データ(介護DBVISITCHASE)の利活用に向けたシステム面・制度面での環境整備
○制度の持続可能性の確保のための見直し
・介護保険料の伸びの抑制に向けて、給付と負担について不断の見直し
地域共生社会の実現と2040年への備え
保険者機能の強化
制度の持続可能性の確保のための見直しを不断に実施
データ利活用のためのICT基盤整備
介護保険制度改革
(イメージ)
2.地域包括ケアシステムの推進
~地域特性等に応じた介護基盤整備
・質の高いケアマネジメント~
3.介護現場の革新
~人材確保・生産性の向上~
1.介護予防・地域づくりの推進
~健康寿命の延伸~
/「共生」・「予防」を両輪とする
認知症施策の総合的推進
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