2021/03/27

指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準について

 

第1基準の性格

1 基準は、指定介護予防支援の事業及び基準該当介護予防支援の事業がその目的を達成するために必要な最低限度の基準を定めたものであり、指定介護予防支援事業者及び基準該当介護予防支援事業者は、基準を充足することで足りるとすることなく常にその事業の運営の向上に努めなければならないものである。

2 指定介護予防支援の事業を行う者又は行おうとする者が満たすべき基準等を満たさない場合には、指定介護予防支援事業者の指定又は更新は受けられず、また、基準に違反することが明らかになった場合には、[1]相当の期限を定めて基準を遵守する勧告を行い、[2]相当の期限内に勧告に従わなかったときは、事業者名、勧告に至った経緯、当該勧告に対する対応等を公表し、[3]正当な理由が無く、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、相当の期限を定めて当該勧告に係る措置をとるよう命令することができるものであること。ただし、[3]の命令をした場合には事業者名、命令に至った経緯等を公表しなければならない。なお、[3]の命令に従わない場合には、当該指定を取り消すこと。又は取り消しを行う前に相当の期間を定めて指定の全部若しくは一部の効力を停止すること(不適正なサービスが行われていることが判明した場合、当該サービスに関する介護報酬の請求を停止させる)ができる。ただし、次に掲げる場合には、基準に従った適正な運営ができなくなったものとして、指定の全部若しくは一部の停止又は直ちに取り消すことができるものであること。

[1]指定介護予防支援事業者及びその従業者が、介護予防サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の介護予防サービス事業者、地域密着型介護予防サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該介護予防サービス事業者、地域密着型介護予防サービス事業者等から金品その他の財産上の利益を収受したときその他の自己の利益を図るために基準に違反したとき

[2]利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあるとき

[3]その他[1]及び[2]に準ずる重大かつ明白な基準違反があったとき

 

3運営に関する基準及び介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準に従って事業の運営をすることができなくなったことを理由として指定が取り消され、法に定める期間の経過後に再度当該事業者から指定の申請がなされた場合には、当該事業者が運営に関する基準及び介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準を遵守することを確保することに特段の注意が必要であり、その改善状況等が十分に確認されない限り指定を行わないものとする。

4基準違反に対しては、厳正に対応すべきであること。

第2 指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準

 

1基本方針

介護保険制度においては、要支援者である利用者に対し、個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境等に応じて保健・医療・福祉にわたる指定介護予防サービス、指定地域密着型介護予防サービス等が、多様なサービス提供主体により総合的かつ効率的に提供されるよう、介護予防支援を保険給付の対象として位置づけたものであり、その重要性に鑑み、保険給付率についても特に10割としているところである。

基準第1条の2第1項は、介護保険制度の基本理念である「自立支援」、すなわち利用者が可能な限りその居宅において自立した日常生活を継続するということを実現するため、利用者が要支援者であることに鑑み、介護予防の効果が最大限発揮され、利用者が有している生活機能の維持・改善が図られるよう、目標指向型の計画を作成し、支援することができるかどうかという視点から検討を行い支援を行うべきことを定めたものである。

このほか、指定介護予防支援の事業の実施にあたっては、高齢者白身によるサービスの選択の尊重、保健・医療・福祉サービスの総合的、効率的な活用、利用者主体、公正中立、地域における様々な取組等との連携等を基本理念として掲げている。これらの基本理念を踏まえ、介護予防支援の事業については、市町村が設置する地城包括支援センターが指定介護予防支援事業者としての指定を受け、主体的に行う業務としており、指定介護予防支援事業者は、常にこの基本方針を踏まえた事業運営を図らなければならないこととしている。

 

指定介護予防支援等(基本方針/人員基準)

2 人員に関する基準

指定介護予防支援事業者は、指定介護予防支援事業所に保健師その他の介護予防支援に関する知識を有する職員(以下「担当職員」という。)を、事業が円滑に実施できるよう、必要数を配置しなければならない。この担当職員は、次のいずれかの要件を満たす者であって、都道府県が実施する研修を受講する等介護予防支援業務に関する必要な知識及び能力を有する者を充てる必要がある。

[1]保健師

[2]介護支援専門員

[3]社会福祉士

[4]経験ある看護師

[5]高齢者保健福祉に関する相談業務等に3年以上従事した社会福祉主事

なお、担当職員は、上記の要件を満たす者であれば、当該介護予防支援事業所である地域包括支援センターの職員等と兼務して差し支えないものであり、また、利用者の給付管理に係る業務等の事務的な業務に従事する者については、上記の要件を満たしていなくても差し支えないものである。

また、基準第2条及び第3条に係る運用に当たっては、次の点に留意する必要がある。

1)担当職員の員数

基準第2条において、1以上の員数の担当職員を置かなければならないこととされているが、介護予防支援事業者は、担当する区域の状況を踏まえ、必要な担当職員を配置するか、あるいは指定居宅介護支援事業者に業務の一部を委託することにより、適切に業務を行えるよう体制を整備する必要があることを示しているものである。

なお、基準においては、配置する職員について常勤又は専従等の要件を付していないが、指定介護予防支援事業所の営業時間中は、常に利用者からの相談等に対応できる体制を整えている必要があり、担当職員がその業務上の必要性から、又は他の業務を兼ねていることから、当該事業所に不在となる場合であっても、管理者、その他の従業者等を通じ、利用者が適切に担当職員に連絡が取れるなど利用者の支援に支障が生じないよう体制を整えておく必要がある。

また、担当職員が非常勤の場合や他の事業と兼務している場合にも、介護予防支援の業務については、介護予防支援事業者め指揮監督に基づいて適切に実施するよう留意しなければならない。

2)管理者

指定介護予防支援事業所に置くべき管理者は、専らその職務に従事する常勤の者でなければならないが、介護予防支援の業務又は当該指定介護予防支援事業所である地域包括支援センターの業務に従事する場合はこの限りでないこととされている。指定介護予防支援事業所の管理者は、指定介護予防支援事業所の営業時間中は、常に利用者からの利用申込等に対応できる体制を整えている必要があるものであり、管理者が指定介護予防支援事業所である地城包括支援センターの業務を兼務していて、その業務上の必要性から当該事業所に不在となる場合であっても、その他の従乗者等を通じ、利用者が適切に管理者に連絡が取れる体制としておく必要がある。

3)用語の定義

「常勤」及び「専らその職務に従事する」の定義はそれぞれ次のとおりである。

[1]「常勤」

当該事業所における勤務時間(当該事業所において、指定介護予防支援以外の事業を行っている場合には、当該事業に従事している時間を含む。)が、当該事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(週32時間を下回る場合は週32時間を基本とする。)に達していることをいうものである。ただし、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47 年法律第113 号)第13条第1項に規定する措置(以下「母性健康管理措置」という。)又は育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76 号。以下「育児・介護休業法」という。)第23 条第1項、同条第3項又は同法第24 条に規定する所定労働時間の短縮等の措置(以下「育児及び介護のための所定労働時間の短縮等の措置」という。)が講じられている者については、利用者の処遇に支障がない体制が事業所として整っている場合は、例外的に常勤の従業者が勤務すべき時間数を30時間として取り扱うことを可能とする。

また、同一の事業者によって当該事業所に併設される事業所の職務であって、当該事業所の職務と同時並行的に行われることが差し支えないと考えられるものについては、その勤務時間が常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすものであることとする。

また、人員基準において常勤要件が設けられている場合、従事者が労働基準法(昭和22 年法律第49 号)第65 条に規定する休業(以下「産前産後休業」という。)、母性健康管理措置、育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業(以下「育児休業」という。)、同条第2号に規定する介護休業(以下「介護休業」という。)、同法第23 条第2項の育児休業に関する制度に準ずる措置又は同法第24 条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定により同項第2号に規定する育児休業に関する制度に準じて講ずる措置による休業(以下「育児休業に準ずる休業」という。)を取得中の期間において、当該人員基準において求められる資質を有する複数の非常勤の従事者を常勤の従業者の員数に換算することにより、人員基準を満たすことが可能であることとする。

[2]「専らその職務に従事する」

原則として、サービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事しないことをいうものである。

[3]「事業所」

事業所とは、担当職員が介護予防支援を行う本拠であり、具体的には管理者がサービスの利用申込の調整等を行い、介護予防支援に必要な利用者ごとに作成する帳簿類を保管し、利用者との面接相談に必要な設備及び備品を備える場所であり、当該指定に係る地城包括支援センターの他の業務と兼ねることができる。

 

3運営に関する基準

1)介護保険等関連情報の活用とPDCAサイクルの推進について基準第1条の2第6項は、指定介護予防支援を行うに当たっては、介護保険法第118 条の2第1項に規定する介護保険等関連情報等を活用し、事業所単位でPDCAサイクルを構築・推進することにより、提供するサービスの質の向上に努めなければならないこととしたものである。

2)内容及び手続きの脱明及び同意

基準第4条は、基本理念としての高齢者の主体的なサービス利用を具体化したものである。指定介護予防支援事業者は、利用申込があった場合には、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、当該指定介護予防支援事業所の運営規程の概要、担当職員の勤務の体制、秘密の保持、事故発生時の対応、苦情処理の体制等の利用申込者がサービスを利用するために必要な重要事項を説明書やパンフレッ卜等の文書を交付して説明を行い、当該指定介護予防支援事業所から介護予防支援を受けることにつき同意を得なければならないこととしたものである。なお、当該同意については、利用者及び指定介護予防支援事業者双方の保護の立場から書而によって確認することが望ましいものである。

また、指定介護予防支援は、利用者の状態の特性を踏まえた目標を設定し、常に利用者の目標に沿って行われるものであり、介護予防サービス計画は基準第1条の2の基本方針及び利用者の選択を尊重し、自立を支援するために作成されるものである。このため、指定介護予防支援について利用者の主体的な取組が重要であり、介護予防サービス計画の作成にあたって利用者から担当職員に対して複数の指定介護予防サービス事業者等の紹介を求めることや、介護予防サービス計画原案に位置付けた指定介護予防サービス事業者等の選定理由の説明を求めることが可能であること等につき十分説明を行わなければならない。なお、この内容を利用申込者又はその家族に説明を行うに当たっては、理解が得られるよう、文書の交付に加えて口頭での説明を懇切丁寧に行うとともに、それを理解したことについて必ず利用申込者から署名を得なければならない。また、利用者が病院又は診療所に入院する場合には、利用者の居宅における日常生活上の能力や利用していた指定介護予防サービス等の情報を入院先医療機関と共有することで、医療機関における利用者の退院支援に資するとともに、退院後の円滑な在宅生活への移行を支援することにもつながる。基準第4条第3項は、指定介護予防支援事業者と入院先医療機関との早期からの連携を促進する観点から、利用者が病院又は診療所に入院する必要が生じた場合には担当職員の氏名及び連絡先を当該病院又は診療所に伝えるよう、利用者又はその家族に対し事前に協力を求める必要があることを規定するものである。なお、より実効性を高めるため、日頃から担当職員の連絡先等を介護保険被保険者証や健康保険被保険者証、お薬手帳等と合わせて保管することを依頼しておくことが望ましい。

3)提供拒否の禁止

基準第5条は、介護予防支援の公共性にかんがみ、原則として、指定介護予防支援の利用申込に対しては、これに応じなければならないことを規定したものであり、正当な理由なくサービスの提供を拒否することを禁止するものである。

なお、ここでいう正当な理由とは、[1]利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地城外である場合、[2]利用申込者が他の指定介護予防支援事業者にも併せて指定介護予防支援の依頼を行っていることが明らかな場合等である。

4)要支援認定の申請に係る援助

[1]基準第8条第1項は、法第32条第1項に基づき、被保険者が介護予防支援事業者に要支援認定の申請に関する手続きを代わって行わせることができること等を踏まえ、被保険者から要支援認定の申請の代行を依頼された場合等においては、介護予防支援事業者は必要な協力を行わなければならないものとしたものである。

[2]同条第2項は、要支援認定の申詰がなされていれば、要支援認定の効力が申請時に遡ることにより、指定介護予防支援の利用に係る費用が保険給忖の対象となり得ることを踏まえ、指定介護予防支援事業者は、利用申込者が要支援認定を受けていないことを確認した場合には、要支援認定の申誚が既に行われているかどうかを確認し、申請が行われていない場合は、当該利用申込者の意思を踏まえて速やかに当該申請が行われるよう必要な援助を行わなければならないこととしたものである。

[3]同条第3項は、要支援認定の有効期間が付されているものであることを踏まえ、指定介護予防支援事業者は、要支援認定の有効期間を確認した上、要支援認定の更新の申請が、遅くとも当該利用者が受けている要支援認定等の有効期間が終了する1月前にはなされるよう、必要な援助を行わなければならないこととしたものである。

5)身分を証する書類の携行

基準第9条は、利用者が安心して指定介護予防支援の提供を受けられるよう、指定介護予防支援事業者が、当該指定介護予防支援事業所の担当職員に身分を証する証書や名刺等を携行させ、初回訪問時及び利用者又はその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導するべきこととしたものである。当該証書等には、当該指定介護予防支援事業所の名称、当該担当職員の氏名を記載した上、写真を貼付したものとすることが望ましい。

6)利用料等の受領

基準第10条は、利用者間の公平及び利用者の保護の観点から、保険給付がいわゆる償還払いとなる場合と、保険給付が利用者に代わり指定介護予防支援事業者に支払われる場合(以下「代理受領がなされる場合」という。)の間で、一方の経費が他方へ転嫁等されることがないよう、償還払いの場合の指定介護予防支援の利用料の額と、介護予防サービス計画費の額(要するに、代理受領がなされる場合の指定介護予防支援に係る費用の額)との間に、不合理な差額を設けてはならないこととするとともに、これによって、償還払いの場合であっても原則として利用者負担が生じないこととする趣旨である。

7)保険給付の請求のための証明書の交付

基準第11条は、介護予防支援に係る保険給付がいわゆる償還払いとなる場合に、利用者が保険給付の請求を容易に行えるよう、指定介護予防支援事業者は、利用料の額その他利用者が保険給付を請求する上で必要と認められる事項を記載した指定介護予防支援提供証明書を利用者に対して交付するべきこととしたものである。

8)介護予防支援業務の委託について

法第115条の23第3項により、指定介護予防支援事業者は、指定居宅介護支援事業者に介護予防支援業務の一部を委託できることとされており、基準第12条は、当該委託を行う場合について規定したものであり、次の点に留意する必要がある。

[]指定介護予防支援事業者は、公正で中立性の高い事業運営を行う必要があり、業務の一部を委託する際には公正中立性を確保するため、その指定を受けた地域包括支援センターの地域包括支援センター運営協議会の議を経る必要がある。

[]指定介護予防支援事業者が業務の一部を委託をする場合には、基準第30条第七号に規定するアセスメント業務や介護予防サービス計画の作成業務等が一体的に行えるよう配慮しなければならない。また、受託する指定居宅介護支援事業者が本来行うべき指定居宅介護支援の業務の適正な実施に影響を及ぼすことのないよう、委託する業務の範囲及び業務量について十分に配慮しなければならない。

[3]指定介護予防支援事業者が業務の一部を委託をする居宅介護支援事業者は、都道府県が実施する研修を受講する等介護予防支援業務に関する必要な知識及び能力を有する介護支援専門員が従亊する事業者である必要がある。

なお、委託を行ったとしても、指定介護予防支援に係る責任主体は指定介護予防支援事業者である。指定介護予防支援事業者は、委託を受けた指定居宅介護支援事業所が介護予防サービス計画原案を作成した際には、当該介護予防サービス計画原案が適切に作成されているか、内容が妥当か等について確認を行うこと。委託を受けた指定居宅介護支援事業者が評価を行った際には、当該評価の内容について確訖を行い、今後の方針等について必要な援助・指導を行うことが必要である。

また、指定介護予防支援事業者は、委託を行った指定居宅介護支援事業所との関係等について利用者に誤解のないよう説明しなければならない。

9)法定代理受領サービスに係る報告

[1]基準第13条第1項は、介護予防サービス費を利用者に代わり当該指定介護予防サービス事業者に支払うための手続きとして、指定介護予防支援事業者に、市町村(国民健康保険団体連合会に委託している場合にあっては当該国民健康保険連合会)に対して、介護予防サービス計画において位置付けられている指定介護予防サービス等のうち法定代理受領サービスとして位置付けたものに関する情報を記載した文書(給付管理票)を毎月提出することを義務づけたものである。

[2]同条第2項は、指定介護予防支援事業者が介護予防サービス計画に位置付けられている基準該当介護予防サービスに係る情報を指定介護予防サービスに係る情報と合わせて市町村(国民健康保険団体連合会に委託している場合にあっては当該国民健康保険団体連合会)に対して提供することにより、基準該当介護予防サービスに係る特例介護予防サービス費の支払事務が、介護予防サービス計画に位置付けられている指定介護予防サービスに係る介護予防サービス費の支払を待つことなく、これと同時並行的に行うことができるようにするための規定である。

10)利用者に対する介護予防サービス計画等の書類の交付

基準第14条は、利用者が要介護認定を受け、指定居宅介護支援事業者に変更した場合等に、変更後の指定居宅支援事業者等が滞りなく給付管理票の作成・届出等の事務を行うことができるよう、指定介護予防支援事業者は、要支援認定を受けている利用者が要介護認定を受けた場合、その他利用者からの申し出があった場合には、当該利用者に対し、直近の介護予防サービス計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならないこととしたものである。

11)利用者に関する市町村への通知

基準第15条は、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者及び自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失等により、要支援状態若しくはその原因となった事故を生じさせるなどした者については、市町村が、介護保険法第22条第1項に基づく既に支払った保険給付の徴収又は第64条に基づく保険給付の制限を行うことができることに鑑み、指定介護予防支援事業者が、その利用者に関し、保険給付の適正化の観点から市町村に通知しなければならない事由を列記したものである。

12)運営規程

基準第17条は、指定介護予防支援の事業の適正な運営及び利用者等に対する適切な指定介護予防支援の提供を確保するため、同条第一号から第七号までに掲げる事項を内容とする規定を定めることを指定介護予防支援事業所ごとに義務づけたものである。特に次の点に留意する必要がある。

[1]職員の職種、員数及び職務内容(第二号)

職員については、担当職員とその他の従業者に区分し、員数及び職務内容を記載することとする。職員の「員数」は日々変わりうるものであるため、業務負担軽減等の観点から、規程を定めるに当たっては、基準第2条において置くべきとされている員数を満たす範囲において、「○人以上」と記載することも差し支えない(基準第4条に規定する重要事項を記した文書に記載する場合についても、同様とする。)。

[2]指定介護予防支援の提供方法、内容及び利用料その他の費用の額(第四号)

指定介護予防支援の提供方法及び内容については、利用者の相談を受ける場所、課題分析の手順等を記載するものとする。

[3]通常の事業の実施地域(第五号)

通常の事業の実施地域は、客観的にその区域が特定されるものとする。

[4]「虐待の防止のための措置」については、(23)の虐待の防止に係る、組織内の体制(責任者の選定、従業者への研修方法や研修計画等)や虐待又は虐待が疑われる事案(以下「虐待等」という。)が発生した場合の対応方法等を指す内容であること。

13)勤務体制の確保

基準第18条は、利用者に対する適切な指定介護予防支援の提供を確保するため、職員の勤務体制等を規定したものであるが、次の点に留意する必要がある。

[1]指定介護予防支援事業所ごとに、原則として月ごとの勤務表を作成し、担当職員については、日々の勤務時間、常勤・非常勤の別。管理者との兼務関係等を明確にする。また。非常勤の担当職具については、他の業務と兼務する場合には、当該他の業務に支障がないよう配慮しなければならない。

なお、当該勤務の状況等は、基準第16条により指定介護予防支援事業所の管理者が管理する必要があり、非常勤の担当職員を含めて当該指定介護予防支援事業所の業務として一体的に管理されていることが必要である。従って、非常勤の担当職員が兼務する業務の事業所を介護予防支援の拠点とし独立して利用者ごとの介護予防支援台帳の保管を行うようなことは認められないものである。

[2]同条第3項は、より適切な指定介護予防支援を行うために、担当職員の研修の重要性について規定したものであり、指定介護予防支援事業者は、担当職員の資質の向上を図る研修の機会を確保しなければならない。

[3] 同条第4項は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47 年法律第113 号)第11 条第1項及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41 年法律第132 号)第30 条の2第1項の規定に基づき、事業主には、職場におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント(以下「職場におけるハラスメント」という。)の防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられていることを踏まえ、規定したものである。事業主が講ずべき措置の具体的内容及び事業主が講じることが望ましい取組については、次のとおりとする。なお、セクシュアルハラスメントについては、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれることに留意すること。

イ 事業主が講ずべき措置の具体的内容

事業主が講ずべき措置の具体的な内容は、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18 年厚生労働省告示第615 号)及び事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワーハラスメント指針」という。)において規定されているとおりであるが、特に留意されたい内容は以下のとおりである。

a 事業者の方針等の明確化及びその周知・啓発

職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業者に周知・啓発すること。

b 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談に対応する担当者をあらかじめ定めること等により、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。なお、パワーハラスメント防止のための事業主の方針の明確化等の措置義務については、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24 号)附則第3条の規定により読み替えられた労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30 条の2第1項の規定により、中小企業(資本金が3億円以下又は常時使用する従業員の数が300 人以下の企業)は、令和4年4月1日から義務化となり、それまでの間は努力義務とされているが、適切な勤務体制の確保等の観点から、必要な措置を講じるよう努められたい。

ロ 事業主が講じることが望ましい取組について

パワーハラスメント指針においては、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の防止のために、事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組の例として、[]相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、[]被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対して1人で対応させない等)及び[]被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)が規定されている。介護現場では特に、利用者又はその家族等からのカスタマーハラスメントの防止が求められていることから、イ(事業主が講ずべき措置の具体的内容)の必要な措置を講じるにあたっては、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」、「(管理職・職員向け)研修のための手引き」等を参考にした取組を行うことが望ましい。この際、上記マニュアルや手引きについては、以下の厚生労働省ホームページに掲載しているので参考にされたい。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html

加えて、都道府県において、地域医療介護総合確保基金を活用した介護職員に対する悩み相談窓口設置事業や介護事業所におけるハラスメント対策推進事業を実施している場合、事業者が行う各種研修の費用等について助成等を行っていることから、事業主はこれらの活用も含め、介護事業所におけるハラスメント対策を推進することが望ましい。

 

14)業務継続計画の策定等

[]基準第18 条の2は、指定介護予防支援事業者は、感染症や災害が発生した場合にあっても、利用者が継続して指定介護予防支援の提供を受けられるよう、指定介護予防支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定するとともに、当該業務継続計画に従い、担当職員その他の従業者に対して、必要な研修及び訓練(シミュレーション)を実施しなければならないこととしたものである。利用者がサービス利用を継続する上で、指定介護予防支援事業者が重要な役割を果たすことを踏まえ、関係機関との連携等に努めることが重要である。なお、業務継続計画の策定、研修及び訓練の実施については、基準第18 条の2に基づき事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。また、感染症や災害が発生した場合には、従業者が連携し取り組むことが求められることから、研修及び訓練の実施にあたっては、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましい。

なお、業務継続計画の策定等に係る義務付けの適用に当たっては、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第9号。以下「令和3年改正省令」という。)附則第3条において、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31 日までの間は、努力義務とされている。

[業務継続計画には、以下の項目等を記載すること。なお、各項目の記載内容については、「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照されたい。また、想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること。なお、感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない。

イ 感染症に係る業務継続計画

a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)

b 初動対応

c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)

ロ 災害に係る業務継続計画

a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)

b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)

c 他施設及び地域との連携

[研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。

職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。

[訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。

15)設備及び備品等

基準第19条に掲げる設備及び備品等については、次の点に留意するものである。

[1]指定介護予防支援事業所には、事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の事務室を設けることが望ましいが、指定介護予防支援の業務に支障がない場合には、地域包括支援センターが行う他の事業の用に供する事務室又は区画と同一のものであっても差し支えない。

[]指定介護予防支援事業者は、相談、サービス担当者会議等に対応するのに適切なスペースを確保することとし、相談のためのスペース等はフライバシーが守られ、利用者が直接出入りできるなど利用者が利用しやすいよう配慮する必要がある。

[3]指定介護予防支援に必要な設備及び備品等を確保すること。ただし、他の事業所及び施設等と同一敷地内にある場合であって、指定介護予防支援の事業及び当該他の事業所及び施設等の運営に支障がない場合は、当該他の事業所及び施設等に備え付けられた設備及び備品等を使用することができるものとする。

16)感染症の予防及びまん延の防止のための措置

基準第21 条の2に規定する感染症が発生し、又はまん延しないように講ずるべき措置については、具体的には次のイからハまでの取扱いとすること。各事項について、同項に基づき事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。なお、感染症の予防及びまん延の防止のための措置に係る義務付けの適用に当たっては、令和3年改正省令附則第4条において、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31 日までの間は、努力義務とされている。

イ 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会当該事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(以下「感染対策委員会」という。)であり、感染対策の知識を有する者を含む、幅広い職種により構成することが望ましく、特に、感染症対策の知識を有する者については外部の者も含め積極的に参画を得ることが望ましい。構成メンバーの責任及び役割分担を明確にするとともに、専任の感染対策を担当する者(以下「感染対策担当者」という。)を決めておくことが必要である。感染対策委員会は、利用者の状況など事業所の状況に応じ、おおむね6月に1回以上、定期的に開催するとともに、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じ随時開催する必要がある。

感染対策委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。

なお、感染対策委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。また、事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。

感染対策委員会は、介護予防支援事業所の従業者が1名である場合は、ロの指針を整備することで、委員会を開催しないことも差し支えない。この場合にあっては、指針の整備について、外部の感染管理等の専門家等と積極的に連携することが望ましい。

ロ 感染症の予防及びまん延の防止のための指針

当該事業所における「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」には、平常時の対策及び発生時の対応を規定する。平常時の対策としては、事業所内の衛生管理(環境の整備等)、ケアにかかる感染対策(手洗い、標準的な予防策)等、発生時の対応としては、発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関や保健所、市町村における事業所関係課等の関係機関との連携、行政等への報告等が想定される。また、発生時における事業所内の連絡体制や上記の関係機関への連絡体制を整備し、明記しておくことも必要である。なお、それぞれの項目の記載内容の例については、「介護現場における感染対策の手引き」を参照されたい。

ハ 感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練

担当職員等に対する「感染症の予防及びまん延の防止のための研修」の内容は、感染対策の基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するとともに、当該事業所における指針に基づいた衛生管理の徹底や衛生的なケアの励行を行うものとする。

職員教育を組織的に浸透させていくためには、当該事業所が定期的な教育(年1回以上)を開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録することが必要である。

なお、研修の実施は、厚生労働省「介護施設・事業所の職員向け感染症対策力向上のための研修教材」等を活用するなど、事業所内で行うものでも差し支えなく、当該事業所の実態に応じ行うこと。また、平時から、実際に感染症が発生した場合を想定し、発生時の対応について、訓練(シミュレーション)を定期的(年1回以上)に行うことが必要である。訓練においては、感染症発生時において迅速に行動できるよう、発生時の対応を定めた指針及び研修内容に基づき、事業所内の役割分担の確認や、感染対策をした上でのケアの演習等を実施するものとする。

訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。

17)掲示

[1] 基準第21 条第1項は、基準第4条の規定により介護予防支援の提供開始時に運営規程の概要、担当職員の勤務の体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制、提供するサービスの第三者評価の実施状況(実施の有無、実施した直近の年月日、実施した評価機関の名称、評価結果の開示状況)等の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を利用申込者及びその家族に対して説明を行った上で同意を得るととしていることに加え、指定介護予防支援事業所への当該重要事項の掲示を義務づけることにより、サービス提供が開始された後、継続的にサービスが行われている段階においても利用者の保護を図る趣旨であるが、次に掲げる点に留意する必要がある。

イ 事業所の見やすい場所とは、重要事項を伝えるべき介護サービスの利用申込者、利用者又はその家族に対して見やすい場所のことであること。

ロ 担当職員の勤務の体制については、職種ごと、常勤・非常勤ごと等の人数を掲示する趣旨であり、担当職員の氏名まで掲示することを求めるものではないこと。

[]同条第2項は、重要事項を記載したファイル等を介護サービスの利用申込者、利用者又はその家族等が自由に閲覧可能な形で当該指定介護予防支援事業所内に備え付けることで同条第1項の掲示に代えることができることを規定したものである。

18)秘密保持

[1]基準第22条第1項は、指定介護予防支援事業所の担当職員その他の従業者に、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密の保持を義務づけたものである。

[2]同条第2項は、指定介護予防支援事業者に対して、過去に当該指定介護予防支援事業所の担当職員その他の従業者であった者が、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう必要な措置を取ることを義務づけたものであり、具体的には、指定介護予防支援事業者は、当該指定介護予防支援事業所の担当職員その他の従業者が、従業者でなくなった後においてもこれらの秘密を保持すべき旨を、従業者の雇用時に取り決め、例えば違約金についての定めを置くなどの措置を講ずべきこととするものである。

[]同条第3項は、サービス担当者会議等において、担当職員及び介護予防サービス計画に位置付けた各介護予防サービスの担当者が課題分析情報等を通じて利用者の有する問題点や支援すべき総合的な課題等の個人情報を共有するためには、あらかじめ、文書により利用者及びその家族から同意を得る必要があることを規定したものである。

なお、介護予防支援においては特に、サービス担当者会議に介護予防サービス事業者、主治医のほか地域において利用者を支援する取組を行う住民等の様々な関係者が参加する機会が多くなることが想定されるが、サービス担当者会議において用いられた個人情報が正当な理由なく目的外に使用されないよう、例えば法令上の守秘義務がない者に対しては、個人情報を適切に取り扱う旨に同一意する文書を提出させるなど、指定介護予防支援事業者は、利用者等に係る個人情報の保護に留意する必要がある。

19)介護予防サービス事業者等からの利益収受の禁止等

指定介護予防支援事業者は公正で中立性の高い事業運営を行う必要があり、基準第24条は、これを具体的に担保するものであり、各項の趣旨は以下のとおりである。なお、指定介護予防支援事業者である地域包括支援センターにおいては、地域包括支援センター運営協議会が設けられ、介護予防支援の事業を含め地域包括支援センターが行う事業の公正かつ中立な運営を確保するために関わることから、地域包括支援センター運営協議会においては、基準第24条の規定が遵守されているかなどについても、適宜把握する必要がある。

[1]基準第24条第1項は、介護予防サービス計画の作成又は変更に関し、指定介護予防支援事業者及び指定介護予防支援事業所の管理者が当該介護予防支援事業所の担当職員に利益誘導のために特定の介護予防サービス事業者等によるサービスを位置付ける旨の指示等を行うことを禁じた規定である。これは、介護予防サービス計画があくまで利用者の支援すべき総合的な課題に即したものでなければならないという介護予防支援の公正中立の原則の遵守をうたったものであり、例えば、指定介護予防支扱事業者又は指定介護予防支援事業所の管理者が、同一法人系列の介護予防サービス事業者のみを位置付けるように指示すること等により、支援すべき総合的な課題に反するばかりでなく、事実上他の介護予防サービス事業者の利用を妨げることを指すものである。また、担当職員は、介護予防支援費の加算を得るために、支援すべき総合的な課題に即さない介護予防サービスを介護予防サービス計画に位置付けることがあってはならない。ましてや指定介護予防支援事業者及び指定介護予防支援事業所の管理者は、当該介護予防支援事業所の担当職員に同旨の指示をしてはならない。

[2]同条第2項は、指定介護予防支援事業所の担当職員が利用者に利益誘導のために特定の介護予防サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等を行うことを禁じた規定である。これも前項に規定した指定介護予防支援の公正中立の原則の遵守をうたったものであり、例えば、指定介護予防支援事業所の担当職員が、同一法人系列の介護予防サービス事業者のみを利用するように指示すること等により、支援すべき総合的な課題に反するばかりでなく、事実上他の介護予防サービス事業者の利用を妨げることを指すものである。また、担当職員は、介護予防支援費の加算を得るために、支援すべき総合的な課題に即さない介護予防サービスを介護予防サービス計画に位置付けることがあってはならない。

[3]同条第3項は、介護予防支援の公正中立性を確保するために、指定介護予防支援事業者及びその従業者が、利用者に対して特定の介護予防サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該介護予防サービス事業者等から、金品その他の財産上の利益を収受してはならないこととしたものである。

(20)苦情処理

[1]基準第25条第1項は、利用者の保護及び適切かつ円滑な指定介護予防支援、指定介護予防サービス等の利用に資するため、自ら提供した指定介護予防支援又は自らが介護予防サービス計画に位置付けた指定介護予防サービス等に対する利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応しなければならないこととしたものである。具体的には、指定介護予防支援等についての苦情の場合には、当該事業者は、利用者又はその家族、指定介護予防サービス事業者等から事情を聞き、苦情に係る問題点を把握の上、対応策を検討し必要に応じて利用者に説明しなければならないものである。

なお、介護保険法第23条の規定に基づき、市町村から介護予防サービス計画の提出を求められた場合には、基準第25条第3項の規定に基づいて、その求めに応じなければならないものである。

[2]同条第2項は、苦情に対し指定介護予防支援事業者が組織として迅速かつ適切に対応するため、当該苦情(指定介護予防支援事業者が提供したサービスとは関係のないものを除く。)の内容等を記録することを義務づけたものである。

また。指定介護予防支援事業者は、苦情がサービスの質の向上を図る上での重要な情報であるとの認識に立ち、苦情の内容を踏まえ、サービスの質の向上に向けた取組を自ら行うべきである。なお、基準第28条第2項の規定に基づき、苦情の内容等の記録は、2年間保存しなければならない。

[]同条第3項は、介護保険法上、苦情処理に関する業務を行うことが位置付けられている国民健康保険団体連合会のみならず、住民に最も身近な行政庁である市町村が、一次的には介護予防サービス等に関する苦情に対応することが多くなることと考えられることから、市町村についても国民健康保険団体連合会と同様に、指定介護予防支援事業者に対する苦情に関する調査や指導、助言を行えることを運営基準上、明確にしたものである。なお、指定介護予防支援事業者は、当該事業所における苦情を処理するために講ずる措置の概要について明らかにし、相談窓口の連絡先、苦情処理の体制及び手順等を利用申込者にサービスの内容を説明する文書に記載するとともに、事業所に掲示するべきものである。

(21)事故発生時の対応

基準第26条は、利用者が安心して指定介護予防支援の提供を受けられるよう事故発生時の速やかな対応を規定したものである。指定介護予防支援事業者は、利用者に対する指定介護予防支援の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族等に連絡し、必要な措置を講じるべきこととするとともに、当該事故の状況及び事故に際して採った処置について記録し、また、利用者に対する指定介護予防支援の提供により賠償すべき事故が発生した場合には、損害賠償を速やかに行うべきこととしたものである。

なお。基準第28条第2項の規定に基づき、事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録は、2年間保存しなければならない。

このほか。以下の点に留意されたい。

[1]指定介護予防支援事業者は、利用者に対する指定介護予防支援の提供により事故が発生した場合の対応方法について、あらかじめ定めておくことが望ましいこと。

[2]指定介護予防支援事業者は、賠償すべき事態となった場合には、速やかに賠償しなければならない。そのため、事業者は損害賠償保険に加入しておくか若しくは賠償資力を有することが望ましいこと。

[3]指定介護予防支援事業者は、事故が生じた際にはその原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じること。

(22)会計の区分

基準第27条は、指定介護予防支援事業者に係る会計の区分について定めたものである。なお。具体的な会計処理の方法等については、別に通知するところによるものである。

23)虐待の防止

基準省令第26条の2は虐待の防止に関する事項について規定したものである。虐待は、介護保険法の目的の一つである高齢者の尊厳の保持や、高齢者の人格の尊重に深刻な影響を及ぼす可能性が極めて高く、指定居宅介護支援事業者は虐待の防止のために必要な措置を講じなければならない。虐待を未然に防止するための対策及び発生した場合の対応等については、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17 年法律第124 号。以下「高齢者虐待防止法」という。)に規定されているところであり、その実効性を高め、利用者の尊厳の保持・人格の尊重が達成されるよう、次に掲げる観点から指定居宅介護支援事業所における虐待の防止に関する措置を講じるものとする。

・虐待の未然防止

指定介護予防支援事業者は高齢者の尊厳保持・人格尊重に対する配慮を常に心がけながらサービス提供にあたる必要があり、第1条の2の基本方針に位置付けられているとおり、研修等を通じて、従業者にそれらに関する理解を促す必要がある。同様に、従業者が高齢者虐待防止法等に規定する養介護事業の従業者としての責務・適切な対応等を正しく理解していることも重要である。

・虐待等の早期発見

指定介護予防支援事業所の従業者は、虐待等又はセルフ・ネグレクト等の虐待に準ずる事案を発見しやすい立場にあることから、これらを早期に発見できるよう、必要な措置(虐待等に対する相談体制、市町村の通報窓口の周知等)がとられていることが望ましい。また、利用者及びその家族からの虐待等に係る相談、利用者から市町村への虐待の届出について、適切な対応をすること。

・虐待等への迅速かつ適切な対応

虐待が発生した場合には、速やかに市町村の窓口に通報される必要があり、指定介護予防支援事業者は当該通報の手続が迅速かつ適切に行われ、市町村等が行う虐待等に対する調査等に協力するよう努めることとする。

以上の観点を踏まえ、虐待等の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するために次に掲げる事項を実施するものとする。

なお、当該義務付けの適用に当たっては、令和3年改正省令附則第2条において、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31 日までの間は、努力義務とされている。

[]虐待の防止のための対策を検討する委員会(第1号)

「虐待の防止のための対策を検討する委員会」(以下「虐待防止検討委員会」という。)は、虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討する委員会であり、管理者を含む幅広い職種で構成する。構成メンバーの責務及び役割分担を明確にするとともに、定期的に開催することが必要である。また、事業所外の虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましい。

一方、虐待等の事案については、虐待等に係る諸般の事情が、複雑かつ機微なものであることが想定されるため、その性質上、一概に従業者に共有されるべき情報であるとは限られず、個別の状況に応じて慎重に対応することが重要である。

なお、虐待防止検討委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。また、事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携により行うことも差し支えない。

また、虐待防止検討委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。

虐待防止検討委員会は、具体的には、次のような事項について検討することとする。その際、そこで得た結果(事業所における虐待に対する体制、虐待等の再発防止策等)は、従業者に周知徹底を図る必要がある。

イ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること

ロ 虐待の防止のための指針の整備に関すること

ハ 虐待の防止のための職員研修の内容に関すること

ニ 虐待等について、従業者が相談・報告できる体制整備に関すること

ホ 従業者が虐待等を把握した場合に、市町村への通報が迅速かつ適切に行われるための方法に関すること

ヘ 虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策に関すること

ト 前号の再発の防止策を講じた際に、その効果についての評価に関すること

[]虐待の防止のための指針(第2号)

指定介護予防支援事業者が整備する「虐待の防止のための指針」には、次のような項目を盛り込むこととする。

イ 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方

ロ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項

ハ 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針

ニ 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針

ホ 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項

へ 成年後見制度の利用支援に関する事項

ト 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項

チ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項

リ その他虐待の防止の推進のために必要な事項

[] 虐待の防止のための従業者に対する研修(第3号)

従業者に対する虐待の防止のための研修の内容としては、虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するものであるとともに、当該指定居宅介護支援事業所における指針に基づき、虐待の防止の徹底を行うものとする。

職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定介護予防支援事業者が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である。

また、研修の実施内容についても記録することが必要である。研修の実施は、事業所内での研修で差し支えない。

[] 虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者(第4号)

指定介護予防支援事業所における虐待を防止するための体制として、[] から[] までに掲げる措置を適切に実施するため、専任の担当者を置くことが必要である。当該担当者としては、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましい。

(24) 記録の整備

基準第28 条第2項は、指定介護予防支援事業者が同項各号に規定する記録を整備し、2年間保存しなければならないこととしたものである。

なお、「その完結の日」とは、個々の利用者につき、契約終了(契約の解約・解除、他の施設への入所、利用者の死亡、利用者の自立等)により一連のサービス提供が終了した日を指すものとする。

4介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準

1)基準第30条は、利用者の課題分析、サービス担当者会議の開催、介護予防サービス計画の作成、介護予防サービス計画の実施状況の把握などの介護予防支援を構成する一連の業務のあり方及び当該業務を行う担当職員の責務を明らかにしたものである。

なお、利用者の課題分析(第六号)から介護予防サービス計画の利用者への交付(第十一号)に掲げる一連の業務については、基準第1条の2に掲げる基本方針を達成するために必要となる業務を列記したものであり、基本的にはこのプロセスに応じて進めるべきものであるが、緊急的なサービス利用等やむを得ない場合や、効果的・効率的に行うことを前提とするものであれば、業務の順序について拘束するものではない。ただし、その場合にあっても、それぞれ位置付けられた個々の業務は、事後的に可及的速やかに実施し、その結果に基づいて必要に応じて介護予防サービス計|明を見直すなど、適切な対応しなければならない。

[1]担当職員による介護予防サービス計画の作成(基準第30条第一号)

指定介護予防支援事業所の管理者は、介護予防サービス計画の作成に関する業務の主要な過程を保健師等の担当職員に担当させることとしたものである。

[2]指定介護予防支援の基本的留意点(第二号)

指定介護予防支援は、利用者及びその家族の主体的な参加及び自らの目標に向けての意欲の向上と相まって行われることが重要である。このためには、指定介護予防支援について利用者及びその家族の十分な理解が求められるものであり、担当職員は、指定介護予防支援を懇切丁寧に行うことを旨とし、サービスの提供方法等について理解しやすいようにわかりやすく説明を行うことが肝要である。

[3]計画的な指定介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス等の利用(第三号)

利用者の自立した日常生活の支援を効果的に行うためには、利用者の心身又は家族の状態等に応じて、継続的かつ計画的に介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス等が提供されることが重要である。担当職員は、介護予防サービス計画の作成又は変更に当たり、計画的に指定介護予防サービス、地城密着型介護予防サービス、地域の住民による自発的な活動等の提供が行われるようにすることが必要である。

[]総合的な介護予防サービス計画の作成(第四号)

介護予防サービス計画は、利用者の日常生活全般を支援する観点に立って作成されることが重要である、このため、介護予防サービス計画の作成又は変更に当たっては、利用者やその家族の意向を踏まえた課題分析の結果に基づき、予防給付等対象サービス以外の、例えば利用者本人の取組、家族が行う支援、市町村保健師等が居宅を訪問して行う指導等の保健サービス、老人介護支援センターにおける相談援助及び市町村が一般施策として行う配食サービス、寝具乾燥サービスや当該地域の住民による見守り、配食、会食などの自発的な活動によるサービス等、更には、こうしたサービスと併せて提供される精神科訪問看護等の医療サービス、はり師・きゅう師による施術、保健師・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練なども含めて介護予防サービス計画に位置付けることにより総合的かつ目標指向的な計画となるよう努めなければならない。

この場合には、介護保険制度の基本理念等について、利用者が十分理解できるよう、担当職員は丁寧に説明をし、適切なサービスを利用者が選択できるよう専門的な観点から利用者の個別性を踏まえ、助言しなければならない。

なお、指定介護予防支援事業者である地域包括支援センターにおいては、当該日常生活全般を支援する上で、利用者やその家族の意向を踏まえた課題分析の結果に基づき、予防給付等対象サービスであるか否かに関わらず、地域で不足していると思われるサービス等が提供されるよう関係機関等に働きかけていくことが必要である。

[5]利用者自身によるサービスの選択(第5号)

担当職員は、利用者自身が主体的に意欲をもって介護予防に取り組むことを基本に、これを支援するものである。このため、担当職員は、利用者による適切なサービスの利用に資するよう、利用者から介護予防サービス計画案の作成にあたって複数の指定介護予防サービス事業者等の紹介の求めがあった場合等には誠実に対応するとともに、介護予防サービス計画案を利用者に提示する際には、当該利用者が居住する地域の指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者又はその家族に対して提供するものとする。したがって、特定の指定介護予防サービス事業者又は指定地域密着型介護予防サービスに不当に偏した情報を提供するようなことや、利用者の選択を求めることなく同一の事業主体のサービスのみによる介護予防サービス計画原案を最初から提示するようなことがあってはならない。また、例えば集合住宅等において、特定の指定介護予防サービス事業者のサービスを利用することを、選択の機会を与えることなく入居条件とするようなことはあってはならないが、介護予防サービス計画についても、利用者の意思に反して、集合住宅と同一敷地内等の指定介護予防サービス事業者のみを介護予防サービス計画に位置付けるようなことはあってはならない。なお、地域の指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス等の情報を提供するに当たっては、都道府県又は指定情報公表センターが公表を行っている情報等についても活用されたい。

[6]課題分析の実施(第六号)

介護予防サービス計画は、個々の利用者の特性に応じて作成されることが重要である。このため担当職員は、介護予防サービス計画の作成に先立ち利用者の課題分析を行うこととなる。

課題分析では、利用者の有する生活機能や健康状態、置かれている環境等を把握した上で、利用者が日常生活をおくる上での運動・移動の状況、日常生活(家庭生活)の状況、社会参加、対人関係・コミュニケーションの状況、健康管理の状況をそれぞれ把握し、利用者及びその家族の意欲・意向を踏まえて、各領域ごとに利用者が現に抱えている問題点を明らかにするとともに、介護予防の効果を最大限に発揮し、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援すべき総合的な課題を把握する必要がある。

[]課題分析における留意点(第七号)

担当職員は、課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、利用者が入院中であることなど物理的な理由がある場合を除き必ず利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、事前に要支援認定の認定調査結果、主治医意見書等により、一定程度利用者の状態を把握しておく必要がある。また、面接に当たっては、利用者やその家族との間の信頼関係、協働関係の構築が重要であり、担当職員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。なお、このため、担当職員は面接技法等の研鑚に努めることが重要である。

また、当該アセスメントの結果について記録するとともに、基準第30条第2項の規定に基づき、当該記録は、2年間保存しなければならない。

[8]介護予防サービス計画原案の作成(第八号)

担当職員は、介護予防サービス計画が利用者の生活の質に直接影響する重要なものであることを十分に認識し、目標指向型の介護予防サービス計画原案を作成しなければならない。したがって、介護予防サービス計画原案は、利用者についてのアセスメントの結果、利用者が目標とする生活、利用者及びその家族の意向を踏まえ、当該地域における指定介護予防サービス、指定地域密着型介護予防サービス等が提供される体制を勘案した上で、実現可能なものとする必要がある。

また、当該介護予防サービス計画原案には、目標、目標についての支援のポイント、当該ポイントを踏まえ、具体的に本人等のセルフケア、家族、インフォーマルサービス、介護保険サービス等により行われる支援の内容、これらの支援を行う期間等を明確に盛り込み、当該達成時には介護予防サービス計画及び各指定介護予防サービス、指定地域密着型介護予防サービス等の評価を行い得るようにすることが重要である。

[9]サービス担当者会議等による専門的意見の聴取(第九号)

担当職員は、新規に介護予防サービス計画原案を作成したときは、利用者の情報を各サービスの担当者等で共有するとともに、利用者が抱えている課題、目標、支援の方針等について協議し、各サービスが共通の目標を達成するために具体的なサービスの内容として何ができるかについて相互に理解するなどについて、利用者や家族、介護予防サービス計画原案作成者、介護予防サービス計画原案に位置付けた指定介護予防サービスの担当者、主治医、インフォーマルサービス担当者等からなるサービス担当者会議を必ず開催することが必要である。また、これらの各サービスの担当者でサービス担当者会議に参加できない者については、照会等により専門的見地からの意見を求めれば差し支えないこととされているが、この場合にも、緊密に相互の情報交換を行うことにより、利用者の状況等についての情報や介護予防サービス計画原案の内容を共有できるようにする必要がある。

サービス担当者会議は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。ただし、利用者又はその家族(以下この⑨において「利用者等」という。)が参加する場合にあっては、テレビ電話装置等の活用について当該利用者等の同意を得なければならない。なお、テレビ電話装置等の活用に当たっては、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。

なお、当該サービス担当者会議の要点又は当該担当者への照会内容について記録するとともに、基準第28条の第2項の規定に基づき、当該記録は、2年間保存しなければならない。

[10]介護予防サービス計画の説明及び同意(第十号)

介護予防サービス計画に位置付ける指定介護予防サービス、指定地域密着型介護予防サービス等の選択は、利用者自身が行うことが基本であり、また、当該計画は利用者の希望を尊重して作成されなければならない。このため、当該計画原案の作成に当たって、これに位置付けるサービスについて、また、サービスの内容についても利用者の希望を尊重することとともに、作成された介護予防サービス計画の原案についても、最終的には、その内容について説明を行った上で文書によって利用者の同意を得ることを義務づけることにより、利用者によるサービスの選択やサービス内容等への利用者の意向の反映の機会を保障しようとするものである。

また、当該説明及び同意を要する介護予防サービス計画原案とは、いわゆる「介護予防サービス・支援計画書」(「介護予防支援業務に係る関違様式例の提示について」(平成18年3月31日老振発第0331009号厚生労働省老健局振興課長通知)に示す標準様式を指す。)に相当するものすべてが望ましいが、少なくとも「目標」「支援計画」、「【本来行うべき支援ができない場合】妥当な支援の実施に向けた方針」、「総合的な方針:生活不活発病の改善・予防のポイント」欄に相当するものについては、説明及び同意を要するものである。

[11]介護予防サービス計画の交付(第十一号)

介護予防サービス計画を作成した際には、遅滞なく利用者及びサービスの担当者に交付しなければならない。なお、交付する介護予防サービス計画については、[10]の説明及び同意を要する介護予防サービス計画原案の範囲を参照されたい。なお、基準第28条第2項の規定に基づき、介護予防サービス計画は、2年間保存しなければならない。

[12]担当者に対する個別サービス計画の提出依頼(第十二号)

介護予防サービス計画と各担当者が自ら提供する介護予防サービス等の当該計画(以下「個別サービス計画」という。)との連動性を高め、介護予防支援事業者とサービス提供事業者の意識の共有を図ることが重要である。

このため、基準第30条第十二号に基づき、担当者に居宅サービス計画を交付したときは、担当者に対し、個別サービス計画の提出を求め、介護予防サービス計画と個別サービス計画の連動性や整合性について確認することとしたものである。なお、担当職員は、担当者と継続的に連携し、意識の共有を図ることが重要であることから、居宅サービス計画と個別サービス計画の連動性や整合性の確認については、介護予防サービス計画を担当者に交付したときに限らず、必要に応じて行うことが望ましい。

さらに、サービス担当者会議の前に介護予防サービス計画の原案を担当者に提供し、サービス担当者会議に個別サービス計画案の提出を求め、サービス担当者会議において情報の共有や調整を図るなどの手法も有効である。

[13]個別サービス計画作成の指導及び報告の聴取(第十三号)

担当職員は、サービスの担当者に対して介護予防サービス計画を交付する際には、当該計画の趣旨及び内容等について十分に説明し、各サービスの担当者との共有、連携を図った上で、各サービスの担当者が自ら提供する介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス等の当該計画における位置付けを理解できるように配慮するとともに、当該サービスの担当者が介護予防サービス計画の内容に沿って個別サービス計画を作成されるよう必要な援助を行う必要がある。

また、利用者の状況や課題の変化は、利用者に直接サービスを提供する指定介護予防サービス事業者、地域密着型介護予防サービス事業者等により把握されることも多いことから、担当職員は、当該指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者等のサービスの担当者と緊密な連携を図り、設定された目標との関係を踏まえて利用者の状況や課題の変化が認められる場合には、円滑に連絡が行われる体制を整備する必要がある。そのため、各サービスの担当者がサービスの実施を開始した後は、それぞれのサービスの担当者から、少なくとも1月に1回、指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者等への訪問、電話、FAX等の方法により、サービスの実施状況、サービスを利用している際の利用者の状況、サービス実施の効果について把握するために聴取する必要がある。

[14]介護予防サービス計画の実施状況等の把握(第十四号・第十四号の二)

指定介護予防支援においては、設定された目標との関係を踏まえつつ利用者の有する生活機能の状況や課題に即した適切なサービスを組み合わせて利用者に提供し続けることが重要である。このために担当職員は、設定された目標との関係を踏まえつつ利用者の有する生活機能の状況や課題の変化に留意することが重要であり、介護予防サービス計画の作成後、介護予防サービス計画の実施状況の把握(利用者についての継続的なアセスメントを含む、以下「モニタリング」という、)を行い、設定された目標との関係を踏まえつつ利用者の有する生活機能の状況や課題の変化が認められる場合等必要に応じて介護予防サービス計画の変更、指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者等との連絡、調整その他の便宜の提供を行うものとする。

また、利用者の服薬状況、口腔機能その他の利用者の心身又は生活の状況に係る情報は、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師が医療サービスの必要性等を検討するにあたり有効な情報である。このため、指定介護予防支援の提供に当たり、例えば、

・薬が大量に余っている又は複数回分の薬を一度に服用している

・薬の服用を拒絶している

・使いきらないうちに新たに薬が処方されている

・口臭や口腔内出血がある

・体重の増減が推測される見た目の変化がある

・食事量や食事回数に変化がある

・下痢や便秘が続いている

・皮膚が乾燥していたり湿疹等がある

・リハビリテーションの提供が必要と思われる状態にあるにも関わらず提供されていない等の利用者の心身又は生活状況に係る情報を得た場合は、それらの情報のうち、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師の助言が必要であると担当職員が判断したものについて、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供するものとする。なお、ここでいう「主治の医師」については、要介護認定の申請のために主治医意見書を記載した医師に限定されないことに留意すること。

[15]介護予防サービス計画の実施状況等の評価(第十五号)

介護予防サービス計画では、設定された目標との関係を踏まえた利用者の有する生活機能の状況や課題を基に利用者の目標とする生活を実現するためのさらなる其体的な目標を定め、当該目標を達成するために介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス等を期間を定めて利用することとなる。このため、介護予防サービス計画で定めた期間の終了時には、定期的に、介護予防サービス計画の実施状況を踏まえ、目標の達成状況を評価し、今後の方針を決定する必要がある。したがって、評価の結果により、必要に応じて介護予防サービス計画の見直しを行うこととなる。

なお、評価の実施に際しては、利用者の状況を適切に把捉し、利用者及び家族の意見を徴する必要があることから、利用者宅を訪問して行う必要がある。

また、基準第28条第2項の規定に基づき、介護予防サービス計画の評価の結果は、2年間保存しなければならない。

[16]モニタリングの実施(第十六号)

担当職員は、モニタリングに当たっては、介護予防サービス計画の作成後においても、利用者及びその家族、主治の医師、指定介護予防サービス事業者、指定地城密着型介護予防サービス事業者等との連絡を継続的に行うこととし、当該指定介護予防サービス事業者等の担当者との連携により、モニタリングが行われている場合においても、特段の事情のない限り、少なくともサービスの期間終了月、サービス提供した月の翌月から起算して3月に1回のいずれかに該当する場合には利用者の居宅で面接を行うことが必要である。

利用者宅を訪問しない月でも、指定介護予防サービス事業者等への訪問、利用者への電話等の方法により、利用者自身に介護予防サービス計画の実施状況について確認を行い、利用者の状況に変化があるときは、利用者宅を訪問して確認を行うことが必要である。

こうして行ったモニタリングについては、1月に1回はその結果を記録することが必要である。なお、「特段の事情」とは、利用者の事情により、利用者の居宅を訪問し、利用者に面接することができない場合を主として指すものであり、担当職員に起因する事情は含まれない。

さらに、当該特段の事情がある場合については、その具体的な内容を記録しておくことが必要である。

また、基準第28条第2項の規定に基づき、モニタリングの結果の記録は、2年間保存しなければならない。

[17]介護予防サービス計画の変更の必要性についてのサービス担当者会議等による専門的意見の聴取(第十七号)

担当職員は、利用者が要支援状態区分の変更の認定を受けた場合など本号に掲げる場合には、サービス担当者会議の開催、サービスの担当者に対する照会等により、介護予防サービス計画の変更の必要性について、サービスの担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。ただし、やむを得ない理由がある場合については、サービス担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。なお、ここでいうやむを得ない理由がある場合とは、開催の日程調整を行ったが、サービス担当者の事由により、サービス担当者会議への参加が得られなかった場合や居宅サービス計画の変更から間もない場合で利用者の状態に大きな変化が見られない場合等が想定される。

当該サービス担当者会議の要点又は当該担当者への照会内容については記録するとともに、基準第28条第2項の規定に基づき、当該記録は、2年間保存しなければならない。

また、上記のサービスの担当者からの意見により、介護予防サービス計画の変更の必要がない場合においても、記録の記載及び保存について同様である。

[18]介護予防サービス計画の変更(第十八号)

担当職員は、介護予防サービス計画を変更する際には、原則として、基準第30条第三号から第十二号までに規定された介護予防サービス計画作成に当たっての一連の業務を行うことが必要である。

なお、利用者の希望による軽微な変更(例えばサービス提供日時の変更等で、担当職員が幕準第30条第三号から第十二号に掲げる一連の業務を行う必要性がないと判断したもの)を行う場合には、この必要はないものとする。ただし、この場合においても、担当職員が、設定された目標との関係を踏まえた利用者の状況や課題の変化に留意することが重要であることは、同条第十四号([14]介護予防サービス計画の実施状況等の把握)に規定したとおりであるので念のため申し添える。

[19]介護保険施設への紹介その他の便宜の提供(第十九号)

担当職員は、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが総合的かつ効率的に提供された場合においても、利用者がその居宅において日常生活を営むことが困錐となったと認められ、利用者が介護保険施設への入院又は入所を希望する場合には、利用者の要介護認定の申請の援助を行い、利用者が要介護認定を受けた上で、介護保険施設はそれぞれ医療機能等が異なることに鑑み、主治医の意見を参考にする。主治医に意見を求める等をして介護保険施設への紹介その他の便宜の提供を行うものとする。

[20]介護保険施設との連携(第二十号)

担当職員は、介護保険施設等から退院又は退所しようとする者で要支援認定を受けた者等から介護予防支援の依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、あらかじめ、居宅での生活における介護上の留意点等の情報を介護保険施設等の従業者から聴取する等の連携を図るとともに、居宅での生活を前提としたアセスメントを行った上で介護予防サービス計画を作成する等の援助を行うことが重要である。

[21]主治の医師等の意見等(第二十一号・第二十一号の二・第二十二号)

介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導及び介護予防短期入所療養介護については、主治の医師又は歯科医師(以下「主治の医師等」という。)等がその必要性を認めたものに限られるものであることから、担当職員は、これらの医療サービスを介護予防サービス計画に位置付ける場合にあっては主治の医師等の指示があることを確認しなければならない。

このため、利用者がこれらの医療サービスを希望している場合その他必要な場合には、担当職員は、あらかじめ、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めるとともに、主治の医師等とのより円滑な連携に資するよう、当該意見を踏まえて作成した介護予防サービス計画については、意見を求めた主治の医師等に交付しなければならない。なお、交付の方法については、対面のほか、郵送やメール等によることも差し支えない。また、ここで意見を求める「主治の医師等」については、要支援認定の申請のために主治医意見書を記載した医師に限定されないことに留意すること。

なお、医療サービス以外の指定介護予防サービス、指定地域密着型介護予防サービス等を介護予防サービス計画に位置付ける場合にあって、当該指定介護予防サービス等に係る主治の医師等の医学的観点からの留意事項が示されているときは、担当職員は、当該留意点を尊重して介護予防支援を行うものとする。

[22]介護予防短期入所生活介護及び介護予防短期入所療養介護の介護予防サービス計画への位置付け(第二十三号)

介護予防短期入所生活介護及び介護予防短期入所療養介護(以下「介護予防短期入所サービス」という。)は、利用者の自立した日常生活の維持のために利用されるものであり、指定介護予防支援を行う担当職員は、介護予防短期入所サービスを位置付ける介護予防サービス計画の作成に当たって、利用者にとってこれらの介護予防サービスが在宅生活の維持につながるように十分に留意しなければならないことを明確化したものである。

この場合において、介護予防短期入所サービスの利用日数に係る「要支援認定の有効期間のおおむね半数を超えない」というl目安については、原則として上限基準であることを踏まえ、介護予防サービス計画の作成遇程における個々の利用者の心身の状況やその置かれている環境等の適切な評価に基づき、適切な介護予防サービス計画を作成する必要がある。

[23]介護予防福祉用具貸与及び介護予防特定福祉用具販売の介護予防サービス計画への反映(第二十四号・第二十五号)

介護予防福祉用具貸与及び介護予防特定福祉用具販売については、その特性と利用者の心身の状況等と踏まえて、その必要性を十分に検討せずに選定した場合、利用者の自立支援は大きく阻害されるおそれがあることから、検討の過程を別途記録する必要がある。

このため、担当職員は、介護予防サービス計画に介護予防福祉用具貸与及び介護予防特定福祉用具販売を位置付ける場合には、サービス担当者会譲を開催し、当該計画に介護予防福祉用具貸与及び介護予防特定福祉用具販売が必要な理由を記載しなければならない。

なお、介護予防福祉用具貸与については、介護予防サービス計画作成後必要に応じて随時サービス担当者会議を開催して、利用者が継続して介護予防福祉用具貸与を受ける必要性について専門的意見を聴取するとともに検証し、継続して介護予防福祉用具貸与を受ける必要がある場合には、その理由を再び介護予防サービス計画に記載しなければならない。

また、介護予防福祉用具貸与については以下の項目について留意することとする。

ア 担当職員は、利用者の介護予防サービス計画に指定介護予防福祉用具貸与を位置付ける場合には、「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年厚生労働省告示第94)31号のイで定める状態像の者であることを確認するため、当該利用者の「要介護認定等基準時間の推計の方法」(平成12年厚生省告示第91号)別表第1の調査票について必要な部分(実施日時、調査対象者等の時点の確認及び本人確認ができる部分並びに基本調査の回答で当該利用者の状態像の確認が必要な部分)の写し(以下「調査票の写し」という。)を市町村から入手しなければならない。

ただし、当該利用者がこれらの結果を担当職員へ提示することに、あらかじめ同意していない場合については、当該利用者の調査票の写しを本人に情報開示させ、それを入手しなければならない。

イ 担当職員は、当該利用者の調査票の写しを指定介護予防福祉用具貸与事業者へ提示することに同意を得たうえで、市町村より入手した調査票の写しについて、その内容が確認できる文書を指定介護予防福祉用具貸与事業者へ送付しなければならない。

ウ 担当職員は、当該利用者が「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年老計発第0317001号・老振発第0317001号・老老発第0317001号)の第2の11〔介護予防福祉用具貸与費〕(2[1]ウの判断方法による場合については、福祉用具の必要性を判断するため、利用者の状態像が、同i)からii)までのいずれかに該当する旨について、主治医意見書による方法のほか、医師の診断書又は医師から所見を聴取する方法により、当該医師の所見及び医師の名前を介護予防サービス計画に記載しなければならない。この場合において、担当職員は、指定介護予防福祉用具貸与事業者より、当該利用者に係る医師の所見及び医師の名前について確認があったときには、利用者の同意を得て、適切にその内容について情報提供しなければならない。

[24]認定審査会意見等の介護予防サービス計画への反映(第二十六号)

指定介護予防サービス事業者は、法第115条の3第2項の規定に基づき認定審査会意見が被保険者証に記されているときは、当該意見に従って、当該被保険者に当該指定介護予防サービスを提供するように努める必要があり、担当職員は、利用者が提示する被保険者証にこれらの記載がある場合には、利用者にその趣旨(法第37条第1項の指定に係る介護予防サービス種類については、その変更の申請ができることを含む。)について説明し、理解を得た上で、その内容に沿って介護予防サービス計画を作成する必要がある。

[25]地域ケア会議への協力(第二十八号)

地城包括ケアシステムの構築を推進するため、地城ケア会議が介護保険法上に位置付けられ、関係者等は会議から資料又は情報の提供の求めがあった場合には、これに協力するよう努めることについて規定しているところである。地域ケア会議は、個別ケースの支援内容の検討を通じて、法の理念に基づいた高齢者の自立支援に資するケアマネジメントの支援、高齢者の実態把握や課題解決のための地域包括支援ネットワークの構築及び個別ケースの課題分析等を行うことによる地域課題の把握を行うことなどを目的としていることから、指定居宅介護支援事業者は、その趣旨・目的に鑑み、より積極的に協力することが求められる。そのため、地域ケア会議から個別のケアマネジメントの事例の提供の求めがあった場合には、これに協力するよう努めなければならないことについて、具体的取扱方針においても、規定を設けたものである。

2)基準第31条は、利用者の要支援状態の改善又は悪化の防止という介護予防の効果を最大限発揮するために留意すべき事項を定めたものであり、担当職員は、基準第31条に規定されている事項について常に留意しつつ、介護予防支援を提供する必要がある。

[1]基準第31条第一号については、介護予防が単に運動機能や栄養状態、口腔機能といった利用者の特定の機能を向匕させることを目的とするものではなく、これらの心身機能の改善や環境調整などを通じて、利用者ができる限り要介護状態にならないで自立した日常生活を営むことができるよう総合的に支援することを目的として行われるものである。担当職員は、支援を行うことによって利用者がどのような生活を営むことができるのかということを常に留意しながら、支援を行う必要があることを規定したものである。

[2]同条第二号については、介護予防の取組は、あくまでも利用者が自ら主体的に取り組むことが不可欠であり、そうした主体的な取組がなければ介護予防の十分な効果も期待できないおそれがあることから、担当職員は、介護予防支援の提供を通じて、利用者の意欲が高まるようコミュニケーションの取り方をはじめ、様々な工夫をして、適切な働きかけを行う必要があることを規定したものである。

[3]同条第三号については、利用者の状態に応じた目標を設定し、利用者が介護予防に意欲を持って主体的に取り組んだり、支援を受けることによってどのような生活を営めるようになるのかを理解することが重要である、また、介護予防サービス事業者等が設定された目標を共有することにより、その目標を達成するために適切な支援を行うことが重要であることを規定したものである。この場合、利用者が主体的に目標の達成に取り組めるよう、利用者と一緒に目標を設定することが重要である。

[4]同条第四号については、介護予防の取組が利用者のできる行為を増やし、自立した生活を実現することを目指すものであることから、利用者の自立の可能性を最大限引き出す支援を行うことが基本であり、利用者のできる能力を阻害するようなサービスを提供しないよう配慮すべきことを規定したものである。

[5]同条第五号については、介護予防においては利用者の生きがいや自己実現のための取組も含めて利用者の生活全般を総合的に支援することが必要であり、介護予防支援の提供に当たっては、介護予防サービスのみで利用者を支援するのではなく、利用者自身の取組や家族の支援、様々な保健医療サービスや福祉サービス、地域における住民の自発的な活動など多様な主体によるサービスがサービス担当者会議等の機会を通じてそれぞれ連携して提供されるよう配慮すべきことを規定したものである。

[6]同条第六号については、地域支援事業及び介護給付との連続性及び一貫性を持たせることを規定したものである。具体的には、要支援者の心身の状態が改善したり、悪化することにより、地城支援事業における二次予防事業の対象者となったり、要介護者と認定されることがある。また、二次予防事業の対象者の心身の状態が悪化したり、要介護者の心身の状態が改善することにより要支援者と認定されることもある。このような場合に、利用者に対する支援が連続性及び一貫性を持って行われるよう、指定介護予防支援事業者が地域包括支援センター及び居宅介護支援事業者と連携を図るべきことを規定したものである。

[7]同条第七号については、利用者が要支援に至る過程やその状態は様々であり、また、利用者の意欲や生活の状況等によって、その取組の方法についても利用者によって様々であることから。一人ひとりの利用者に応じて、効果的なサービスが提供されるよう支援すべきことを規定したものである。

[8]同条第八号については、介護予防支援の提供を通じて利用者の機能が改善した場合には、その機能が維持できるように、利用者自らが継続的に意欲を持って取り組めるよう支援すべきことを規定したものである。

5 基準該当介護予防支援に関する基準

基準第1条の2、第2章及び第3章(第27条第6項及び第7項を除く。)までの規定は、基準該当介護予防支援の事業について準用されるため、1から3まで(「基本方針」「人員に関する基準」及び「運営に関する基準」)を参照されたい。この場合において。準用される基準第10条第1項の規定は、基準該当介護予防支援事業者が利用者から受領する利用料と、原則として特例介護予防サービス計画費との間に不合理な差異が生じることを禁ずることにより、基準該当介護予防支援についても原則として利用者負担が生じないこととする趣旨であることに留意されたい。

 

6  雑則

(1)電磁的記録について

基準第31 条第1項は、、指定介護予防支援事業者及び、指定介護予防支援の提供に当たる者(以下「事業者等」という。)の書面の保存等に係る負担の軽減を図るため、事業者等は、この省令で規定する書面(被保険者証に関するものを除く。)の作成、保存等を次に掲げる電磁的記録により行うことができることとしたものである。

[]電磁的記録による作成は、事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法または磁気ディスク等をもって調製する方法によること。

[] 電磁的記録による保存は、以下のいずれかの方法によること。

ア 作成された電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法

イ 書面に記載されている事項をスキャナ等により読み取ってできた

電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法

[] その他、基準第33 条第1項において電磁的記録により行うことができるとされているものは、[]及び[]に準じた方法によること。

[] また、電磁的記録により行う場合は、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」及び厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。

(2)電磁的方法について

基準第33 条第2項は、利用者及びその家族等(以下「利用者等」という。)の利便性向上並びに事業者等の業務負担軽減等の観点から、事業者等は、書面で行うことが規定されている又は想定される交付等(交付、説明、同意、承諾、締結その他これに類するものをいう。)について、事前に利用者等の承諾を得た上で、次に掲げる電磁的方法によることができることとしたものである。

[] 電磁的方法による交付は、基準第4条第2項から第8項までの規定に準じた方法によること。

[] 電磁的方法による同意は、例えば電子メールにより利用者等が同意の意思表示をした場合等が考えられること。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。

[] 電磁的方法による締結は、利用者等・事業者等の間の契約関係を明確にする観点から、書面における署名又は記名・押印に代えて、電子署名を活用することが望ましいこと。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。

[]その他、基準第31 条第2項において電磁的方法によることができるとされているものは、[]から[]までに準じた方法によること。ただし、基準又はこの通知の規定により電磁的方法の定めがあるものについては、当該定めに従うこと。

[]また、電磁的方法による場合は、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」及び厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。


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