【ご協力のお願い】ケアマネ刺殺事件を受けた緊急調査
ケアマネジメント・オンラインでは「埼玉県のケアマネ刺殺事件を受けた緊急アンケート」を実施しています。
https://questant.jp/q/CTG3GI53?id%3E
<以下、投稿文>
精神的に不安定で、攻撃性や被害妄想の高い人物がいたとしても、本来であれば近寄らない限り、危害を被ることはない。
しかし、ケアマネジャー(介護支援専門員)という仕事は、高齢者やその家族の生活の深部に入り込み、支援を行う仕組みになっている。
例え、リスクの高い利用者や家族であっても、原則、訪問義務が課されている。親族関係、経済状況、健康状態といった極めて個人的な情報を収集することは不可欠な業務構造になっている。
こうした情報の分析は「アセスメント(課題分析)」と呼ばれ、適切なケアプラン(介護計画)を作成するための出発点となる。
行政が行う運営指導やケアプラン点検では、プライバシーに関する情報収集が不十分なケアマネジャーは、「アセスメント不足」や「信頼関係が構築できていない」とされ、「質が低い」と厳しく指導される。
結果として、ケアマネジャーは相手が望まなくても、制度によってプライバシーの深淵に(時に土足で)踏み込むことを強要される側面がある。
また、利用者や家族も、上記のような制度に同意して契約を結ばなければサービスを利用できない仕組みだ。
制度を設計した国や自治体(保険者)にとって、この「契約」という仕組みは、現場トラブルを「当事者間の問題」として丸投げできる便利なものである。
しかし現場の実態を見れば、そもそも複雑な契約の意味を当初から十分に理解できない利用者や家族も少なくない。
それでも、契約しなければサービスを受けられないため、十分に納得できないまま契約を交わしている人々が一定数存在する。
例えば、ケアマネジャーには、「モニタリング」と呼ばれるルールがあり、少なくとも月に1回は必ず利用者宅を訪問し、本人と面接をしなければならない。
これは生活状況の変化を確認するためだが、現場では毎月の訪問が必ずしも必要でないケースもある。
当然、この毎月の訪問に対して、利用者や家族から訪問拒否の申し出や反発が出ることもある。
しかし、制度は個別の事情をほとんど考慮せず、一律に「毎月訪問せよ。さもなくば報酬の減算(事業所に支払われる介護報酬をカットすること)」となる。
もっとも、法規的には、(国の責任逃れのように)特段の事情ややむを得ない事情があれば、訪問せずとも減算を免れる可能性はあることが記載されている。
しかし、自治体の行う指導などでは、実際の暴言や暴行の事実が「記録」として客観的に証明されない限り、原則として減算が適用される。
行政の指導では、「訪問しなくてよいと判断した客観的な根拠は何か」といった証明が常に求められる。
この際、「個人的に恐怖を感じた」というケアマネジャーの主観的な恐怖心だけでは、訪問を控える正当な理由として認められにくいのが実情である。
訪問を断念するに至った詳細な経緯を、あたかも弁護士が証拠を揃えるかのように正確な記録として残すことが行政や研修の場で指導される。
(ちなみに、これほど高い専門性とリスクを伴う仕事でありながら、ケアマネジャーの収入は他の専門職に比べて低く抑えられている。)
当然、ケアマネジャーとしても訪問に拒否的なケースや攻撃性を感じるケースなどには訪問したくない。しかし、訪問しなければ許されないためリスクを感じつつも、訪問する。
その意味で、今回の事件は起こるべくして起きた事件と多くのケアマネジャーが感じているのではないだろうか。その背景には制度のあり方が大きく関係している。
だが、国や保険者からは、そこに目を向ける姿勢は見えない。
本来、こうした調査やリスクの把握は、国や自治体などの公的機関が責任を持って行うべきものだろう。
今回のケアマネジャー刺殺事件は、現場に安全確保の責任を丸投げし、制度上のリスク対策を考慮しない国や保険者の無作為(やるべきことをしない)が生んだ人災といえるのではないか。