大阪地裁令和5年10月19日判決(令和3年(行ウ)第82号)
https://www.city.neyagawa.osaka.jp/material/files/group/89/01_r5_12_giansyo.pdf
🔹ポイントまとめ
別紙
〔事件の概要〕
(1)介護保険法によれば、「指定居宅介護支援の事業の運営に関する基準」に関し、利用する要介護者のサービスの適切な利用等に密接に関連する所定の事項については、厚生労働省令で定める基準に従い、市町村の条例で定めるものとされているところ、現行の『寝屋川市指定居宅サービス事業者等の指定並びに指定居宅サービス等の事業等の人員、設備及び運営等に関する基準を定める条例』(平成30年寝屋川市条例第55号)[以下「本件現行条例」という.〕では、「指定居宅介護支援の事業の運営に関する基準」は、「『指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準』(平成11年厚生省令第38号)〔以下「居宅介護支援基準」という。〕に定めるところによる」こととしている。(なお、本件現行条例の制定(施行期日=平成31年4月1日)に伴い廃止された『寝屋川市指定居宅介護支援事業者の指定並びに指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準を定める条例』(平成29年寝屋川市条例第35号)〔以下「本件旧条例」という,〕では、居宅介護支援基準と同じ内容を規定していた。)
(2) 当市では、本件現行条例においてその定めるところによることとしている居宅介護支援基準の規定及び本件旧条例の規定〔以下「居宅介護支援基準の規定等」という,〕並びに「指定居宅介護支援の事業の運営に関する基準」についての厚生労働省老人保健福祉局企画課長の通知(『指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について』(平成11年7月29日付け老企発第22号。厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知))を踏まえ、指定居宅介護支援事業者には、“利用者との指定居宅介護支援の提供契約に当たり、「利用者が複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること」及び「居宅サービス計画原案に位置付けた指定居宅サービス事業者等の選定理由の説明を求めることが可能であること」について、書面により説明を行う”義務があるとして、介護保険の事務を運用している。
(3) 市長は、原告が(2)の説明に係る義務に違反したとして、そのことによる居宅介護サービス計画費の減算等を理由に、原告に対し、
1令和4年1月17日付けで、被保険者116人に係る居宅介護サービス計画費2,926万7.249円を不当利得として返還するよう求める旨を通知するとともに、
2同年12月14日付けで、被保険者1人に係る居宅介護サービス計画費46万6,199円を不当利得として返還するよう求める旨を通知した。
(4) 本件は、原告が、利用者との指定居宅介護支援の提供契約に当たり、居宅介護支援基準の規定等で必要とされる説明は行っており、居宅介護支援基準の規定等に係る違反はないなどと主張して、上記1及び2の通知に記載された不当利得返還債務が存在しないことの確認を求める事案である。
(5) 本件に関し、大阪地方裁判所は、「原告の当市に対する上記1及び2の通知記載の不当利得返還債務が存在しないことを確認する」との判決を言い渡したものである。
事件の概要(簡単版)
-
背景
-
介護保険法では、指定居宅介護支援事業(ケアマネが行う居宅サービス計画作成)の運営基準を、厚生労働省令と市町村条例で定めることになっています。
-
寝屋川市の現行条例(平成30年条例第55号)は、旧条例(平成29年条例第35号)と同様に、国の「居宅介護支援基準」に従う内容です。
-
-
事務運用の内容
-
市は、居宅介護支援事業者(ケアマネ)に対して、契約時に利用者に以下を書面で説明する義務があるとしています:
-
利用者が複数の事業者を紹介してもらえること
-
居宅サービス計画に選んだ事業者の理由を説明できること
-
-
-
争点の発生
-
市長は、原告(事業者)が上記の説明義務を守らなかったとして、居宅介護サービス計画費(約3,000万円)を「不当利得」として返還するよう通知しました。
-
-
原告の主張
-
原告は、利用者への説明は義務どおり行っており、基準違反はないと反論。
-
よって、返還請求(不当利得)はそもそも存在しないと確認を求める訴えを起こしました。
-
-
裁判所の判断
-
大阪地方裁判所は、原告の主張を認め、「返還義務は存在しない」との判決を出しました。
-
🔹ポイントまとめ
-
争点:居宅介護支援契約時の説明義務違反があったか
-
請求:市が返還を求めたサービス計画費約3,000万円
-
原告主張:説明義務は果たしており、返還義務なし
-
判決:原告勝訴(返還義務はなし)