最期の時間をわがままに過ごしてほしい1/2


現場インタビュー「最期の時間をわがままに過ごしてほしい

窪川 よしこさん (東京都・日野市サテライトホーム さざんか」)
※施設詳細は末尾

◆よこがお

いくつかの介護施設などを経て介護保険制度が適用されないケアハウスを運営。

ご自宅を太陽として中心と捉え、ここはその衛星つまりサテライトとしてありたいとの想いを込め「サテライトホーム」と冠した。

また、地域的に「垣根の垣根の曲がり角♪」の歌詞でお馴染みの「たきび」を作詞した巽聖歌ゆかりの地でもあるので、その歌詞にあやかって「さざんか」と名前に採用した。

そこで介護保険制度や他の公的制度などが受け皿となれない制度からこぼれる利用者へのケアにあたる。

そのケアの対象は高齢者に限らず、子ども、障害者などと行政的な縦割りをしない方針を貫いている。




大きな施設で感じた限界と自分の理想

ケアの仕事として最初は児童養護施設で働き始めました。

でも、当時は私自身の私生活上のゴタゴタもあったため、

家庭的に辛い状況下に置かれていることの多い施設の児童に対してケアを行うことが、
私自身にとって精神的に辛い部分がありました。

だから、しばらくして、老人介護の方へ移りました。

最初、勤めたのは介護老人保健施設です。
そこでは介護の方法をめぐり時に職場のスタッフ内で意見が対立することがありました。

例えば、こんな感じです。
便秘が続いている老人に対し浣腸をして排便を促すことになりました。

一部の職員はベッド上で寝たままで、
オムツに排便をしてもらえばいいと言いました。
でも、私はそれに反対でした。

私達と同じように排便は座ってできる人でしたので座ってやってもらいたかったのです。

でも、介護の手間としては負担が増えますから

反対する職員とはいつまでも平行線のままでした。

また、入浴介助にしてもそうでした。
例えば入浴介助をするに際して、入浴時間の設定をしなければなりません。

私としては夜間に入浴介助をしてあげたいと思ったのですが、
施設では勤務の都合上、入浴時間が日中の時間帯になっていました。

でも、私たちの常識で考えるとお風呂って夜、入るものです。
夜、入るからこそ体もリラックスします。

それが夜間の安眠につながるのではないかと考えていました。

老人は夜間、落ち着いて眠れないと徘徊といって施設内を歩きまわってしまったり、
昼と夜の生活が逆転したりすることがあるのです。

それもあって、夜間の入浴時間も提言したのですが、
ここでもやはり職員の勤務シフトの変更や勤務時間に影響するので反対されました。

私としては細かい配慮の行き届いた介護がしたかったのに、
大きな施設や多くの職員が関わる介護では、どうしてもそれがやりずらいなあ

という実感がありました。

◆グループホームで小さなケアの実践

そんなとき、所属法人がグループホームを立ち上げると聞きました。

ご存知のとおりグループホームは9人程度の認知症老人が
職員と共同で生活しながら生活全般をお世話していく介護形態です。

渡りに船とばかり、異動を希望し、望みを聞いていただきました。

そして、念願かなってグループホームでの介護が始まりました。
そこでは大人数の施設介護では実践できなかった個別ケアの実践も多くできるようになりました。

2か所目のグループホームでは設計段階からも関わらせていただき
自分の意見も多く採用していただいたのはいい思い出です。

例えば階段の幅は60cmにして両方に手すりをつけました。

毎日、朝晩の階段昇降で、利用者さんはかなり歩行能力が保たれました。
夜間好きなテレビを観た後の入浴も実践しました。

併設の小規模多機能の設計にも関わり、設計士さんにいっぱい要望いたしました。

例えば、トイレの設計についていうと設計士さんは
通常のトイレと同じように考えます。

ですから、ドアに対して便座が対面するように設計しようとするわけです。

しかし、それでは車椅子でトイレへ入り、そこから便座への乗り移りやその介助がやりづらいことは知っていました。

ですから、便器はトイレの奥を向くように設置していただき、
そこへ車椅子を平行に位置づけられるように図面を引き直してもらったりしました。

また、グループホームらしく個別ケアにこだわり、
施錠はしないで、外へ出てしまう利用者さんがいれば、とことん一緒についてゆきました。

それまでの認知症介護というと大きな施設でカギを掛けたりすることが主流でしたが、
グループホームが登場し、カギを掛けない介護などにも取り組んみ始めました。

すると、例えば、大きな施設では落ち着かなく徘徊となってしまう方が落ち着いて過ごせるようになりました。

また、食事の飲み込みが悪くなると大きな施設などでは
職員の勤務都合から時間内に食事介助を終わらせなければならない時もあります。

そのため、ゆっくりと時間を掛ければ噛めて、飲み込める方のごはんを

ミキサーでドロドロのトロミ食にしたり、注射器のような介助用具で
なかば強引に食べさせることもあったのです。

そんな方に対しゆっくりと時間を掛けて介助すれば食べられることなどの体験もしました。

でも、そこでもやっていくうちにケアの限界を感じるようになりました。
というのも老人ですから最初のうちこそ、それなりに元気でも、
いつか少しずつ状態が低下されます。

典型的なのは、やはり「食事の飲み込みが悪くなること」でした。


自分でも食べたり飲んだりする意思も意欲もなくなってきたりすることは
どうしても避けられません。

するとやはり、一部の職員からは

「ここまで認知症が進んでくるとうちのグループホームでは看れない」
という職員も出てきます。

家族の間からも、特定の利用者さんにのみ手が掛けられて不平等といった声も聞かれたりします。

今でこそ、グループホームでの看取りも行なわれるようになってきましたが、
当時はまだグループホームが出初めて間もない頃で

職員の力量的にも、介護の必要性が重度になると他の介護施設や病院へ移っていただくような対応がまだまだ多くあったのです。

でも、私はせっかく馴染んでこられた方々を放り出すことが非常に辛かった。
御本人が慣れてきて、こちらも情が出てきた頃に退去してもらうわけですから。

後編へつづく
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     サテライトホーム さざんか
191-0065 東京都日野市旭が丘2-8-18

電話 042-581-3739(窪川)

     基本料金700/時間から。
※ 食事代500/食 入浴料500/
     その他、長期宿泊などは応相談。

    さざんか6周年記念セミナー
「介護保険ができて、介護問題は解決できたのか? ―映画『ただいま、それぞれの居場所』から見えてくるもの―」
20121012
1800受付開始 
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     問合せ:さざんかまで


◆編集部より◆



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