2024/03/26

介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針

 

介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針

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団塊の世代が75歳以上となる令和7(2025)年以降、少子化を背景として生産年齢人口(現役世代)は減少し、医療・介護の専門職の担い手の確保は困難となる一方で、介護ニーズの高い85歳以上人口は令和172035)年頃まで一貫して増加し、介護保険法(以下「法」という。)第115条の45第1項に規定する介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)や介護サービスによる支援を必要とする高齢者は増加していく。加えて、単身高齢者世帯や高齢者夫婦のみ世帯、認知症高齢者の増加が予想される中、介護が必要な状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるようにするため、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が中心となって、介護だけではなく、医療や予防、生活支援、住まいが包括的に確保される地域包括ケアシステムの一層の推進や地域づくり等に一体的に取り組むことで、地域共生社会の実現を図っていくことが重要である。

 

高齢者の地域での生活は、医療・介護の専門職との関わりのみならず、地域の住民や産業との関わりの中で成立するものであり、高齢者自身も地域の多様な主体の一員であることを踏まえ、支える側と支えられる側という関係性を超えた地域共生社会を実現していくことが必要である。

 

総合事業は、高齢者の介護予防、社会参加及び生活支援を通じて、高齢者が

尊厳を保持しながら地域での自立した日常生活を送ることを目指し、地域のつながりの中で、幅広い世代の地域住民の主体的な活動や地域の多様な主体の参入を促進し、医療・介護の専門職がそこに関わり合いながら、高齢者自身が適切に活動を選択できるようにするものである。

 

高齢者の尊厳と自立した日常生活を地域で支えていくためには、地域に暮らす高齢者の立場に立ち、市町村が中心となって、医療・介護の専門職がより一層その専門性を発揮しつつ、高齢者を含む多世代の地域住民、地域運営組織、NPO、民間企業等の多様な主体を含めた地域の力を組み合わせるという視点から、総合事業を地域共生社会の実現のための基盤となるものと位置づけ、地域をデザインしていくことが重要である。

 

その際、市町村は、地域の高齢者にサービスを提供するという立場を超えて、地域の多様な主体が持つ多様な価値判断を踏まえつつ、ファシリテーションの役割を担いながら多様な主体との対話を重ねることで、それぞれの主体が、目標に向かって自らの意思で行動を起こし、地域の中でその力を発揮しながら、共創していくことができるよう、地域づくりのプロジェクトマネジャーとしての役割を発揮することが求められる。 4

 

また、市町村が、こうした役割を発揮するに当たっては、生活支援体制整備事業(法第

115条の45第2項第5号に規定する事業をいう。以下同じ。)による高齢者の自立した生活や介護予防に資する多様な活動(以下「生活支援・介護予防サービス」という。)の資源開発やネットワーク構築等のためのコーディネート機能を果たす者(以下「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)」という。)や協議体(地域の多様な主体により構成される生活支援・介護予防サービスに関する企画、立案、方針策定等を行う場をいう。以下同じ。)を活用することや、地域住民が自分事として主体的に地域の多様な活動に参加することが不可欠であるという視点を持つことが重要である。

 

この指針は、高齢者が元気なうちから地域社会や医療・介護の専門職とつながり、そのつながりの下で自己の能力や選択による社会活動を続け、介護が必要となっても必要な支援を受けながら、住民一人一人が自分らしく暮らし続けられる地域共生社会の実現を推進していくことにより、居宅要支援被保険者等(法第115条の45第1項第1号に規定する居宅要支援被保険者等をいう。以下同じ。)又は第1号被保険者(法第9条第1号に規定する第1号被保険者をいう。以下同じ。)への支援の充実のみならず、高齢者が、地域包括ケアシステムにおける自助・互助・共助・公助のつながりの中で、多様な主体が持つ地域の力と医療・5

 

介護の専門職の力を活用しながら、自身の力を発揮しつつ、自立した日常生活を送ることのできる社会の実現を目指しながら、市町村が、総合事業を適切かつ有効に実施するための基本的な事項を示すものである。

 

第1 総合事業の実施に関する総則的な事項

1 目的

総合事業は、認知症や障害の有無にかかわらず、地域に暮らす全ての高齢者が、自立した日常生活を送ること、また、そのための活動を選択することができるよう、地域に暮らす高齢者の立場から、市町村が中心となって、地域住民や医療・介護の専門職を含めた多様な主体の力を組み合わせて実施することにより、居宅要支援被保険者等に対する効果的かつ効率的な支援等を行うことを目的としている。

2 基本的な考え方

総合事業は、1の目的のため、住民主体の活動を含む多様なサービス・活動の充実を図り、居宅要支援被保険者等の選択できるサービス・活動を充実し、在宅生活の安心確保を図るとともに、高齢者の社会参加の促進や介護予防に資する事業の充実による要介護・要支援認定に至らない高齢者の増加、効果的な介護予防ケアマネジメント(法第115条の45第1項第1号ニに規定する第1号介護予防支援事業6

 

をいう。以下同じ。)と自立支援に向けたサービス・活動の実施による自立の促進や重度化予防の推進等を目指すものであり、その基本的な考え方は以下のとおりである。

 

⑴ 多様な生活支援の充実

地域住民の主体的な活動を含め、高齢者の日常生活と関わる地域の多様な主体による多様なサービス・活動の充実を図るとともに、これらのサービス・活動にアクセスしやすい環境の整備を進める。

⑵ 高齢者の社会参加と地域における支え合いの体制づくり

高齢者の地域の社会的な活動への参加は、活動を行う高齢者自身の生きがいや介護予防等にもなることを踏まえ、積極的な取組を推進する。

⑶ 介護予防の推進

介護予防の推進に当たっては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」、「活動」及び「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要である。そのため、リハビリテーション専門職等を活かした自立支援に資する取組を推進する。

⑷ 市町村、住民等の関係者間における意識の共有と自立支援に向けたサービス等の展開 7

 

市町村、住民等の地域の関係者間で、自立支援・介護予防といった理念、高齢者自らが介護予防に取り組むといった基本的な考え方、地域づくりの方向性等を共有するとともに、多職種によるケアマネジメント支援を行う。

⑸ 認知症施策との連動

総合事業や生活支援体制整備事業の実施に当たっては、要介護・要支援認定に至らない場合であっても、認知機能が低下した高齢者等が地域とつながりながら継続して自立した日常生活を送れるようにしていくという視点を持つことが重要である。

このため、認知症施策と総合事業や生活支援体制整備事業等との連動により、認知機能が低下した高齢者等に対する多様な日常生活上の支援体制の充実及び強化並びに社会参加の推進を一体的に図っていくことが必要である。

なお、認知症施策の推進に当たっては、共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号)に定める目的や基本理念等を踏まえる必要がある。

⑹ 地域共生社会の推進 8

 

住民主体の支援等を実施するに当たっては、地域のニーズが居宅要支援被保険者等のみに限定されるものではなく、また、多様な人との関わりが高齢者の支援にも有効であることから、高齢者以外の障害者、児童等がともに集える環境づくりを心がけることが重要である。

3 総合事業の全体像

総合事業は、居宅要支援被保険者等に対して必要な支援を行う法第115条の45第1項第1号に規定する事業(以下「サービス・活動事業」という。)と、第1号被保険者に対して体操教室等の介護予防を行う同項第2号に規定する事業(以下「一般介護予防事業」という。)からなる。

 

サービス・活動事業は、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)第5条による改正前の法において全国一律の保険給付として提供されていた介護予防訪問介護及び介護予防通所介護(以下「旧介護予防訪問介護等」という。)に相当する介護サービス事業者等による専門的なサービスに加え、地域住民の主体的な活動や高齢者の日常生活と密接に関わる地域の多様な主体による多様なサービス・活動を実施することを可能としている。

 

4 市町村による効果的・効率的な事業実施 9

 

⑴ 総合事業の実施による効果

総合事業は、高齢者の介護予防、社会参加及び生活支援を通じて、高齢者が尊厳を保持しながら地域での自立した日常生活を送ることができるよう支援するものである。

このため、介護サービス事業者等に加え、高齢者の日常生活と密接に関わる地域住民を含めた多様な主体の参入が促進され、地域全体がチームとなって総合事業が実施されることが重要である。

このようにして総合事業を実施することにより、医療・介護の専門職が、その専門性を発揮しつつ高齢者の状況に応じた必要な関わりを続けることが可能となり、次の効果が期待される。

・ それぞれの高齢者が元気なうちから、趣味的活動や社会貢献活動、有償ボランティア、就労的活動等の様々な活動を通じた総合事業との早期の関わりを深めることで、介護予防の無関心層を含めた高齢者の地域の活動等への主体的な参加や心身の機能低下の早期発見などにつながること。

・ 要支援となっても、支援が必要となる前の価値観や生活様式を維持したまま地域で暮らすための活動やサービスの選択肢を拡大すること。

・ 総合事業が地域に幅広く根付くことで、介護が必要となっても、地域との関わりの中で尊厳を保10

 

持しながら自立した日常生活を送ることのできる地域づくりが実現されること。

また、地域の多様な主体が総合事業を媒介として介護保険制度に関する施策と関連する取組を進めることで、商業、交通、教育、農業、地域づくりなどの高齢者の日常生活と密接に関わる分野における活動との関わりを深め、地域住民の活動と相まって地域づくりの活性化につながる。

⑵ 総合事業に要する費用

総合事業は、介護保険法施行令(平成10年政令第412号。以下「令」という。)第37条の13第4項又は第5項に規定する額の範囲内で行うこととしており、市町村は、総合事業と予防給付の費用の伸び率が、75歳以上の高齢者数の伸び率と同程度となるよう、将来の高齢者人口、特に介護ニーズの高い85歳以上人口の動向も踏まえつつ、計画的に総合事業を行うことが重要である。

 

5 事業の実施状況の調査・分析・評価と次期計画への反映

法第115条の45の2第2項において、市町村は、定期的に、総合事業の実施状況について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、その結果に基づき必要な措置を講ずるよう努めるものとされており、当該調査、分析及び評価の事務については、一般介護予防事業として実施することが可能であ11

 

る。

総合事業の実施状況に関する調査及び分析の実施に当たっては、地域の高齢者にどのような生活課題があるか、地域住民がどのような関心を持って地域で活動をしているのかを把握することが重要である。このため、地域ケア会議(法第115条の48第1項に規定する会議をいう。以下同じ。)における必要な支援体制の検討や、在宅医療・介護連携推進事業(法第115条の45第2項第4号に規定する事業をいう。以下同じ。)、生活支援体制整備事業、認知症総合支援事業(同項第6号に規定する事業をいう。以下同じ。)、さらには、居住支援、意思決定支援、権利擁護等の高齢者を支える様々な取組との連動が求められる。

 

総合事業の実施状況に関する評価の実施に当たっては、地域の多様な主体が実施する活動の中で高齢者がその選択の下で自立した日常生活を送ることができる地域づくりの推進や、その取組も踏まえ、医療・介護の専門職が、高齢者のライフステージに応じて適切に関わりつつ、高齢者のニーズに応じた必要な支援の実施、さらには、現に地域で支援を必要とする高齢者に対してのみならず、将来、地域で支援を必要とする高齢者に対する介護サービスの提供を含めた必要な支援を切れ目なく行うための体制の12

 

継続的な維持といった取組を行うことができているかという視点に立ち、4の内容を踏まえつつ、次の観点から行うことが重要である。

高齢者一人一人の介護予防、社会参加及び自立した日常生活の継続の状況

・ 高齢者が地域で自立した生活を送るための選択肢の拡大の状況

・ 介護保険制度に関する施策及び地域の多様な主体により行われる当該施策と関連する地域づくりの取組との連動性

・ 介護人材の確保の見通しを踏まえつつ、総合事業と介護サービスとを一連のものとして、地域の高齢者が必要とする支援を継続的かつ計画的に提供するための体制づくりの状況

 

当該評価の結果については、適切に市町村介護保険事業計画(法第117条第1項に規定する市町村介護保険事業計画をいう。以下同じ。)への反映を行うとともに、市町村、地域包括支援センターをはじめとする関係者間で共有することや、介護保険運営協議会、地域包括支援センター運営協議会等において議論することが重要である。

なお、高齢者が自立した日常生活を送る上で、移動及び外出支援は重要であり、総合事業において住13

 

民互助により生活支援と一体的に行われる移動・外出支援の普及方策についての検討も重要である。

 

6 都道府県による市町村への支援

総合事業は、市町村が、その地域の実情に応じて取組を実施するものであり、多様なサービス・活動の充実等による地域の支え合いの体制づくり、多様なサービス・活動における単価や基準、利用者負担の設定等多岐にわたる事務が生じることとなる。

そのため、国において、指定事業者制度や国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)による審査支払を可能とするなどの仕組みを設けるとともに、生活支援体制整備事業の創設、介護給付費における調整交付金と同様の仕組みを設けるなど、市町村が事業を円滑に実施することができるよう配慮している。

都道府県においても、市町村が総合事業を円滑に実施することができるよう、地方厚生(支)局とも必要な連携を図りつつ、都道府県レベルでの課題分析、市町村に対する多様な情報提供や伴走的支援の実施、都道府県が実施する施策に関わる他の産業や民間企業等との広域的なネットワークの共有等を通じ、市町村の主体的な取組を様々な側面から支援することが求められる。 14

 

7 市町村介護保険事業計画等との関係

各年度における総合事業の量の見込みについては、市町村介護保険事業計画において定めることとされ、各年度における総合事業に要する費用及び総合事業の見込量の確保のための方策については、市町村介護保険事業計画において定めるよう努めることとされている。総合事業は、5の調査、分析及び評価の結果も踏まえ、市町村介護保険事業計画に基づき計画的に事業を推進するものとし、その際、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第20条の8第1項に規定する市町村老人福祉計画との一体性、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)第5条第1項に規定する市町村計画との整合性を十分に図るものとする。

 

第2 サービス・活動事業

1 基本的な考え方

サービス・活動事業は、居宅要支援被保険者等の社会参加、介護予防及び自立した日常生活のためのニーズに対応するため、介護サービス事業者等が提供する旧介護予防訪問介護等に相当する専門的なサービスに加え、地域住民の主体的な活動や高齢者の日常生活と密接に関わる地域の多様な主体による15

 

支援等の多様なサービス・活動による支援を行うものである。

 

2 サービス・活動事業の構成

サービス・活動事業は、法第115条の45第1項第1号イに規定する第1号訪問事業(以下「訪問型サービス」という。)、同号ロに規定する第1号通所事業(以下「通所型サービス」という。)、同号ハに規定する第1号生活支援事業(以下「その他生活支援サービス」という。)及び介護予防ケアマネジメントから構成される。

 

3 対象者

サービス・活動事業の対象者は、居宅要支援被保険者(法第53条第1項に規定する居宅要支援被保険者をいう。以下同じ。)、介護保険法施行規則第百四十条の六十二の四第二号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第197号)に定める基準(以下「基本チェックリスト」という。)に該当する第1号被保険者(以下「事業対象者」という。)及び居宅要介護被保険者であって要介護認定を受ける日以前から継続的にサービス・活動事業(4⑴①の従前相当サービス及び4⑴④のサービス・活動Cを除く。)を利用する者(以下「継続利用要介護者」という。)である。 16

なお、継続利用要介護者に対してサービス・活動事業(4⑴①の従前相当サービス及び4⑴④のサービス・活動Cを除く。)を実施する際は、介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号。以下「則」という。)第140条の62の3第2項第3号の2の規定に基づき、継続利用要介護者の心身の状況を踏まえた適切な支援を行う観点から、市町村及び当該事業の実施者は、居宅介護支援事業者、地域包括支援センター及び地域ケア会議との密接な連携を図る必要があること、また、サービス・活動事業の提供時に継続利用要介護者に病状の急変が生じた場合等における必要な措置を講じるための実施方法をあらかじめ定めておく必要があることに留意する必要がある。


基本チェックリストは、原則として、市町村又は地域包括支援センターにおいて、対面で第1号被保険者からの相談を受ける際に活用し、当該被保険者が事業対象者に該当する場合は、介護予防ケアマネジメントを行う。この際、当該被保険者の心身又は生活の状況、その置かれている環境、現病歴、目標等についてのアセスメントの結果を踏まえ、サービス・活動事業のみならず、一般介護予防事業等を含めた適切な活動の選択を支援する。また、アセスメントの結果、必要と認められる場合には、要介護認定の申請に係る支援を行う。 

なお、第2号被保険者については、事業対象者とはならないが、居宅要支援被保険者及び継続利用要介護者である場合は、サービス・活動事業を利用することができる。

 

4 訪問型サービス及び通所型サービス

⑴ 実施方法による分類

訪問型サービス及び通所型サービスについて、その想定される実施主体、実施方法等による分類を、以下のとおり示す。なお、この分類は、適切な予算の管理の観点から示すものであり、市町村ごとにその全てを実施することを求めるものではないことに留意する必要がある。

市町村においては、第1の5の調査、分析及び評価の結果、令和7(2025)年以降の高齢者(特に介護ニーズの高い85歳以上の者)の人口動態や医療・介護の専門職の確保の見通し等、高齢者のニーズ、地域住民を含む多様な主体の活動状況等を踏まえた上で、地域に暮らす全ての高齢者が自立した日常生活を送ること、また、そのための活動の選択ができるよう、地域住民や医療・介護の専門職を含めた多様な主体の力を組み合わせて計画的に事業を実施することが重要である。

従前相当サービス 

従前相当サービスは、旧介護予防訪問介護等に相当するものとして、則第140条の63の6第1号の基準に従い指定事業者(法第115条の45の3第1項に規定する指定事業者をいう。以下同じ。)が行うものをいい、実施主体は介護サービス事業者等が想定される。

なお、継続利用要介護者については、このサービスを利用することはできないことに留意が必要である。

② サービス・活動A

サービス・活動Aは、則第140条の63の6第2号の基準に従い指定事業者が行うもの(当該基準を踏まえ、市町村が直接又は委託により実施するものを含む。)をいい、実施主体は介護サービス事業者等以外の多様な主体が想定される。

③ サービス・活動B

サービス・活動Bは、則第140条の62の3第1項第2号の規定に基づき、補助その他の支援を通じて地域の人材や社会資源の活用を図るもの(サービス・活動Dに該当するものを除く。)をいい、実施主体は有償・無償のボランティア活動などの地域住民の主体的な活動を行う団体及び当該活動を支援する団体が想定される。

なお、サービス・活動Bについては、その性質上、居宅要支援被保険者等以外の者が当該活動に参加することが想定される。

④ サービス・活動C

サービス・活動Cは、高齢者の目標の達成のための計画的な支援を短期集中的に行うことにより、介護予防及び自立支援の効果が増大すると認められる者に対し、3月以上6月以下の期間を定めて保健医療に関する専門的な知識を有する者により提供されるものであって、市町村が直接又は委託により実施するものをいう。

なお、継続利用要介護者については、このサービスを利用することはできないことに留意が必要である。

⑤ サービス・活動D(訪問型サービスのみ)

サービス・活動Dは、則第140条の62の3第1項第2号の規定に基づき、補助その他の支援を通じて地域の人材や社会資源の活用を図るものであって、居宅要支援被保険者等に対する移動支援や移送前後の生活支援のみを行うものをいい、実施主体は有償・無償のボランティア活動などの地域住民の主体的な活動を行う団体及び当該活動を支援する団体が想定される。

なお、サービス・活動Dについては、その性質上、居宅要支援被保険者等以外の者が当該活動に参加することが想定される。

⑵ 実施上の留意点

市町村が、従前相当サービス以外の訪問型サービス及び通所型サービスを実施する際には、⑴に示す分類にかかわらず、高齢者の選択肢の拡大を図るという立場から、企画・立案を行うことが重要であり、以下のように、高齢者にとって分かりやすい事業内容や目的を示すことが重要である。

・ 居宅要支援被保険者等を含む高齢者が担い手となって活動(就労的活動を含む。)できるもの

・ 高齢者の日常生活支援を中心として行うもの

・ 訪問型サービスと通所型サービス、一般介護予防事業、高齢者の保健事業や保険外サービスなどを柔軟に組み合わせて居宅要支援被保険者等を支援するもの

また、こうした事業をサービス・活動A又はサービス・活動B若しくはサービス・活動Dのいずれの方法で実施するかについては、地域住民の主体的な活動を阻害しないよう、地域住民を含む多様な主体の活動状況等を踏まえ、これらの主体とともに検討することが必要である。

さらに、実施する内容等については、地域の医療・介護の専門的知見を有する職能団体や関係団体等と多様な主体との連携の下、医学的な効果等を踏まえた専門的な支援のノウハウを多様な主体の活動に活かすための方策を検討することが重要である。

このため、市町村は、地域の高齢者にどのような生活課題があるか、地域住民がどのような関心を持って地域で活動をしているのかを把握するとともに、地域ケア会議や在宅医療・介護連携推進事業、生活支援体制整備事業、認知症総合支援事業、さらには、居住支援、意思決定支援、権利擁護等の様々な高齢者を支える取組との連動を図りつつ、必要な支援を実施することが重要である。

5 その他生活支援サービス

その他生活支援サービスは、居宅要支援被保険者等の地域における自立した日常生活の支援のための事業であって、訪問型サービスや通所型サービスと一体的に行われる場合に効果があると認められるものとして、則第140条の62の7において以下の3つのサービスを規定している。 

・ 栄養の改善を目的として、居宅要支援被保険者等に対して配食を行う事業

・ 居宅要支援被保険者等が自立した日常生活を営むことができるよう支援することを目的として、居宅要支援被保険者等に対して、定期的な安否確認及び緊急時の対応を行う事業

・ 訪問型サービス又は通所型サービスに準じる事業であって、地域の実情に応じつつ、訪問型サービス又は通所型サービスと一体的に行われることにより、要介護状態等となることの予防又は要支援状態の軽減若しくは悪化の防止及び地域における自立した日常生活の支援に資する事業

介護予防ケアマネジメン

介護予防ケアマネジメントは、地域包括支援センターが居宅要支援被保険者等に対するアセスメントを行い、その状態や置かれている環境等に応じて、目標を設定し、その達成に向けて介護予防の取組を生活の中に取り入れ、自ら実施及び評価できるよう、また、高齢者自身が、地域で自立した生活を送るための活動を継続することにより、心身機能の改善だけではなく、地域の中で生きがいや役割を持って生活できるよう、心身機能・活動・参加の視点を踏まえて居宅要支援被保険者等の多様な選択を支援していくことが重要である。 

      実施方法等

介護予防ケアマネジメントは、市町村が、直接若しくは法第115条の47第1項及び第4項の規定に基づき地域包括支援センターに委託して、又は法第115条の45の3の規定に基づき地域包括支援センターを指定事業者として指定して実施する。

なお、指定介護予防支援と異なり、指定居宅介護支援事業者は、市町村から介護予防ケアマネジメントの委託を直接受けること及び指定事業者としての指定を受けることはできず、地域包括支援センターからの委託を受けて介護予防ケアマネジメントを行うこととなる。

また、居宅要支援被保険者がサービス・活動事業と併せて予防給付によるサービスを利用する場合は、予防給付の介護予防サービス計画費が、継続利用要介護者がサービス・活動事業(従前相当サービス及びサービス・活動Cを除く。)と併せて介護給付を受ける場合は、居宅介護サービス計画費が、それぞれ支給される。

⑵ 高齢者の選択を支援する目標指向型のマネジメントの実施

市町村は、介護予防ケアマネジメントについて、高齢者の地域での自立した日常生活を継続するという視点に立った選択を支援するための目標志向型のマネジメントであることを明確に示した上で、事業を実施することが重要である。

また、こうした目標指向型のマネジメントを推進する観点から、市町村において、介護予防ケアマネジメントに要する費用の額について、以下のような取組を評価するための加算の設定等を行うことも必要である。

・ 適切な専門職の介入を通じ居宅要支援被保険者等の機能の改善が図られ社会参加につながったことを評価する取組

・ 地域で孤立する居宅要支援被保険者等を、自立した日常生活を支援するための多様な活動につなげるためのアウトリーチなどの取組を評価する取組

・ 地域のリハビリテーション専門職等と連携し、アセスメントを行った上で、居宅要支援被保険者等の目標を実現するための介護予防ケアマネジメントを実施することを評価する取組

なお、従前相当サービス以外の地域住民を含む地域の多様な主体が実施するサービス・活動事業が、当該事業による支援を必要とする高齢者に適切に選択されるよう、サービス・活動事業ごとに想定される利用者のイメージ、想定される利用者数、標準的な利用期間等について、市町村、地域包括支援センター及び地域住民を含む多様な関係者との間で共有を図ることが重要である。

介護予防ケアマネジメントの類型

市町村は、次のような類型を踏まえ、地域包括支援センターの業務負担の軽減を図りつつ、適切な介護予防ケアマネジメントを実施するための基準等を定めることが重要である。

・ 主に、従前相当サービスや、サービス・活動Cを利用するケース等の介護予防支援に相当するもの(ケアマネジメントA)

・ 主に、介護予防ケアマネジメントの結果、サービス・活動B及びサービス・活動D、その他生活支援サービス並びに一般介護予防事業の利用につなげるケースであって、緩和した基準による介護予防ケアマネジメントとして、基本的にサービス利用開始時のみ行うもの(ケアマネジメントC)

・ ケアマネジメントAやC以外のケースであって、緩和した基準による介護予防ケアマネジメントとして、サービス担当者会議などを省略したもの(ケアマネジメントB)

なお、従前相当サービスを利用する場合については、第1号事業支給費(法第115条の45の3第262項に規定する第1号事業支給費をいう。以下同じ。)の額の確定及び9の給付管理を適切に行う観点から介護予防サービス計画に類するものの作成を含め、介護予防支援と同様に実施することが適当と考えられる。

従前相当サービス以外のサービス・活動事業を利用する場合の介護予防ケアマネジメントについては、適切なアセスメントの実施と関係者との連携を推進する観点から、介護予防サービス計画に類するものの作成の必要性や頻度等を含め、基準の緩和を検討することが重要である。

例えば、サービス・活動Cの利用者に対し、ケアマネジメントAではなくケアマネジメントBを実施することや、地域包括支援センターの職員によるサービス・活動Bの実施者との連携やサービス・活動Bの場への定期的な訪問などの取組をケアマネジメントCとして評価することなども可能である。

7 第1号事業支給費の額

サービス・活動事業に係る第1号事業支給費の額は、市町村が、介護保険法施行規則第百四十条の六十三の二第一項第一号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年厚生労働省告示第72号)に定める単価を勘案して定めることとしている。

当該単価を定めるに当たっては、介護人材の確保の状況、事業の利用者数の見込み、採算性、事業運営の継続性等を踏まえ、当該単価を超える額を定めることが可能である。

また、サービス・活動Aについては、介護サービス事業者等以外の多様な主体が参入することが想定されるが、利用対象者が居宅要支援被保険者等に限定されること、当該事業の内容が従前相当サービスと比較して限定的となることなど事業規模が小さい場合が想定されるため、多様な主体が行う本来的な事業と総合事業とを一体として実施することにより、採算性及び事業運営の継続性を確保するなどの方策を検討の上、適切な単価設定を行うことが重要である。

8 利用者負担

サービス・活動事業の利用者負担の割合又は額については、市町村が定める。その際、指定事業者が行う従前相当サービスについては、市町村が利用者負担の割合を定めることとし、則第140条の63の6第1号イの基準に従い行うものに係る当該割合については、予防給付の利用者負担の割合を下限として定めるものとする。

住民主体の支援等の補助形式によるサービスは、当該支援の提供主体により自主的に実施されるものであることから、当該支援の提供主体が利用者負担について定めることも考えられる。

9 給付管理

居宅要支援被保険者及び継続利用要介護者は、予防給付又は介護給付に係るサービスを利用しつつ、総合事業を利用するケースが想定されることなどから、当該居宅要支援被保険者及び継続利用要介護者に係る当該市町村における介護予防サービス費等区分支給限度基準額又は居宅介護サービス費等区分支給限度基準額の範囲内で、予防給付又は介護給付と総合事業(指定事業者が行うサービス・活動事業に限る。)について、一体的に給付管理を行う。

また、事業対象者についても居宅要支援被保険者との均衡を図る観点から、要支援1の介護予防サービス費等区分支給限度基準額(退院直後で集中的にサービスを利用することが自立支援につながると考えられるケース等、利用者の状態によっては、当該額を超えることも可能)を目安として市町村が定めた額の範囲内で、指定事業者が行うサービス・活動事業について、給付管理を行う。

給付管理に係る額については、市町村が事業の実施要綱等において適切に定めることとし、当該給付管理については、国保連合会にその実施を委託することが可能である。 

10 住所地特例適用被保険者に係る財政調整

住所地特例適用被保険者(法第13条第3項に規定する住所地特例適用被保険者をいう。)に対しては、当該被保険者に係る施設所在市町村(同項に規定する施設所在市町村をいう。以下同じ。)が総合事業を実施することとしており、その要した費用(第1号事業支給費及び第1号事業支給費の対象とならない介護予防ケアマネジメントに要する費用に限る。)については、当該住所地特例適用被保険者に対して介護保険を行う市町村(以下「保険者市町村」という。)が、令第37条の16第2項の規定に基づき算定される額を施設所在市町村に対して負担することとしている。

第1号事業支給費については、保険者市町村が、国保連合会経由で指定事業者に対して支払うことができることとしているほか、施設所在市町村が、国保連合会を経由せずに地域包括支援センターに直接支払った介護予防ケアマネジメントに要した費用については、毎年度、国保連合会において全国の市町村間を一括して財政調整することとしている。市町村においては、業務負担の軽減及び財源調整の円滑な実施の観点から、国保連合会と委託契約を締結することが必要である。

11 サービス・活動事業の実施主体に対する指導監督等 30

サービス・活動事業を提供する事業者に対する指導監督について、市町村は、都道府県による指定居宅サービス事業者等(法第22条第3項に規定する指定居宅サービス事業者等をいう。以下同じ。)に対する指導監督において不適切な事例が見つかった場合に、都道府県と連携して指導監督を行うなど、効率的に適切な総合事業の実施に努めることが必要である。

特に、既存の指定居宅サービス事業者等については、引き続き、要介護者及び要支援者双方にサービス提供を行うことが想定されることから、都道府県においては、都道府県が指定した指定居宅サービス事業者等に対する指導監督において、不正請求や運営基準違反等が判明した場合には、法に基づき勧告・命令や指定の取消し等を行うとともに、必要な情報を市町村に提供し、共同で指導監督を行うなど、総合事業の指導監督が効果的・効率的に実施できるよう支援することが望ましい。

一方、指定居宅サービス事業者等以外の事業者に対する指導監督においては、そのサービスの内容等に応じた形で実施されることが望ましい。例えば、地域包括支援センターが介護予防ケアマネジメントによりそのサービスの提供状況について一定程度把握していることから、その情報を端緒として必要な指導監督を行うことが考えられる。 31

 

第3 一般介護予防事業

1 基本的な考え方

一般介護予防事業は、市町村の独自財源で行う事業や地域の互助、民間サービスとの役割分担を踏まえつつ、高齢者を年齢や心身の状況等によって分け隔てることなく、住民主体の通いの場を充実させ、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを推進するとともに、地域においてリハビリテーション専門職等を活かした自立支援に資する取組を推進し、要介護状態になっても生きがい・役割をもって生活できる地域を構築することにより、要介護状態等となることの予防など、介護予防を推進することを目的とする。

2 事業の構成

一般介護予防事業は、介護予防把握事業、介護予防普及啓発事業、地域介護予防活動支援事業、一般介護予防事業評価事業及び地域リハビリテーション活動支援事業から構成される。

3 対象者

全ての第1号被保険者及びその支援のための活動に関わる者とする。 32

 

4 事業の実施

一般介護予防事業は、1の基本的な考え方を踏まえ、次のような内容の事業の実施が想定されるが、それぞれの地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防に資する事業が積極的に展開されることが期待される。

なお、市町村においては、それぞれの地域でどのような介護予防に資する活動がどのように実施されているのか、適宜その把握に努めるとともに、事業の実施に当たっては、地域住民の介護予防に関する理解を深め、地域において育成されたボランティアや地域活動組織を要支援者・要介護者の支援のために積極的に活用するなど、サービス・活動事業との有機的な連携に努めることが必要である。

⑴ 介護予防に資する体操等を行う住民主体の通いの場を充実するために、介護予防に関するボランティア等の人材を育成するための研修や介護予防に資する地域活動組織の育成及び支援を行う。

⑵ 地域における介護予防の取組を機能強化するために、通所、訪問、地域ケア会議、住民運営の通いの場等へのリハビリテーション専門職等の関与を促進する。

⑶ 地域の実情に応じて収集した情報等(例えば、民生委員等からの情報など)の活用により、閉じこもり等の何らかの支援を要する者を把握し、介護予防に資する活動へつなげる。

第4 総合事業の円滑な実施のための生活支援体制整備事業の活用

高齢者の尊厳と自立した日常生活を地域で支えていくためには、サービス・活動事業や一般介護予防事業の実施のほか、生活支援・介護予防サービスとの連動を図ることが重要である。

このため、生活支援体制整備事業において、市町村が中心となって、元気な高齢者をはじめ、住民が担い手として参加する住民主体の活動、地域運営組織、NPO、社会福祉法人、社会福祉協議会、地縁組織、協同組合、民間企業、シルバー人材センター等の多様な主体による多様な生活支援・介護予防サービスの提供体制を構築し、地域の支え合いの体制づくりを推進していくこととしている。

生活支援体制整備事業は、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の配置や協議体の設置を通じ、地域における、互助を基本とした生活支援・介護予防サービスの推進を図るものである。

また、生活支援・介護予防サービスの推進のためには、その担い手となるボランティア等の養成等を行うことが重要であり、これらの者に対して、介護保険制度や高齢者の特徴、緊急対応等について、市町村が主体的に研修を行うことも可能としている。 

さらに、地域ケア会議は、個別ケースについて、多職種、住民等の地域の関係者間で検討を重ねることにより、地域の共通課題を関係者で共有し、課題解決に向け、関係者間の調整、ネットワーク化、新たな資源開発、さらには施策化をボトムアップで図っていく仕組みであり、地域ケア会議に生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)が参加することや、生活支援体制整備事業との連動を図ることが重要である。

なお、生活支援・介護予防サービスについては、地域住民の主体的な活動が基盤となるものであるが、民間企業等の主体との連携も重要である。しかしながら、民間企業等は、市町村の行政区画を越えた広域的な事業展開を行っているケースがあることから、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)と民間企業等の活動の連携のため、国や都道府県において、プラットフォームを構築するとともに、市町村において、地域住民の主体的な活動と民間企業等の多様な主体による活動とをつなげるための生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の活動や協議体の運営について評価することが重要である。

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