諸課題に関する検討会(第6回)資料1
令和6年 12月2日
ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会中間整理案
はじめに
○我が国においては、高齢化の進展に伴い、介護サービスの需要がさらに高まっており、居宅介護支援や介護予防支援の受給者数は増加傾向にある。さらに、慢性疾患や複数の疾患を抱える患者など医療ニーズが高い高齢者、認知症の高齢者、独居高齢者や複合的な課題を抱える世帯の増加等が見込まれている中で、高齢者が抱える課題が複雑化、複合化している。介護支援専門員(ケアマネジャー)には多様な対応が求められるとともに、その役割の重要性は増大している。
○一方、生産年齢人口の急速な減少が見込まれることに加えて、足下において、ケアマネジャーの従事者数は横ばい・減少傾向にあり、介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数は近年5万人前後で推移し、合格者数も平成 30年度以降、継続して2万人を下回る状況にある。
○このような中で、ケアマネジメントの質を確保しながら、ICT等を活用した業務負担軽減を推進しつつ、必要なケアマネジャーのなり手を確保していくことが喫緊の課題である。
○このため、利用者のために質の高いケアマネジメントを実現する観点から、ケアマネジャーが個々の利用者に対するケアマネジメント業務に注力することができるよう、現行のケアマネジャーの業務や地域の実情を踏まえつつ、ケアマネジャーの業務の在り方について、改めてその役割を整理するとともに、居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターにおける主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)についても、その位置付けを整理した。
また、人材確保・定着に向けた方策、研修の在り方、ケアマネジメントの質の向上策について検討した。
1.ケアマネジャーの業務の在り方について
(ケアマネジャーに係る法令上の規定)
○法令上、「介護支援専門員」とは、要介護者又は要支援者からの相談に応 じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な介護サービス等を利用できるよう市町村、介護サービス事業者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとされている(介護保険法第7条第5項)。さらに、担当する要介護者等の人格を尊重し、常に当該要介護者等の立場に立って、提供される介護サービス等が特定の種類や特定の事業者等に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないとされている(介護保険法第 69条の 34第1項)。
○また、「居宅介護支援」とは、居宅要介護者が介護サービスの適切な利用等をすることができるよう、当該居宅要介護者の依頼を受けて、その心身の状況、その置かれている環境、当該居宅要介護者及びその家族の希望等を勘案し、利用する介護サービスの種類及び内容、これを担当する者等を定めた居宅サービス計画(ケアプラン)を作成するとともに、当該居宅サービス計画に基づく指定居宅サービス等の提供が確保されるよう、介護サービス事業者等との連絡調整その他の便宜の提供を行うこととされている(介護保険法第8条第 24項)。
○なお、居宅介護支援は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮して行われるものでなければならず、利用者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、利用者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われるものでなければならないとされている(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第1条の2第1項及び第2項)。
(地域におけるケアマネジメントの在り方)
○居宅介護支援事業所や地域包括支援センターにおけるケアマネジャーは、在宅における介護サービスの要である。医療・介護等を含めた地域の関係者とできる限り顔の見える関係を構築したうえで、利用者に適切な支援を行うことが重要である。
○このような役割を果たすためには、要介護者や要支援者等に対し、単に介護保険サービスを積み上げる形でケアプランを作成するのではなく、日頃から市町村等の地域の社会資源をよく把握し、かかりつけ医等医療を含む地域の関係者と幅広く顔の見える関係を構築した上で、その利用者にとって適切な支援が総合的かつ効果的に提供されるよう配慮することが重要である。
○また、アセスメントを適切に実施し、担当する利用者と信頼関係を築くとともに、当該利用者の状態を踏まえた適切なサービスが提供されるよう、ケアプランの作成や、サービス担当者会議等を通じて最も適切な支援を組み立てる行為が必要である。その後のモニタリングを通じた利用者の状態に応じたケアプランの見直し等を含め、利用者に寄り添い、尊厳の保持と自立支援を図っていく一連のプロセスを担うことが、居宅介護支援事業所等のケアマネジャーに求められる役割である。
○その一方で、高齢者の医療ニーズの高まりや、独居高齢者・認知症の方等への支援の増加、世帯の抱える課題の複雑化・複合化により、利用者や家族からの幅広い相談・依頼に、ケアマネジャーが対応せざるを得ない状況にある。居宅介護支援事業所のいわゆるシャドウワークも含めケアマネジャーの業務が増加している中、ケアマネジャーがその専門性を生かし、個々の利用者に対するケアマネジメント業務に注力し、必要な支援が適切に行われるようにするための環境整備が必要である。
○具体的には、利用者にとってより質の高いケアマネジメントを実現しつつ、ケアマネジャーの業務負担を軽減する観点から、居宅介護支援事業所は個々の利用者に対するケアマネジメントに重点、地域包括支援センターは社会資源への働きかけを含めた地域全体の支援に重点を置くことが適当である。この役割を中心に据えつつ、それぞれにおいて従事するケアマネジャーの業務の在り方を考えていくことが重要である。
○その中で際には、令和5年の制度改正を受けた居宅介護支援事業所における介護予防支援や介護予防ケアマネジメントの実施状況を踏まえ、地域の要支援者等に対するケアマネジメントについて、地域の実情に応じて適切に行うことができるよう支援することが重要である。
(居宅介護支援事業所における業務の在り方)
○居宅介護支援事業所において現にケアマネジャーが実施している業務については、
①法定業務
②保険外サービスとして対応しうる業務
③他機関につなぐべき業務
④対応困難な業務等に分類される。(具体的な業務のイメージについては、別添参照。)
○①の業務の中には、アセスメントやモニタリング等、利用者と直接関わるものと、給付管理をはじめとする事務的な業務が存在しており、ケアマネジャーに求められる役割との関係から、事業所内でのそれぞれの業務の分担を検討することが必要である。利用者と直接関わるものについて、独居高齢者、認知症高齢者、家族等への支援などに対する対応力が求められることを踏まえつつ、更なる質の向上を図るとともに、その位置づけを整理することが適当である。
○また、質の維持向上を図りつつ省力化を進める上で、ケアプランデータ連携システムや様々なテクノロジーの活用による業務負担の縮減が期待される。これらのテクノロジーの活用の促進に加え、事務的な業務のケアマネジャーから事務職員へのタスクシフトの促進が必要である。こうした取組は、若手人材等へのケアマネジャー職の魅力発信にもつながる可能性がある。
○②や③の業務については、地域の多様な主体が役割を担うことが考えられ、高齢者や障害者等の活躍の場としても期待される。また、高齢者等終身サポート事業者などの民間の事業者がサービスを提供しているケースもあるところ、高齢者等終身サポート事業者ガイドラインの周知等の履行の確保により、こうしたサービスを安心して活用できるよう環境を整備することが重要である。
○こうした業務の在り方について、利用者や家族、関係職種や市町村の共通認識づくりに課題があるとの指摘があった。周囲の理解促進が必要であり、国や関係団体を中心として、利用者・家族や関係職種等も含めた啓発を行っていくことも重要である。
○また、法定業務以外の業務については、ケアマネジャーの業務上の課題というだけではなく、地域課題として地域全体で対応を協議すべきものであり、基本的には市町村が主体となって関係者を含めて協議し、必要に応じて社会資源の創出を図るなど、利用者への切れ目ない支援ができる地域づくりを推進すべきである。その際、地域の実情に応じた対応ができるよう、市町村における相談体制の整備や、地域の関係者からなる協議の場での対応の検討、生活支援コーディネーターなど既存の仕組みや職能団体による事業化、インフォーマルな資源を活用すること等も考えられる。また、国としても、こうした地域の取組を推促進する方策を検討することが適当である。
なお、法定業務以外の業務について、どの程度の頻度・量で生じているのかといった実態や、ケアマネジャーが担当せざるを得ない場合もあること、関係機関につなぐことにも調整等の業務負担が生じ、時間を要する等の課題が生じる場合もあることに留意して継続して検討することが重要である。
○こうした取組を進めることにより、ケアマネジャーの業務負担が大幅に軽減され、個々の利用者に対するケアマネジメントに注力する環境が整備されることが期待される。
(主任ケアマネジャーの役割や地域包括支援センターにおける業務の在り方)
○主任ケアマネジャーは、主任介護支援専門員研修実施要綱において、他の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連絡調整、他のケアマネジャーに対する助言、指導その他の介護支援サービスを適切かつ円滑に提供するために必要な業務を行うこととされている。
○具体的には、主任ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所においては事業所内の介護支援専門員への指導者として、地域包括支援センターにおいては保健師や社会福祉士との連携のもと、包括的・継続的ケアマネジメント支援事業の実施を通じた地域のケアマネジャーに対する支援や介護予防支援等を行う者としてその役割を果たしてきた。
○主任ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターといった場に依らず、引き続き、他のケアマネジャーを指導・助言する立場として重要な役割を担いつつ、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターそれぞれの役割に応じた専門性を発揮できるようにしていくことが重要である。
○具体的には、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーは、保健師及び社会福祉士とともに、居宅介護支援事業所との連携を深めながら、他の関係機関や関係者と地域包括支援ネットワークの構築を行うこと、生活支援コーディネーター等と連携し、地域の現状を把握・分析し、将来像やニーズに合わせた社会資源の掘り起こしを行うこと、地域ケア会議を通して、他の専門職や関係者と連携しながら、地域における課題を解決するための方策を検討すること等の役割が期待される。しかしながら、現状としては、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーは、介護予防支援業務や介護予防ケアマネジメントに多くの時間を費やしており、地域の実態把握などの時間が少なくなっている状況にある。このため、ICTなどの活用により業務の効率化を進めつつ、居宅介護支援事業所との役割分担等を通じて、本来の役割を十分に発揮することができるよう取り組んでいくことが必要である。
○また、個々の居宅介護支援事業所内においては、主任ケアマネジャーが事務的な管理業務に時間を費やし、現場のケアマネジャーの指導が十分にできていない状況があるとの指摘があった。主任ケアマネジャーは、独居高齢者、や認知症高齢者等における対応が難しい事例への様々な支援や、当該事例に対応するケアマネジャーの指導・育成といった役割に重きを置いていくことにより、地域におけるケアマネジャー全体の質の向上に貢献することが求められる。
○このように、主任ケアマネジャーは、地域や居宅介護支援事業所内における比較的経験の浅いケアマネジャーへの指導・育成の役割があることを踏まえ、国は、制度的位置付けを明確化することを検討するとともに、その研修の在り方や居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのそれぞれでの役割に応じた評価の在り方についても検討することが適当である。
○また、主任ケアマネジャーのケアプラン点検における位置付けを検討するとともに、個々の居宅介護支援事業所と地域包括支援センターにおける主任ケアマネジャーの配置について、主任ケアマネジャーになるための研修の在り方の検討などあくまでも主任ケアマネジャーの確保に努めることが重要である。その上で、地域の実情に応じて、市町村が役割分担や柔軟な配置(兼務や業務委託等)も含めて検討することが適当である。その際、居宅介護支援事業所と地域包括支援センターの主任ケアマネジャーを兼務等することによるサービス利用の公平性の担保やケアマネジャーの業務負担の増加等について配慮することが必要である。
(ICTの効果的な利活用の推進)
○ICTの活用による業務効率化を実現し、専門業務に時間を充当できるようにすることが質の向上につながるものである。
○ケアマネジャーの業務効率化の観点等から、ケアプランデータ連携システムのさらなる普及促進を図ることが重要である。ケアプランデータ連携システムは地域全体で進めていくことがより効果的であるところ、連携する介護サービス事業所側の導入が少ないとの指摘があった。このため、国とともに都道府県や市町村は、その普及・周知に取り組んでいくことが重要である。また、国においてAIによるケアプラン作成支援に向けた調査研究を進めることが重要である。
2.人材確保・定着に向けた方策について
(基本的な考え方)
○ケアマネジャーの従事者数(実数)は、平成 30年度の 189,754人をピークに減少傾向となり、令和4年度は 183,278人。また、介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数は、平成 29年度までは 10万人を超えていたが、平成 30年度の受験要件の見直し後に減少し、近年は5万人前後で推移している。合格者数も平成
29年度までは概ね2万人を超えていたが、現在は2万人を下回っている状況である。
○高齢者が要介護状態等となった場合においても、住み慣れた地域で安心して暮らすことのできる環境を整備していくため、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターで従事するケアマネジャー(主任ケアマネジャーを含む)の人材確保を図っていくことが重要である。
○現在のケアマネジャーの年齢構成等を踏まえると、今後 10年以内には、ケアマネジャーの担い手は急激に減少していくことが見込まれ、幅広い世代に対する人材確保・定着支援に向けて、様々な取組を総合的に実施することが必要である。特に、ケアマネジャーとして従事している者が、引き続きやりがいを持って、業務に従事し続けられるようにすることが重要である。
(ケアマネジャーが就労を継続しやすい環境の整備)
○本検討会においては、ケアマネジャーが利用者のQOLの向上に寄与できたとき、利用者や家族の生活が改善し喜んでもらえたとき、また、利用者の良き相談役となれたことを実感できたときにやりがいを感じるとの意見があった。ケアマネジャーとしてやりがいを持って働き続けるようにしていくためには、このような利用者との関わりを十分に持つことができるようにしていくことが重要である。
○また、生産年齢人口が減少する中、他産業・同業他職種に見劣りしない処遇を確保するとともに、事務に係る負担軽減を実施していく観点からは、ケアマネジャーの作成する書類の様式の見直しを図っていくことも重要である。
○この他、事業所の管理者を含めたカスタマーハラスメント対策も重要であり、事業者に適切な対策を期待するとともに、国・地方自治体は事業者が対策を講じるための必要な支援を実施することが重要である。
○また、シニア層のケアマネジャーについても、延長雇用なども含め、本人の希望や心身の状況も踏まえつつ、働き続けることができる環境を整備することが重要である。
(ケアマネジャーの新規入職の促進)
○現行、ケアマネジャーは、保健・医療・福祉に関する法定資格に基づく業務又は一定の相談援助業務に従事した期間が通算して5年以上である者が、介護支援専門員実務研修受講試験を受験し、合格後の介護支援専門員実務研修を修了することにより、介護支援専門員証の交付を受けて資格を取得する。
○一定の資格がある様々な経験を有する者に対し、受験資格への参入を認めることは、多様な背景を持つケアマネジャーの獲得にもつながるものである。相談支援や医療等の一定の資格を有することを前提に、その役割の適正性を考慮した上で、受験対象である国家資格の範囲については、次の制度改正に向けて、新たな資格を追加する等により合格者数を増加させる方策を検討することが適当である。その際、ケアマネジャーに求められる専門性を勘案し、資質として相談援助技術が重要な要素を占める資格を中心に資格の追加を検討することが考えられる。その上で、幅広い職種・資格等からの受験を促すことが適当である。
また、試験の内容については、保有する資格の専門性等を踏まえた柔軟な取扱いを検討するとともに、試験の問題について、相談援助業務を始めケアマネジメントに必要な知識を適切に問う問題とするなど、ケアマネジャーの役割の変遷に応じて適宜見直すことが適当である。
○また、現行の5年の実務経験年数についても、法定研修等による質の確保を図りつつ、一定の要件を満たした場合に限り、当該年数を見直すこと を検討することが適当である。
○こうした取組とあわせて、特に若年層に重点を置きながら、処遇改善の取組なども含め魅力発信等の取組を促進することが重要である。
○学卒者の入職の在り方については、高齢者のケアマネジメント業務に求められる専門性をどのように修得するかといった実務経験の必要性も含めた質の確保の観点に留意しつつ、学校教育と連動した若年層の確保の必要性や保有する資格の専門性等も踏まえ、今後も引き続き議論することが適当かである。
(ケアマネジャーへの復職等の支援)
○ケアマネジャーの資格を持ちつつ、業務に従事していない者への就労促進等について、総合的に取り組んでいくことが重要である。
○これらの者への支援については、事業主がフルタイムだけではなく、短時間かつ少ない担当件数での勤務が可能となるような働き方等の柔軟な勤務体制を設定することも重要であり、そのような働き方について事業主が適切に理解できるよう、周知等を行うことが重要である。
○特に、ケアマネジャーの業務に従事していないいわゆる「潜在ケアマネジャー」の実態を把握しつつ、ケアマネジャーの魅力の発信を行うとともに、円滑な復職が可能となるよう、復職時の要件である再研修の受講について、オンラインでの受講を含めた研修の受けやすい環境を整備する、シニア層の復職を円滑に進める観点から実務経験を踏まえて研修を簡素化するなどの措置を検討することが適当である。地方自治体や職能団体においては、ケアマネジャーとしての従事希望の有無について、定期的に呼びかけを行うことも期待される。
3.法定研修の在り方について
(基本的な考え方)
○実務研修受講試験の合格者が初めに受講する介護支援専門員実務研修(87時間)や更新のために受講する介護支援専門員更新研修(88時間、2回目以降は 32時間)、介護支援専門員証の再交付を受けるための介護支援専門員再研修(54時間)、主任ケアマネジャーになるための主任介護支援専門員研修(70時間)やその更新のために受講する主任介護支援専門員更新研修(46時間)など、その種類は多岐に渡っており、それぞれに一定の受講時間数が規定されている。
○利用者にとって適切な介護サービスを提供するためには、ケアマネジャーの資質の確保・向上が重要であり、こうした法定研修の意義は今後も変わるものではないが、受講者にとって経済的・時間的負担が大きいという課題がある。このためケアマネジャーの資質の確保・向上を前提としつつ、可能な限り経済的・時間的負担の軽減を図ることが適当である。その際、更新研修については、利用者への支援に充当する時間の増加につなげる観点から大幅な負担軽減を図るとともに、あわせてその在り方についても検討することが適当である。
(研修実施の一元化による質の確保と負担軽減の推進)
○現行、ケアマネジャーの法定研修は、国の定めるカリキュラムや実施要綱に基づき、都道府県又は都道府県知事が指定した研修実施機関が実施している。これについて、本検討会においては、各地域において研修講師の確保が困難な状況や、地域によって研修内容に差が生じていることについての指摘があった。
○このため、研修の質の担保確保や、全体としての費用負担の軽減の観点から、法定研修のうち全国統一的な実施が望ましい内容を国レベルで一元的に作成することや、そうした統一的な研修が各都道府県で適切に実施される仕組み等を検討することが適当である。
○他方、地域の他職種との交流や事例検討をはじめ、地域の実情に応じた研修が必要であることから、一部の科目については、引き続き都道府県で実施していくことも検討する必要がある。その際、法定研修の負担を軽減する観点から、各地域で実施されている法定外の研修のうち法定研修に即した内容となっているものについては、法定研修とみなすといった柔軟な取扱いも考えられるといった指摘があった。なお、演習の実施にあたっては、相談援助などの技術的な面をトレーニングできる要素を加えられるよう検討することが適当である。
○また、都道府県は、研修の実施主体として、研修の実施状況や受講者の満足度等の丁寧な把握に努め、研修の質の確保に向けた研修の見直し等を行うことにより、真にケアマネジャーの資質の確保・向上につながる研修の実施を図ることが重要である。そのためには、都道府県に置かれている研修向上委員会等の取組が非常に重要であるが、中立性や透明性の確保について課題があるとの指摘があり、その在り方について検討が必要である。
(研修のオンライン受講の推進と分割受講の仕組みの構築)
○研修の受講負担の軽減の観点から、国レベルで一元的に作成する研修の実施にあたっては、その講義をオンラインで一斉配信できるようにするとともに、いつでも・何度でも受講することができるようオンデマンド化することが適当である。このことは、研修の質の統一やそれによる研修の質の向上につながり、研修受講者はもとより、ケアマネジメントを受ける利用者にとっても望ましいことである。また、現在、研修の実施主体が行う特定の日に限られていた研修日について、日時に関わらず受講できるようにするとともに、研修科目毎に分割して受講できる仕組みにすることを検討することが適当かである。
○また、更新研修等について、更新までの5年間に分割して受講可能なオンデマンド化等の環境の整備について検討することが適当である。
(多角的な観点からの研修受講の推進)
○現行、更新研修の2回目以降の受講にあたっては、受講時間数の軽減等の措置が講じられているところであるが、質の確保を前提とした更なる負担軽減の方策について検討することが適当である。
○法定研修の受講負担について軽減する観点からは、都道府県が地域医療介護総合確保基金を活用することにより、受講者負担を軽減することが可能である。また、教育訓練給付制度の対象にもなっていること等について、引き続き周知を実施することが適当である。
○なお、事業主においては、従業者であるケアマネジャーが学びながら働くことができる環境を整えることが重要であり、任意のものを含めた研修の参加について、事業主はできる限り協力していくことが期待されることから、事業主の理解を促進するための取組を進めることが重要である。
4.ケアマネジメントの質の向上に向けた取組の促進
(基本的な考え方)
○ケアマネジャーの質の向上を図る観点からは、法定研修や法定外研修、事業所内におけるOJT等を通じてその能力の向上を図るほか、適切なケアマネジメント手法の普及促進やケアプラン点検における助言等を踏まえてケアプランの自主的な見直しを促すなど、様々な取組を総合的に実施していくことが重要である。
○前述の業務の在り方の整理を進めた上で、ケアマネジメントの質を評価するための手法等については、引き続き検討することが適当である。
(適切なケアマネジメント手法の普及促進)
○「適切なケアマネジメント手法」は、利用者の生活の継続を支えるために、ケアマネジャーの実践知と各職域で培われてきた知見に基づいて想定される支援内容を体系化し、その必要性や具体化を検討するためのアセスメントやモニタリングの項目を整理したものである。
○ケアマネジャーの質の向上に向けては、この適切なケアマネジメント手法について、適切に理解していくことが重要であり、令和6年4月から施行された法定研修カリキュラムにも盛り込まれたところである。これまでも国や地方自治体において周知が行われてきたところであるが、引き続き、適切なケアマネジメント手法について、ケアマネジャーだけでなく、医療等の関係職種や地方自治体等の関係者も含めて周知することが重要である。
(ケアプラン点検の適切な実施)
○ケアプラン点検は、ケアマネジャーが作成したケアプランの記載内容について、事業者からの資料提出や訪問調査により、市町村職員や委託を受けた職能団体等の第三者が助言を行うことにより、個々の受給者が「尊厳の保持」や「自立した日常生活の支援」のために必要とするサービスの確保や、サービス提供の改善に向けて実施しているものである。
○ケアプラン点検については、基準違反や報酬の返還を目的とする指導監査的な視点ではなく、ケアマネジメントの専門性や質の「見える化」に資する取組として、ケアマネジメントのプロセスを踏まえ利用者の「尊厳の保持」、「自立支援」に資する適切なケアマネジメントを提供できているかどうか、ケアマネジャーに自主的な気付きを促していくような仕組みとすることが重要である。
5.おわりに
○本検討会では、令和6年4月から●回にわたり、ケアマネジメントに係る諸課題について議論を重ね、以上のとおり中間整理を行った。
今後、社会保障審議会介護保険部会に報告した上で、制度改正や介護報酬改定に向けて、引き続き、必要な検討を進めていくことが適当である。
○本検討会で議論してきたように、高齢者が抱える課題が複雑化、複合化する中にあっても、高齢者が最期まで尊厳をもって自分らしい自立した日常生活を送ることができるようにするための要であるケアマネジャーが、医療・介護等を含めた地域の関係者とできる限り顔の見える関係を構築したうえで、その専門性を十分に発揮し、一人一人の高齢者に寄り添ったケアマネジメントに注力できる環境を整備することが必要である。
○そのためには、ケアマネジメントの質を確保しながら、ケアマネジャーの負担を軽減することが不可欠であり、業務を整理しつつ、その効率化を図るとともに、法定研修についても受講負担の大幅な軽減を図っていくことが求められる。また、現在従事しているケアマネジャーにとって働きやすい環境を整備するとともに新たな人材の確保や潜在ケアマネジャーの復職等を促進することも重要である。
○しかし、ケアマネジャーの業務の整理に当たっては、関係者の理解なくしての解決は困難である。利用者への支援が途切れることのないよう、基本的には市町村が主体となって、地域課題として関係者間で協議していくことが重要であり、国や都道府県における取組も求められる。
○また、ケアマネジャーの負担軽減や人材確保を進めることは重要であるが、これによってケアマネジャーの質の低下を招いては本末転倒であり、ケアマネジャーの魅力も失われてしまう。質の確保を前提としつつ、様々な取組を総合的に進めていくことが、現下の課題の解決につながり、ひいては利用者のメリットにもつながるものと期待する。
○本検討会で議論してきたケアマネジメントに係る諸課題については、社会情勢の変化とともに課題の内容や対応策も変遷していくものであり、今後も継続的に検討していくことが求められる。