3/4 ヘルパーって、すごい仕事なんだと気づかせてくれた利用者さん

訪問介護みんなの木ヘルパーステーション代表
大阪府東大阪市・山中みゆきさん
(聞き手・本間清文 2014.6)

※本文は個人情報保護の観点から事実とは異なる箇所があります。

まずは、一人暮らしをされている95才の男性の高橋さん(仮)のことです。

 「入退院を繰り返している方で、自宅で一人暮らしをしているので、ヘルパーの援助が必要」という地域包括支援センターからの依頼がきっかけでした。

 いろんな事情があってご親族とは別居で一人暮らしをされている方でした。

 当時はまだ、自分でがんばって歩いて買い物にも行ってらしたので、その買い物の付き添いや一緒に調理などをするところから始まりました。
 
最初、本人に関する細かい情報などはほとんどない状況から援助を始めたんですが、服用薬を見るとクレメジン※を飲んでいた。確か、腎臓が悪い人が飲む薬だし、食事や水分制限なども気にする必要があるなあと思っていましたが本人はまったく無頓着でした。

 ※クレメジン;腎不全の進行抑制効果あり。

 そんなある日のこと、一緒に買い物に行って帰り、私は台所で調理をし、本人は肉まんを食べつつ話していると返事をしなくなりました。

 「どうしたん?」と様子を伺うと、意識を失ってぐったりしている。
 「寝てるの?」
 「う~・・・」。

 緊急事態だと思って、まずは事務所へ電話し、サ責が来て救急車を要請しました。その日の夜にサ責から「点滴打って、しばらくすると普通に意識を回復されたそうで、その日のうちに迎えに来た、ご親族と帰宅された」と連絡が入りました。

しかし翌日また意識を失い救急搬送、点滴後に帰宅。それが何度も続きました。

「薬いっぱい飲んでるのに何で倒れるんやろな~」と高橋さん。「どんな薬飲んでるの?」と処方箋を見せてもらうとすごい量。血圧を下げる薬や認知症の薬、血糖値を下げる薬に至っては何種類も飲まれてました。

高橋さんは「以前、先生に言われたから」と血圧を計り毎日帳面をつけているきっちりした方です。それを見ると血圧は低いほうでした。1週間後の約束や昨日のご飯のメニューも覚えているしっかりした方でこっちが忘れている事まで覚えている方でした。

現在の健康状態と薬が合ってないんじゃないかなあ?と思いました。でも、本人はやはり、そういう事には考えも及びません。事務所に相談しましたが「医者が出してる薬やからなあ~間違いないやろ」と。

念のため、ヘルパーの観察した状況を医師に伝えたく、サ責に調整してもらえないか相談しましたが、かないませんでした。

高橋さんに主治医に薬が合ってないかもしれない事を血圧の帳面を持っていって話してみたらどうかと持ち掛けました。

本人も何度も倒れることに不安を感じていたので「(先生に)言ってみるわ」と診察時に主治医に話しました。

が『黙って飲んでたら大丈夫』との主治医のご意見。長年世話になっている先生にそう言われたら高橋さんに言い返す言葉はありません。

でも、私の中では、どうしても薬の内容に対する疑問があり、これまでの状況とか実態を細かく伝えたかった。それで、「今度、倒れたら救急車に同乗して病院に一緒に行こう」と決めたんです。

サ責からは救急車には(同乗しても報酬も発生しないし、時間も長くかかるから)「同乗するな」と言われてたんですが。

 その後、あまりに何度も倒れるから、と主治医からは癲癇(てんかん)の薬も追加されました。でも、これまでの生活歴で癲癇なんてまったくなかったのに、そんなに急になるものなのかなあと、ますます疑問に思った。

自分で医療系の本を買ったり、ネットで病気や薬のことを調べました。読めば読むほど、高橋さんのこれまでの症状が低血糖時のそれに合致していると感じ、処方薬が合ってないんじゃないかなと思いました。

 後日、また、私の訪問中に高橋さんが意識を失ったので、意を決して救急車に同乗しました。

主治医に伝える機会がないとしても、やはり医師である、誰かに、これまでの症状などを伝えたかったんです。

最初の頃は、私も救急車対応などの勝手も知りませんでしたが、その頃になると、さすがに救急車への対応方法も分かってきてましたし。

 処方されている内容が一式記載されている薬の説明書と、これまで何回か倒れた時の症状を書いたメモを持って救急車に同乗したんです。

 それで、ようやく救急搬送先の医師に、その辺のことを伝達できたんです。

すると診てくれた医師は「(これまでの症状の報告に対して)低血糖ですよ。とりあえず血糖値下げる薬は飲まんでイイ。朝、飲んだら、また救急車やで。癲癇(てんかん)という診断は疑問やね。主治医の先生にもそう言うたらいい。」と。

そこで、高橋さんと(倒れるたびに搬送先の病院に迎えに来ていた)ご親族に伝えることができました。「この病院のお医者さんが、血糖値が下がりすぎて倒れてるから、下げる薬はとりあえず飲まなくていいと言ってたよ。」と。

事務所とケアマネジャーにも搬送先の医師が「低血糖だからとりあえず血糖値を下げる薬は飲まなくていい」と言った事を伝え、私が見た、意識を失う直前から回復までの状況と低血糖の症状の資料などをコピーしてわたしました。

そしたら、やっと動いてくれました。ケアマネが本人に付き添って診察に行き主治医に話してくれました。主治医は「そんなに言うなら飲まなくていい。僕は知らんよ」と。

以後、倒れなくなったんです。

前は意識が混乱して変なことを言うこともあったけど、それもなくなりました。もう、何年も前の話です。

でも、それ以来、今も元気で家で生活されてます。血糖値も平均よりは高いみたいやけど、高いなりに落ち着いていると聞いてます。かかりつけの病院も別のところに変わられました。

そういうことを経験するようになって、仕事の楽しさうんぬんではなく、この仕事はすごく人の命に関わる仕事で、やりようによっては簡単に老人が死んでしまうんやな、と思うようになりました。

確かに薬や体の専門家は他にいるし、そこまで私たちは口を出せません。でも、その専門家は老人の普段の生活を見ていない。それを見ているのは私たち。

その普段の本人の様子を見ていると、その専門家に伝えないといけない場面も出てくる。それをするかしないかで簡単に人の生死が決まる。そういうことをすごく感じるようになりました。

そういう目でヘルパーの仕事を振り返ると、この仕事には可能性のようなものがすごくあるのだな、と気づいたんです。本人の在宅生活を支えるためにできることが、結構、あると気づいたんです。すごい仕事なんだな、とその時、初めて気づいたんです。

家の掃除などで訪問もしますが、単に作業として掃除をしているわけではありません。自分でお昼ごはんを食べたことや薬を飲んだかも忘れることがたまにありそれを気にしている人には、直接聞くのではなく、ゴミ箱を見てさりげなく確認したり、コンロを使った形跡を確認したり、掃除を通して生活を観察しています。

トイレの掃除も便器周りに便が飛び散っていたら体調が悪くないのだろうと考えて、何らかの対応をします。下剤が処方されている方は、逆にそれが効きすぎているのではないかと、それもさりげなく観察してます。

だから、一口に掃除とか家事といっても、誰に対してでも同じするような作業としての家事とは違います。人それぞれ大事にしたい部分って違うので、そこを個別に対応するのがヘルパーの力だと思ってます。

分かりやすくいうと、掃除について元々、ズボラだった人に対しては、必要以上にピカピカにする必要もないと思います。でも、ずっとこれまでの人生で家をピカピカにしていた人に対して、「介護保険では、(特別な手間を掛けるような掃除は)一切、できません」というのもかわいそうかなと思います。

中には掃除よりも日頃の孤独感を間際すためにヘルパーとのお喋りを楽しみしている方もいる。そういう方には、喋りながら掃除したり、喋りたくない人には喋らずに掃除したり、とその人らしさを大切にできる掃除の仕方を見つけることが専門性なんじゃないのかなと思います。

買い物にも一人で行くと危ないので付きそうことがあります。医師から塩分水分を控えるように言われていました。だけど炭酸入りのジュースがすごく好きな人です。お店では、どうしても、そういうものに手が伸びるんですが、「止めときー(止めておくべきだよ)」と言わなければならない時もあります。

かといって、すべてを禁止にするのもかわいそうですから、「一つだけ」と釘を刺すこともあります。甘いのも好きですが、あまりに甘すぎるものを買おうとしていると「それ、私、この前、食べたけどマズかったよ」と言ってみたり。

また、病院の定期検査などは、そうした食生活の緩急リズムを作る目安にもしています。

受診日は前もって決まっているので、ボクシング選手の減量やお坊さんの精進ではないですけど、その日を目指して(検査結果によい数値が出るように)摂生しおいしいものを我慢するように促します。そして、検査が終わったその日、一日くらいは、少しだけ好きな食べ物を解禁することを話してみたり。

だから、ヘルパーの掃除などの援助って、「生活をまるごと把握しつつ、その人の異変に気づく専門性」というものがあって、そのための手段にすぎないと思うんです。

 そして、その頃、もう一人、思い出深い出会いがありました。それは、丁度、「セルフケア」に投稿させてもらった文書です。(つづく)

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1/4 飽き性の私を飽きさせない訪問介護の現場

2/4 いつの間にか仕事が以前のように面白いとは思わなくなっていることに気づいた

3/4 ヘルパーって、すごい仕事なんだと気づかせてくれた利用者さ

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