相良勇(さがらいさむ)さん
(東京都目黒区・社会福祉法人愛隣会 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)駒場苑)
※本文は個人情報保護の観点から事実と異なる箇所があります。
排せつの意味
認知症があり、うまく感情のコントロールができない「感情失禁」の目立つヤマさんでしたが、私はそれがもしかしたら排せつ、つまりウンチやオシッコと関係しているのではないかと考えていました。
それは認知症の方には珍しくないことで、自分で自分の生理現象を認知できず、どうしたらいいのかわからなくなり、感情にあふれ出てきてしまいます。「感情失禁」といっても、不愉快なことが体の内面で起こっているから、感情に表れているだけであったりします。
ですから、ヤマさんの感情が乱れたり、突然立ち上がったりしたら、まずはトイレに行くことを提案し、職場内で統一的な対応をとるようにしました。
すると、案の定、感情失禁が現れたとき、トイレへ誘うと多くの確率で便か尿がでます。もちろん、感情があふれ出す原因すべてが排せつではないので、トイレに行っても何も出ないこともある。でも、何回かに一回は排せつがあり、感情失禁も確実に少なくなってゆきました。
トイレ以外の場所で排せつしてしまわれたり、衣服を汚すこともなくなりました。ご家族も喜んでくださり、関係も良くなっていきました。
安全確保か自由か
ご家族とのやりとりで思いだすのは、98歳の木村さん(仮)のことです。
木村さんは認知症があり足腰が比較的、しっかりされている方でした。
足腰がしっかりしているのはいいのですが、精神的に不安定な所がありました。座って落ち着いていたかと思うと突然、歩きだされるのです。なかなか椅子などに座って落ち着いておられません。「家へ帰る」が口癖。家での生活が難しくなったから入所されているのですが、それを理解できていない。結果、思いついたように家に帰ろうと歩き出されます。
職員に介護されることへの抵抗も強く露骨に「ブ―!」と唾を吐いたり大声も出されます。つねったり噛んだりして抵抗されることもしょっちゅうでした。
それに対し職員が付き添えればいいですが、ずっとは難しい。目の届かない場合には転倒されてしまいまいます。
どうしても施設内での安全確保が難しく、施設やご家族と協議の結果、限定的にご本人が自由に歩けないように体を車いすにベルトで固定する対応を取らせていただいておりました。
しかし、自由に歩きたいと思われている方をそのように縛ったり、何かに拘束することはこちらとしても、やはり心苦しいです。例え、自由に歩いた結果、転んでしまったとしても、「その瞬間」のご本人にとっては自由に歩けることの方が幸せなんじゃないかと感じました。そして職員会議でそのことを話してみました。
しかし、この考えに対しては思った以上に職員の心理的抵抗が強かった。「転んでしまって事故にでもなったら、どう責任を取るの?」と。(注※老人が転倒後、回復せず寝たきりになることは非常に多い)でも、あきらめずに、どうすれば自由に歩いてもらえるかを考えました。
インタビューメニュー
1/5
生活に根差した仕事がしたかった
感情失禁の目立ったのヤマさん
2/5
排せつの意味
安全確保か自由か
3/5
リスクマネジメント
介護職員の不安
4/5
今日一日を楽しく過ごしてほしい
ご家族の重要性
5/5
介護現場での医療の専門性について
インタビュー後記
(東京都目黒区・社会福祉法人愛隣会 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)駒場苑)
※本文は個人情報保護の観点から事実と異なる箇所があります。
排せつの意味
認知症があり、うまく感情のコントロールができない「感情失禁」の目立つヤマさんでしたが、私はそれがもしかしたら排せつ、つまりウンチやオシッコと関係しているのではないかと考えていました。
それは認知症の方には珍しくないことで、自分で自分の生理現象を認知できず、どうしたらいいのかわからなくなり、感情にあふれ出てきてしまいます。「感情失禁」といっても、不愉快なことが体の内面で起こっているから、感情に表れているだけであったりします。
ですから、ヤマさんの感情が乱れたり、突然立ち上がったりしたら、まずはトイレに行くことを提案し、職場内で統一的な対応をとるようにしました。
すると、案の定、感情失禁が現れたとき、トイレへ誘うと多くの確率で便か尿がでます。もちろん、感情があふれ出す原因すべてが排せつではないので、トイレに行っても何も出ないこともある。でも、何回かに一回は排せつがあり、感情失禁も確実に少なくなってゆきました。
トイレ以外の場所で排せつしてしまわれたり、衣服を汚すこともなくなりました。ご家族も喜んでくださり、関係も良くなっていきました。
安全確保か自由か
ご家族とのやりとりで思いだすのは、98歳の木村さん(仮)のことです。
木村さんは認知症があり足腰が比較的、しっかりされている方でした。
足腰がしっかりしているのはいいのですが、精神的に不安定な所がありました。座って落ち着いていたかと思うと突然、歩きだされるのです。なかなか椅子などに座って落ち着いておられません。「家へ帰る」が口癖。家での生活が難しくなったから入所されているのですが、それを理解できていない。結果、思いついたように家に帰ろうと歩き出されます。
職員に介護されることへの抵抗も強く露骨に「ブ―!」と唾を吐いたり大声も出されます。つねったり噛んだりして抵抗されることもしょっちゅうでした。
それに対し職員が付き添えればいいですが、ずっとは難しい。目の届かない場合には転倒されてしまいまいます。
どうしても施設内での安全確保が難しく、施設やご家族と協議の結果、限定的にご本人が自由に歩けないように体を車いすにベルトで固定する対応を取らせていただいておりました。
しかし、自由に歩きたいと思われている方をそのように縛ったり、何かに拘束することはこちらとしても、やはり心苦しいです。例え、自由に歩いた結果、転んでしまったとしても、「その瞬間」のご本人にとっては自由に歩けることの方が幸せなんじゃないかと感じました。そして職員会議でそのことを話してみました。
しかし、この考えに対しては思った以上に職員の心理的抵抗が強かった。「転んでしまって事故にでもなったら、どう責任を取るの?」と。(注※老人が転倒後、回復せず寝たきりになることは非常に多い)でも、あきらめずに、どうすれば自由に歩いてもらえるかを考えました。
インタビューメニュー
1/5
生活に根差した仕事がしたかった
感情失禁の目立ったのヤマさん
2/5
排せつの意味
安全確保か自由か
3/5
リスクマネジメント
介護職員の不安
4/5
今日一日を楽しく過ごしてほしい
ご家族の重要性
5/5
介護現場での医療の専門性について
インタビュー後記
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