4/5 今日一日を楽しく過ごしてほしい

相良勇(さがらいさむ)さん
東京都目黒区・社会福祉法人愛隣会 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)駒場苑

※本文は個人情報保護の観点から事実と異なる箇所があります。

今日一日を楽しく過ごしてほしい

 介護の質を改善することについて、こんな風に感じる職員もいるかもしれません。

 「拘束を外して、自由に動けるようになったとしても、職員の仕事が忙しくなるわりに、なんの見返りもなく意味がない」とか「どんなに現状の改善を図ったとしても、どうせいいつかは体のどこかが悪くなり亡くなってしまうのだから」と。

 私は、その点、不確実な未来やこれからのことを考えるより、「今日一日を楽しく過ごしてほしい」と考えています。不安材料を数え上げれば切りがなく、身動き取れなくなってしまいますから、それよりもむしろ、老人の「今の気持ち」を大切にできるような仕事をしてゆきたいと思っています。

 看取りなど施設でお亡くなりになられる方への対応もしかり。

 亡くなられる前後は本当に辛く、悲しいものです。でも、そこだけ介護の質を向上しても意味がありません。

 ある時、脈絡なくターミナルや死がやってくるのではない。毎日の生活の連続線上に老人の死はあるものですから。今日一日の生活をよりよいものにしていっていただければと考えています。

ご家族の重要性

 ご本人の施設での生活や介護の方針を決める際には、なるべくご家族に参加してもらい、家族の声を聞かせていただいております。それは、とても重要な時間です。

 というのも、ご家族にしてみればご本人様との長い時間の経過があり、複雑で深い人間関係がある。でも、私たちの目の前に現れる利用者さんは、その時点で、自分のことをうまく言えないほど、心身面で低下されていらっしゃいます。

 仮に若い頃は立派な紳士だったとしても、なかなか、想像できるものではありません。ご家族の抱いておられる程の想いや尊敬の念を抱くことは難しさもあります。

 そんなとき、家族の口から「お父さん、お母さん、あなた」という言葉が出てくると、そこに深い人間関係が垣間見えてきます。「ああ、この方は○○さんのお父さんなんだな」「○○さんのダンナさんなのだな」と社会性を持った尊厳ある個人として理解できるようになってきます。

 そんなこともあり、これまでは入所前の家庭訪問には相談員と看護師だけだったのですが今後は介護職も同行させたいと考えています。

 そして、少しでも入所前からその方が歩んでこられた人生を尊重できるような介護ができればと思います。
インタビューメニュー
1/5
生活に根差した仕事がしたかった
感情失禁の目立ったのヤマさん
2/5
排せつの意味
安全確保か自由か
3/5
リスクマネジメント
介護職員の不安
4/5
今日一日を楽しく過ごしてほしい
ご家族の重要性
5/5
介護現場での医療の専門性について

インタビュー後記

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