1/5 施設が特別な場所だという感じはなかった

1/5 施設が特別な場所だという感じはなかった
増田 信吾さん(2015.05)
介護職員 東京都・有料老人ホーム勤務
(聞き手・本間清文
※本文は個人情報保護の観点から事実とは異なる箇所があります。

 通っていた中学校の目の前に特別養護老人ホーム(以下「特養ホーム」)があり、当時からそこへ音楽の合奏で訪問する事がありました。その時は、職員さんが車椅子を押したり、お年寄りが静かにたたずんでいる程度の印象しかありませんでした。

 その後、高校生になり進路のことを考えだした頃、担任の先生が「これからは介護が大切だ」というようなことを言われ、それが胸に残っていました。それで近所の社会福祉協議会にボランティア登録し、ボランティアへ行くことにしました。

 ボランティアでは、特養ホームで開催される夏祭りに行き、車椅子を押したり、お年寄りと一緒に盆踊りを見たりしました。地域の人々も普通に、その夏祭りに参加しており、介護施設が特別な場所だという感じはなかったです。ボランティアも自分にとって、さほど特別なことではなく、普通の事としてやっていました。

やがて進路を決める段階になり、自分としては高齢者介護の道に進もうと思いました。介護・福祉の専門学校に行きたいと思ったのです。

でも、父はパソコン関係の専門学校に進んでほしかったらしく、反対されました。僕の中では介護以外の選択をするつもりが一切なく、自分の意思を貫き通しました。最後は親のほうが折れ、専門学校の学も出してもらえました。

専門学校在学中は、特養ホームでボランティアや入浴介助のアルバイトもしました。認知症や寝たきりの方などわりと重度の人も多くいました。でも、施設の職員さん達が優しく、丁寧に対応方法を教えてくださり、特に苦になった記憶もありません。

職員さんの見守りの元、利用者さんと一緒に近所に買い物に出かけたり、食事の介助をさせてもらいました。当時から、少しでも食事介助や入浴介助、排泄介助などの介護の技術や知識を身につけたいと思っていました。

専門学校在学中はその特養ホームのほか、介護老人保健施設(※1)など3箇所の施設に実習に行かせてもらいました。

やがて就職シーズンとなり、学校に求人一覧のような資料が回ってきました。僕はとある特養ホームを第一志望としました。新設の施設で、当時、注目され始めていたユニットケア施設(※2)の施設だったからです。


※1「介護老人保健施設」:特養ホームと同様、介護保険制度上の施設サービスの一つ。通称「老健(ロウケン)」。特養ホームに比べ看護師などの医療職が多く配置されている。そのため特養ホームを「生活の場」と称するのに対して、老健は「医療と福祉の中間施設」などと呼ぶことがある。

※2「ユニットケア」:従来、我が国の介護施設では個室か大部屋(相部屋)が廊下に沿って一直線に配置されているものがほとんどだった。しかし、そうではなく、まずは建物の一角に共同で利用できる生活スペースが配置され、それを取り巻くように個室が配置(10室以下)される居住空間の形態をユニットと呼ぶ。そのユニットでの介護をユニットケアと呼び、従来の特養ホームに対して「新型特養」などと呼ぶこともある。
しかし、採用試験には作文があり落ちてしまいました。第一志望に落ちたということで少し焦りました。そんな折、専門学校の学友の一人が今の施設に僕より先に就職が決まっていました。その友人が「うちの施設に就職しないか」と誘ってくれたのです。それで「渡りに船」とばかりに面接を受け、合格しました。

当時は特養ホームや有料老人ホームの違いも分かってなかったので、特に特養ホームじゃなきゃだめといったこだわりも持っていなかったんです。制度上の細かい違いはあるかもしれないけど、老人の食事や入浴、排泄などを行い、そこから自己実現へ向かえるように支援していくのは、どこでも同じだろう程度の認識でした。

(つづく)

インタビューメニュー
1/5 施設が特別な場所だという感じはなかった

2/5 利用者と温泉旅行に行きたい

3/5 身体拘束問題に向きあったシゲさんのこと

4/5 身体拘束をするしかないか?

5/5 施設全体で一人の利用者のためにチーム編成